【スタッフ・ブログ】国際NGO ワールド・ビジョン・ジャパン

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世界を変えた新型コロナ「三密」のスラムは今

こんにちは、ワールド・ビジョンスタッフの山下泉美です。
世界中で広がり続ける新型コロナウイルスによって、私たちの生活は大きく変わりました。

ワールド・ビジョンのスタッフも、以前は日常茶飯事だった支援地域や海外オフィスへの出張ができなくなり、海外駐在中のスタッフが帰国することも4月以降は難しくなりました。

それぞれが、それぞれの場所で、人と距離をとり、三密を避け、Stay Homeでできることを探りながら、それぞれのwithコロナを模索しています。

ワールド・ビジョンが学校に行けない子どもたちのために開いたインフォーマルスクールに通うマスク姿の女の子(インド)

ワールド・ビジョンが学校に行けない子どもたちのために開いたインフォーマルスクールに通うマスク姿の女の子(インド)

withコロナ時代の新常識となった「人と距離をとる」「三密を避ける」「Stay Home」ですが、実はワールド・ビジョンが支援する多くの地域はこれができない場所にあります。

その一つが、都市部のスラム。
トタンを重ねただけの狭い家が連なるスラム。一間しかない家に大家族で暮らしていることも多く、とても「三密」を避けることはできません。トイレや手洗い場を何十世帯もの人々が共有しているので「Stay Home」していても感染リスクは常に伴います。

わたしがこれまで見てきた都市部のスラムの中でも、最も「三密」な場所がバングラデシュのダッカでした。

線路沿いに家々がひしめくダッカのスラム(バングラデシュ)

線路沿いに家々がひしめくダッカのスラム(バングラデシュ)

バングラデシュの首都ダッカは世界一人口密度が高い都市の一つ。市街地には一キロ四方に3万人から4万人もの人が住んでいて、これは東京23区の2倍~3倍以上の過密度になります。

といっても実際に目にするまでは、わたしもこの町の「過密度」を想像することはできませんでした。目に入る人、人、人。道路沿いのあらゆるブロック塀には隙間なく布がかぶせてあり、テントのようにしてその下に人々が暮らしていました。スラムに入れば、先ほどの道路よりも過密な状態で人々が暮らしていました。

1時間ほどスコールが降った後のダッカ市内の道路。いつものことなので人々が普通に行き交う(バングラデッシュ)

1時間ほどスコールが降った後のダッカ市内の道路。いつものことなので人々が普通に行き交う(バングラデッシュ)

三密で暮らす人々に追い打ちをかけるように、東南アジアは今、雨期を迎えています。排水のインフラが整っていないスラムの多くは、スコールが降ったらすぐに道路が水につかるほどの洪水が起こります。あふれた水は、下水やゴミを巻き込みながら人々が暮らす家の中にまで浸水してきます。こうした環境では、新型コロナだけでなく様々ウイルスや細菌に感染しやすく、慢性的な腹痛や頭痛を抱えている子どもにも多く出会います。

雨の中でも外で遊び続けていた男の子たち(バングラデシュ)

雨の中でも外で遊び続けていた男の子たち(バングラデシュ)

新型コロナは世界を一変させました。

でも、変えることができず、感染リスクと常に隣り合わせで生きている人たちが、今この瞬間も世界中にいることを知っていただきたいのです。

ワールド・ビジョンは、このような都市部のスラムに暮らす人々をウイルスの感染などから守るため、トイレの建設と、排水溝設置の支援を行っています。今まさに建設中のプロジェクトで、感染防止対策を取りながら、現地スタッフが現場に通い技術者とともに作業を進めています。

「三密」を作ってしまう都市部のスラム化は、人々が生まれ故郷の村で十分な収入が得られないことが大きな原因になっています。

「都市に出れば楽な暮らしが待っているかもしれない」そう夢を抱いて街に出るのですが、都市部では読み書きや計算ができないと就ける仕事は限られています。

街に出ても楽にならない生活、手に入らない快適な暮らし。貧富の差を目の当たりにする厳しい暮らしの中で、多くの人がドラッグやアルコールに走り、子どもを置いて親のどちらか(時には両親ともに)が家を出て→さらに生活が厳しくなり→子どもが学校に行けずに働く、という負の連鎖をたどる家庭にいくつも遭遇しました。

「いったい、どうしたらこの子どもたちを救えるだろう?」

ワールド・ビジョンでは、こうした複雑に絡んだ貧困問題を解決するために、人々が都市に出なくても故郷の村で生計を立てることができるよう、そしてその子どもたちが学校で学び「夢」をもって成長できるように、主に地方の貧困地域でチャイルド・スポンサーシップの支援を行っています。

今この瞬間、新型コロナの感染リスクから「三密」で暮らさざるを得ないスラムの子どもたちを守る支援。そして、将来的にそのリスクを生まないための継続的なチャイルド・スポンサーシップの支援。

バングラデシュの子どもたちが健康で元気に、未来を夢見て暮らしていくために、この両輪の支援こそが必要なことだと信じています。

あなたも、ワールド・ビジョンの支援に参加していただけませんか?

子どもたちの未来を応援 1日150円の継続支援でチャイルド・スポンサーになる

スラムの子どもたちの今を応援 新型コロナの危機にある子どもたちの募金に協力する

バングラデシュのスラムで出会ったモスミちゃんと筆者

バングラデシュのスラムで出会ったモスミちゃんと筆者

新規ファンドレイジング課 山下泉美


【山下スタッフの過去のブログ】
0回目の誕生日パーティー 貧困を生きる少女の叶わぬ夢
サッカーボールと、溶けたアイス~カンボジアのスラムで出会った少年の意外すぎる行動
バングラデシュ スラムの少女 怖いと感じたら生きていけない

この記事を書いた人

WVJ事務局
世界の子どもたちの健やかな成長を支えるために、東京の事務所では、皆さまからのお問合せに対応するコンタクトセンター、総務、経理、マーケティング、広報など、様々な仕事を担当するスタッフが働いています。
NGOの仕事の裏側って?やりがいはどんなところにあるの?嬉しいことは?大変なことは?スタッフのつぶやきを通してお伝えしていきます。
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