時々支援者の方々から、「アフリカのプロジェクト地に滞在される時はどんなものを食べているのですか?」というような質問を受ける。 わたしの現地での食生活は滞在短期の長さとプロジェクト地周辺の状況によって様々である、、。
例えば、紛争により難民や国内避難民が砂漠のような土地に退避し、そこで緊急援助プロジェクトを実施しているような現場であれば、スタッフのための住居や食糧品は、調達可能な場所から運ばなければならない。多くの場合住居は、軍隊が使うようながっしりとしたテントを用い、食糧品は主食の穀物、スパゲッティ、パンの他に様々な調味料、飲料水や清涼飲料水等を調達する。肉類、野菜類は、周辺に住む人々から購入できる場合が多いが、なければこれも冷凍のものを調達するしかない。発電機を設置し、電気は引けるので、冷蔵庫を調達して腐る物はある程度保存することはできる。また当然、料理をつくるコックさんを雇わなければならない。厳しい現場で支援活動をするスタッフにとって、3度の食事は肉体的にも精神的にも大変に重要である。したがって、腕のいいコックが難民や国内避難民の中にいると、NGOや国連機関等が競って雇うことも珍しいことではない。
さてこんな食糧事情のかなで、どんな料理が食べられるかというと、例えば事業調整のために5日間の野営テント生活をした南スーダンのバリ・エル・ガザールのプロジェクト地のメニューは、こんな感じのであった。
基本的な朝食メニューは、パン、卵焼き、ボイルしたジャガイモ、豆のトマトソース煮、それにコヒーか紅茶。
昼食は、ご飯、塩味のスパゲティー、ウガリ(とうもろこしの粉で作ったアフリカ人のパンのようなもの)、山羊の肉のソテー、鶏肉のソテー、ミックス・ベジタブル、フライド・ポテト等と清涼飲料水
夕食は、ご飯、塩味スパゲティー、野菜スープ、山羊の挽き肉とトマトソースの煮込み、山羊の内臓のソテー、ミックス・ベジタブル、マッシュド・ポテト等と清涼飲料水
一見豊かなメニューでこれ以外のバラエティもあるが、どれも油の量は多く、毎日食べていると、空腹感はあるが唾液が出動を拒否してしまう。 また、山羊は子どものころペットのような存在で私の周りにいつもいたので、感覚的にどうしても食べられない。 近隣から調達し我々の野営地で食糧として飼われている10匹程度の可愛い山羊たちが、3日に1度ぐらいのペースで肉になってゆくのも、急激に私の食欲を減退させていった。 そこでとうとう秘密兵器を出さざるを得なくなる。
それは、アジア以外の出張時に必ずスーツケースの荷物の中に忍ばせて持ってゆくカップ麺である。
「ごめん、今日はどうも胃の調子が悪いからこれを食べるよ。」と野営生活で食卓を共にしていたエチオピア人やケニア人の同僚たちに仁義をとおし、コックさんからお湯を沸かしてもらってズルズルと麺をすするのである。(カップ麺は胃に優しいとはいえないのだが、、、。)
上記の南スーダンのような緊急援助の現場は、私が現場へ行く際の食生活としては稀である。 一般的な状況としては、アフリカの国でも援助関係者が宿泊できるようなホテルのある町がプロジェクト地の近くにあれば、そこに宿泊し宿泊料金に含まれているコンチネンタル・ブレックファーストをとり、昼食はプロジェクトの事務所が用意してくれるご飯、鶏肉のフライ、バナナなどの果物を食べる。 夜は、ホテルのレストランか近隣のレストランでご飯、スープ、フライド・ホテト、スパゲティー、肉料理等を食べることも可能だが、、、、。
しかし最近は3つの理由でやはり夕食にカップ麺をすすっている自分がいる。
1.昼間は問題ないが、夜間外出しレストランで食事をすることは、安全上のリスクがある。
2.ホテルのレストランは、一般のレストランと比較すると2倍以上の料金をとる。
3.昼間はプロジェクトの現場に行き、夜の大半の時間はホテルの部屋でEメールのチェックと返信に費やねばならない現実がある。
アフリカの乾燥した空気の中に漂うかつおだしのスープの香りのも、私の空間の中ではすっかりマッチしてしまった。
カップ麺、それは私にとって出張時の食生活の秘密兵器である。
この記事を書いた人
- 大学卒業後オーストラリア留学などを経て、青年海外協力隊に参加モロッコに2年間滞在。1989年にワールド・ビジョン・ジャパン入団。タイ駐在などを経て、1997年より支援事業部部長(旧 海外事業部)。現在までに訪れた国数約85カ国。4人の子どもの父親でもある。2014年3月退団。
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