暗いトンネルをひたすら走っているような毎日
カンボジアでの6年間の駐在は多くのことを学び、考える機会となりました。現場経験がほとんどなく、人身取引についての知識も限られた状況で、現場に放り込まれたため、教科書のない学びの連続で、先の見えない暗いトンネルをひたすら走っているような毎日でした。
また、わたしは地域事務所にいる立場でしたが各国の事務所にいるチームをまとめていたため、各国事務所のシニア・マネージャーとの連携が不可欠でした。物事を動かす際、どのような連絡系統で、どのように意思伝達をするのかが非常に重要となりました。最初のお膳立てが甘かったために頓挫した計画があったり、思ったようなスケジュールで実施することができないなど、計画を実施することの難しさを骨身に感じる毎日でした。
祈りなしには乗り越えられなかった
チームで活動するとはいえ、皆それぞれが違う事務所に座っているため、仕事上の小さな悩みや不安を相談できる相手もいなく、「消えてなくなりたい」と感じることもたびたびでした。その中で自分を支えていたのは、ワールド・ビジョンに採用していただいたプロセス、わたしがカンボジアに駐在をすることを決めたプロセス、人身取引という仕事に巡り合ったプロセスが、偶然ではなく、大きな流れに身をゆだねた結果であり、その時々にたくさん祈った末の神さまのご計画を感じることができたからだと思います。
カンボジアへ駐在する前に学生時代からお世話になっていた修道院のシスターにあいさつにうかがった際、彼女はわたしの仕事内容を聞いてひと言「それはいのちに関わるお仕事ね。神さまの祝福なしには成し得ないことだから、本当に一生懸命お祈りしながら毎日過ごしてね」と励まされたことも常に心の隅にありました。
6年間の駐在を終え日本に帰国しましたが、今後は今までとはまた違った角度から人身取引の仕事に関われる可能性を模索し、挑戦していきます。わたしにとって、ライフワークとなるこのテーマに出会わせていただけたことを本当に感謝しています。
*こちらの文章は、キリスト新聞(3月21日)に掲載された記事を転載したものです
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【関連ページ】
・カンボジア:国情報
・世界の問題と子どもたち:人身売買
・チャイルド・スポンサーシップとは
この記事を書いた人
- 東北大学大学院修士課程修了後、私立高等学校にて英語講師として勤務。その後タイ王国チュラロンコン大学大学院タイ研究講座を修了。タイの東北地方の農村にて調査・研究を行い、NGOと女性の織物グループの形成をジェンダーの視点から考察した。2003年から2006年までの3年間、タイの国際機関(UNODC, UNAIDS, UNESCAP)や日本のNPOなどでインターン・コンサルタント・国際スタッフとして契約ベースで勤務。帰国後、千葉の財団法人、海外職業訓練協会にて、APEC・ASEAN域内諸国を対象とした、人材育成フォーラムや技能研修などの研修事業に携わった。2008年2月ワールド・ビジョン・ジャパン入団。2010年10月より2016年6月まで人身取引対策事業のためにカンボジアに駐在。日本に帰国後、支援事業部 開発事業第1課配属。2021年9月より休職(別組織より南スーダンに赴任)。日本に帰国後、2023年10月よりワールド・ビジョン・ジャパンに復職。
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