【スタッフ・ブログ】国際NGO ワールド・ビジョン・ジャパン

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アッパーナイル便り③ コミュニティ・パワー

現場では、シルック王国の人々のパワーに驚かされる毎日である。

その(1) パカン村(パニカン郡パカン地区)のコープ
パカン村にはパカン郡唯一のコープがある。昨年、パカン村の住民が村長に対してコープを開きたいと提案し、村民会議を開いた上で決めたという。2人の村人(パカン村1人、オバイ村1人)が雇われて販売を行っている。仕入れは、コープ委員会の承認後、代表者がアッパーナイル州州都マラカル市で行い、月末には委員会が帳簿のチェックをしているという。売り上げを利用して隣村のオバイ村にも出店するのが、将来の夢だという。

販売員のサミュエル・オトックさん(パカン村)

販売員のサミュエル・オトックさん(パカン村)

その(2) オバイ・ディック村(パニカン郡パカン地区)の小学校
オバイ・ディック村とアディディアン村の中間地点に建設中の小学校[i]がある。現在は、これらの村には小学校がないため、子どもたちは隣のパニドウェイ地区アラキ村までの長距離を徒歩通学している。特に雨季は大人の膝上まで水がつかるため、子どもたちの通学は非常に大変だ。村人の「教育」への思いは非常に強く、村人にどこの支援で小学校を立てているのか聞いてみると、オバイ・ディック村とアディディアン村の村民やスーダンの首都ハルツームや州都マラカル市で働く同村出身者が寄付をして、資機材(トタン屋根、材木、セメントなど)を購入・現場へ搬送したという。大工や作業員は全て村民がボランティアで行っており、村民が食事の差し入れをして支えているという。

建設中のオバイ・ディック小学校

建設中のオバイ・ディック小学校

その(3) 船着場付近の草刈
シルックの雨季には船が唯一の交通手段だ。雨季真っ只中の8月には、ナイル川支流のロロ川の水位が上昇し、乾季の船着場より2キロほどワールド・ビジョンのニルワック・キャンプ寄りのパニカン地区ウォブ村付近が船着場になる。船が通れるように、パニカン地区の村長が話し合い、村毎に草刈の場所を決め、村人が腰ぐらいの水の中で草刈をする。蛇やワニという危険を冒して、コミュニティのために働く村人には脱帽の思いだ。

シルックの人々に聞くと、以上の事例は驚くことではなく、戦争前には日常のことだったようだ。コミュニティが小学校や保健所の建設に携わっていたとのこと。戦争でコミュニティの働きが一旦途切れたが、少しずつ再開しているという。

浄水装置の資材を運ぶオバイ・ディック村の人々

浄水装置の資材を運ぶオバイ・ディック村の人々

[i] ワールド・ビジョンはジャパン・プラットフォームと支援者の皆様のご支援をいただいて、この建設中の小学校のトイレを村人とともに建設する予定である。

この記事を書いた人

伊藤真理支援事業第1部 人道・開発事業第3課 課長
大学でスワヒリ語(東アフリカの言語)・アフリカ地域学を学んだ後、在ケニア日本大使館において在外公館派遣員として勤務。そこで、ストリートチルドレンへのボランティアを経験したことから、困難な状況にある子どもたちへの支援がライフワークに。留学、タンザニアでの協力隊を経て、2003年2月よりワールド・ビジョン・ジャパンに勤務。リベリア、スーダン、南スーダン駐在を経て、2010年5月より東京事務所勤務。現在、緊急人道支援課長。関西に住む3人のかわいい甥っ子・姪っ子たちの成長が元気の源。
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