私事で恐縮ですが、私はプロ野球某チームのファンです。数年前、そのチームの本拠地球場が老朽化に伴い新しく建て替えられることになったのですが、資金繰りが思うようにいかないという報道がありました。するとファンが先頭に立って街頭やネットで募金を呼びかけ、最終的に1億円あまり集めることができたとのことです。私も2,000円ほどですが、参加をしました。
球場が完成した今、その姿を見るたびに「あの球場を建てるのにお父さんも参加したんだよ!」と息子に語る私です。
さて、ワールド・ビジョンが地域開発プログラム(以下ADP)で行う活動では、皆さまからいただいたご支援金を地域の人々が力を合わせて子どもとその家族が健康で安心して暮らせる地域づくりのために役立てています。その手法は、緊急なニーズに対して食料や衣類等を直接手渡すのとは異なり、時間をかけて地域の人々が自らの手で現状を変えていく力を養う、そのお手伝いをするというものです。
ベトナムでは、この取り組みを「地域住民のイニシアティブによる開発:Community Development Initiative(CDI)」という名前で呼んで推進しています。去る現地訪問の際にムオンチャADPでこのCDIの活動を見る機会がありました。
ラオスとの国境に近い山岳部の道は、多くが舗装などされておらず、雨季には幹線道路でもがけ崩れや、ぬかるみのために通行が困難になります。
村の中の子どもたちの通学・通園路の中には、急斜面で雨が降ると川のようになってしまうために幼稚園や学校に行くことを諦める子どもたちが多いと聞きました。
今回訪れたモン族の村では、お母さんたちが中心になってこの道を舗装するという取り組みが始められていました。それまでは雨が降ったら子どもたちは学校には行かせられないと諦めていたお母さんたち。
話し合いの中から、子どもたちの現状を変えるために道路を舗装したい、という声が上がってきたところで、ADPスタッフから「では地域の人々が持っているものを出し合って作ったらば」と提案をしたそうです。
現金収入の機会も乏しい村人たちにとって提供できるのは労働力のみでしたが、ADPからセメントなどの資材の提供を受けて道路を自分たちの手で作ろうということになりました。
小雨の降る午前でしたが、女性が中心になって整地の作業をする場面を見学させていただきました。スタッフに完成までどれくらいかかるか尋ねたところ「予定では1カ月、でも村人のペースだともう少しかかるかも・・・」との答えでした。
でも重要なのは住民自身が子どもたちのために汗を流して作ること、完成の暁には子どもたちに自分たちがつくった、と自慢げに話す村人の顔が目に浮かびます。私も飛び入りで鍬を持たせていただきました。
次に訪問するときには、この道路建設に微力ながら参加した私も、「私もつくった道路」と言いたいと思っています。
セメントや砂利などの資材はもちろんスポンサーの皆さまのご支援によるもの、まさに支援をしてくださった皆さまと一緒に作った道路です。
1日150円、ペットボトル1本分のお金で、今日も少しずつ幸せになっていく子どもたちがいます。
その幸せは、きっとあなたを幸せにする。
一緒に幸せになろう チャイルド・スポンサーシップ
この記事を書いた人
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国立フィリピン大学社会福祉・地域開発学部大学院留学。
明治学院大学大学院社会学研究科社会福祉学専攻博士前期課程修了。
社会福祉専門学校の教員を経て、2000年1月より社団法人日本キリスト教海外医療協力会のダッカ事務所代表としてバングラデシュへ3年間派遣。
2004年12月から2007年3月までは国際協力機構(JICA)のインド事務所企画調査員。
2007年9月から2年半は、国際協力機構(JICA)のキルギス共和国障害者の社会進出促進プロジェクトで専門家として従事。
2010年9月、ワールド・ビジョン・ジャパン入団。
支援事業部 開発事業第2課 プログラム・オフィサー。
2020年3月、退団。
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