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難民・問題・イノベーション | シリア難民の教育現場から

「840万人」

この数字は何の数字だと思いますか。

シリア国内、そしてシリア周辺5カ国(トルコ、レバノン、ヨルダン、イラク、エジプト)で支援を必要としているシリア人の子どもたちの数です。

うち600万人以上の子どもたちが、学校や自宅が破壊され家族の生活基盤がなくなった今、勉強を続けたいけれど学校に通えない、あるいは学校に通い続けることが難しいという状況に直面しています。

国連によると、シリアでは、過去10年間に築いてきた教育の成果が、シリアでの紛争の結果完全に失われてしまいました。また、シリア国内の学校のうち、3校に1校が破壊されました。

ワールド・ビジョンのシリア国内・周辺国対応プログラムの教育担当のマークによると、このように先が見えない状況の中でも、教育は子どもたちや家族にとって未来に希望の種を蒔くことができるため、支援分野として優先順位が最も高くなっています。レバノンのある難民の家族は、両親が一日一食を抜いて、子どもを学校に通わせるためのバス代に充てています。

シリアを離れた子どもたちの半数近くが、現在学校に通えていません。例えば、人口約760万人のうち、およそ10人に1人がシリアからの難民であるヨルダンには、24万人の学齢期のシリア難民の子どもがいますが、そのうち約4割にあたる9万人以上の子どもたちが学校に通えていません。難民キャンプの外で暮らすシリア難民のうち、子どもの割合はその半分以上と非常に高いものの、フォーマル教育(学校教育)にアクセスできない、あるいは授業についていくことができないため退学してしまうことが原因となり、早期結婚や児童労働、性的搾取や犯罪集団、ひいては武装勢力への関与などのリスクにさらされています。このため、将来を担うシリアの子どもたちに対して、自国の再建に備え、教育の機会を提供することが今喫緊の課題となっています。

シリア難民の子どもたち

シリア難民の子どもたち(レバノン)

デジタルx教育

子どもたちが直面している教育の課題をデジタルで解決しようとする動きがあります。今年3月、国内に65万人以上のシリアからの難民を抱えるヨルダンで、EdTech(教育に関わるテクノロジー)サミットが開催されました。サミットには、Microsoft、Nethope、Cisco、Facebook、Googleなどの企業が参加し、テクノロジーを使ってどうやって子どもたちに教育の機会を届けられるかアイデアを出し合いました。

出てきたアイデアは、携帯のアプリやビデオを使った学習、タブレットを使った識字ツール、オンライン学習コース、教育ゲーム、遠隔教員研修(remote teacher-training)など。身近なテクノロジーを使って、シリアの子どもたちが勉強についていくことができるか模索しています。

ワールド・ビジョンでは、デジタルで課題解決を行っているDigital Opportunity Trust LebanonやLebanese Alternative Learning Allianceと連携して、3-6歳児向けのタブラ(Tabhoura)e-ラーニング・プログラムを開発し、レバノンの教育課程をデジタル化しました。この結果、ライム(韻)、ショート・ムービー、flip book(ぱらぱら漫画)などの2350種類もの教育活動が、3ヵ国語(アラビア語、英語、フランス語)で、無料で利用できるようになりました。

上述のようなデジタルによる課題解決が、中近東の一部の地域や難民の人々だけにではなく、より広く活用されることを願っています。今後、ブログでアップデートをさせていただきたいと思います!

①チャイルド・フレンドリー・スペースと早期教育センターにおけるコンピューター研修の模様(レバノン)

チャイルド・フレンドリー・スペースと早期教育センターにおけるコンピューター研修の様子(レバノン)

 

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この記事を書いた人

伊藤真理支援事業第1部 人道・開発事業第3課 課長
大学でスワヒリ語(東アフリカの言語)・アフリカ地域学を学んだ後、在ケニア日本大使館において在外公館派遣員として勤務。そこで、ストリートチルドレンへのボランティアを経験したことから、困難な状況にある子どもたちへの支援がライフワークに。留学、タンザニアでの協力隊を経て、2003年2月よりワールド・ビジョン・ジャパンに勤務。リベリア、スーダン、南スーダン駐在を経て、2010年5月より東京事務所勤務。現在、緊急人道支援課長。関西に住む3人のかわいい甥っ子・姪っ子たちの成長が元気の源。
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