【スタッフ・ブログ】国際NGO ワールド・ビジョン・ジャパン

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ワールド・ビジョンのCEOはどんな人?

先日ワールド・ビジョンの総裁、CEO(最高責任者)であるアンドリュー・モーリーが来日した。ワールド・ビジョンは世界約100カ国で活動する国際NGOで、それぞれの国が事務局を置き、独自に総会・理事会をもって運営の責任を持っている。ワールド・ビジョン・ジャパン(WVJ)もそのひとつであり、現在は私(木内真理子)が事務局長を務めている。

ワールド・ビジョンCEO アンドリュー・モーリー

ワールド・ビジョンCEO アンドリュー・モーリー

私にとって、ワールド・ビジョンのパートナーシップオフィス全体を率いるアンドリュー・モーリーは言わば「大ボス」。これまでに対面/オンラインを問わず、何度も顔を合わせてきたものの、日本に迎えるのは初のこと(アンドリューはワールド・ビジョンでの勤務前の仕事で10回ほど訪日経験あり)。「いい機会にできるといいけれど、はて、どうしたものか…?」と数カ月前から関係者と相談し、企画・準備をしてきた。

3日間は、ざっくりこんな行程だった(盛りだくさん…!):
4月2日「スタッフデー」
午前:スタッフ有志と皇居ラン(ご支援者の方も2名参加)
午後:WVJオフィスにて全スタッフと「タウンホールミーティング(対話集会のようなもの)」開催
4月3日 「パートナーデー
午前:国際基督教大学(ICU) シンポジウム 基調講演
午後:銀座教会にて懇談会
4月4日「理事会デー」
終日:ワールド・ビジョン・ジャパン理事とのミーティング、常務委員会

こういう相談をもちかけたとき、「面白そうですね!」とポジティブに受け止めて企画をふくらませてくれるスタッフ、ノリよく参加して積極的に質問や発言をしてくれるスタッフ、外部の方と連携して必要な準備をヌケモレなく進めてくれるスタッフがいるのがWVJの頼もしいところだ。

スタッフとの集合写真(中央がアンドリュー、左隣が妻ヴァネッサ、その左隣が筆者)

スタッフとの集合写真(中央がアンドリュー、左隣が妻ヴァネッサ、その左隣が筆者)

どんなキャリアの人? なぜワールド・ビジョンへ?

アンドリュー・モーリーは2019年にワールド・ビジョンの総裁に就任し、3万4,000人以上のスタッフとともに働き、ワールド・ビジョンの100カ国での活動に指導的役割を果たしている。元々はどんなキャリアを持ち、どのような経緯・思いからワールド・ビジョンで働くに至ったのか。4月2日のタウンホールミーティングで彼が語った内容から紹介する。

まずは簡単に自己紹介:
・イギリス、ロンドン在住
・WVにはいって8年になるが、その前は民間企業でキャリアを積んできた
・妻のヴァネッサと暮らしている。2人の息子(22歳と24歳)がいる
・妻のヴァネッサは教育の専門家。とくに子どもたちの識字能力をあげるための訓練や、学校教師の研修などをしている

ヴァネッサとアンドリューの仲睦まじい姿

ヴァネッサとアンドリューの仲睦まじい姿

どんなキャリア?:
・ 車の会社(Ford)でマーケティングの仕事からキャリアをスタート
・ その次はスカイテレビでスポーツ番組のマーケティング幹部。その後も一貫してマーケティング、あるいは経営陣
・ ハロッズでも働いていた(バッグのロゴをデザインした)
・Googleやモトローラでも働いた(モトローラ時代、よく日本に来た)
・クリスチャン・エイドというNGOで理事もしていた
・英国聖公会の牧師(WVで働き始めて間もなく、CEOになる前に牧師になった)

WVでの仕事は、何にワクワクしている?(←スタッフからの鋭い質問)

Googleやモトローラで等の企業で働いてきたが、それぞれに素晴らしいブランドを持つ良い会社だったので働けて幸運だったけど、それらの会社が第1に追及することは株主の利益。これは企業の持続性のためにとても大切なこと。でもWVは世界を変革することそのものを仕事としている世界の弱い立場に置かれた子どもたちに、食料、水、安全、そして希望を届けている。永遠の価値あることに関われていると実感するとき、それが一番ワクワクする。だからスタッフの皆さんには、「なんのお仕事をしていますか?」と聞かれたら、ぜひ、こう答えてほしい:「子どもたちのために、世界を変えています。希望を届けています」と。そして、その質問をした人に「あなたは何をしますか? ぜひ、一緒にこの働きをしませんか? チャイルド・スポンサーになりませんか?」と招いてほしい。私たちの中から希望があふれ出すことで、今希望を必要としている子どもたちに支援が届けられるのだから。

スタッフに向けて熱く語りかけるアンドリュー

スタッフに向けて熱く語りかけるアンドリュー

WVに来た経緯:

民間企業の幹部として働くことをエンジョイしていたものの、何かが欠けていた。もっと何かできることがないかと考えていた。聖公会の牧師となる資格を得るための学びをしているとき、当時WVのCEOだったケビン・ジェンキンスに声をかけてもらい、WVの働きについて話を聞いた。最初は丁重に断るつもりで出かけたが、話を聞くうちに、この働きこそが自分が関わりたいことだったのではないか、この働きに加わることが神からのCallingなのではないかと感じ、家に帰りヴァネッサに「引き受けようと思う」と話して驚かせた。

ユーモアを交えて語るアンドリューの話に、爆笑が起こる場面も

ユーモアを交えて語るアンドリューの話に、爆笑が起こる場面も

世界情勢をどう見ている?

WVの方向性、支援業界/世界情勢の見立てについても聞いてみた。以下がアンドリュー・モーリーが語った内容:

世界の状況は日に日に厳しくなっている。たとえば、10年前の2014年にWVが「大規模支援」と定義して実施していた緊急支援事業は3つだった。2024年はこれが37事業にも増えている。なぜか ー 以前であれば緊急支援が発生しても、支援を行った結果状況が改善し支援終了を迎えていったが、近年は緊急支援中に新しい危機が起こり続けている。アフガニスタンやハイチなどは、次々に危機が勃発して、支援の必要性はなくなるどころか益々増えている。これが意味するところは、WVが、私たちのような支援団体が、これまで以上に必要で、大切な役割を担っている、ということだ。その中でもWVの特徴はさまざまあるが、ひとつ挙げるとすれば、キリスト教精神に則って活動していること、それを中心に置いているということだと思う。

スタッフに向けたメッセージ

タウンホールミーティングの最後、アンドリュー・モーリーはWVJのスタッフに向けてこう語りかけた:

いまWVJで働いている皆さんも、いろいろなほかの選択肢がある中で、この働きを選んでくれていることを感謝しています。タフな市場である日本で活動するのは、簡単ではないと思います。こうして伝えている感謝は、私だけからのものではありません。あなたが仕えている子どもたちからの感謝でもあるのです。皆さんの仕事は、何百万人もの子どもたちの生活を変えているのです。チャイルド・スポンサーシップの状況、うまくいかないこともあるでしょう。不安になることもあるでしょう。でも、その状況でもなお、子どもたちがあなたに感謝していることをどうか忘れないでほしいのです。その子どもたちから、頑張り続けるための情熱を得てください。その子どもたちのことを思って、前に進んでいってほしいのです。

アンドリューの言葉に拍手をおくるWVJスタッフ(中には涙ぐむスタッフもいました)

アンドリューの言葉に拍手をおくるWVJスタッフ(中には涙ぐむスタッフもいました)

さて、ここまでがワールド・ビジョンCEOの来日公式イベント・スタッフ編(オモテ版)のご紹介です。次回のブログでは、3日間の全行程に同行した私が見たアンドリューの横顔(ウラ版?)をご紹介します。

筆者(タウンホールミーティングにて)

筆者(タウンホールミーティングにて)

この記事を書いた人

木内 真理子WVJ理事・事務局長
青山学院大学を卒業後、国際協力銀行(JBIC)前身のOECFに入社。途中英国LSE(社会政策学)、オックスフォード大(開発経済学)での修士号取得をはさみ、アフリカ、インドネシア、フィリピンにおいて円借款業務を担当。母になったことを契機に転職。東京大学にて気候変動、環境、貧困など21世紀の課題に対応するSustainability Scienceの研究教育拠点形成に従事。「現場に戻ろう」をキーワードに08年10月よりWVJに勤務。アフリカ、中南米、ウズベキスタンを担当。2011年5月より、東日本緊急復興支援部長。2013年4月より副事務局長。2017年4月より事務局長。2020年4月より現職。青山学院大学非常勤講師、JICA 事業評価外部有識者委員、JANIC理事、日本NPOセンター副代表理事
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