【スタッフ・ブログ】国際NGO ワールド・ビジョン・ジャパン

Read Article

研究の道からNGOへ~ミャンマーの旅で芽生えた想い~

クリスマスまで、あと少しですね。私は、2012年から5年間、英国のスコットランドに住んでいました。私が住んでいた街では、12月24日の夕方になると、全ての会社は休みになり、そして、ほとんどのお店もシャッターを閉めるので、街中が閑散となります。普段は賑やかな目抜き通りが、不思議な静寂に包まれていたのを覚えています。

「教会コーディネート」の新人です!

さて、私はこの4月にワールド・ビジョンの「教会コーディネート」担当として入団したばかりの新人スタッフ、長下部(おさかべ)と申します。

それ以前は、スコットランドで、現代におけるキリスト教の社会貢献の可能性と課題について研究をしていました。帰国後、ワールド・ビジョン・ジャパンが教会担当のポストを探していることを知り、元々、研究の経験を実践の場でも生かしたいと思っていた私は、「これだ!」と思ったのです。

でも「教会コーディネート担当ってどんな仕事?」と思う方もいるかもしれません。

メインの業務は、キリスト教会の皆さまとのコミュニケーションとパートナーシップ関係の維持と構築です。ワールド・ビジョンはアメリカ人のキリスト教宣教師ボブ・ピアスによって創設されて以来、たくさんの教会の皆さまに支えられてきました。教会には、「社会や地域のために何かしたい」「世界の問題について知りたい」と思っておられる方々が多くいらっしゃいます。教会で活動報告や講演をさせていただくことを通して、子どもの人権理解を広めたり、災害などの国内の有事の際に地域の教会の皆さまと効果的に連携するための関係作りを行っています(業務の詳しい内容については、私の第二弾のブログにご期待ください!)

開発の現場で働く父からの教え・そしてミャンマーへ

さて、私が「社会貢献」に関心を持ったきっかけは、開発業界で働くの影響が大きかったように思います。長期出張のために、多い時で一年の半分を途上国で過ごしていた父だったのですが、帰国した際には、色々なことを話してくれました。また、母も、幼い頃から様々な機会を通じて世界に目を向けさせてくれました。両親の話は私にとって、まさに最初のグローバル教育でした。

中でも印象に残っているのは、ミャンマーの民主化について話してくれたことです。「それ自体は望ましいけれども、他国が入り込むことによって、ミャンマーの文化は失われてしまうだろう」様々な途上国の現場を目撃してきた父です。その父の現実的な一言は、一般的に「当然良い」と思われている正論や価値観であっても、ある地域の歴史や文化によっては、必ずしも「当然」とは限らないかもしれない、という気づきを与えてくれました。

*****

「まずは、世界の現状を知らなければ!」そう思い、一歩踏み出す決心をした私は、学生時代、あるキリスト教系の団体を通じて、ミャンマーの孤児院を訪問することにしました。多くの友人に、「長下部君が途上国に行くなんて信じられない」と驚かれました。洋服などの物資を届けたり、子どもたちのためのプログラムを行って回ったのですが、目をキラキラさせて飛びついてくる子どもたちと遊んでいると、親を失くした子どもたちであることを忘れてしまいそうでした。帰国後、その時に撮った写真を友人に見せたら、「長下部君って、こんなに笑うんだね!」とびっくりされたことを覚えています。今見返してみても、「本当に楽しそうだな」と自分でも思います。

ミャンマーの子どもたちと筆者

ミャンマーの子どもたちと筆者

一方、現実を突きつけられた旅でもありました。貧困紛争など、途上国の子どもたちを取り巻く問題の根深さと複雑さを思い知らされたのです。私たちは物資を届けることはできたけれども、社会の構造や、私たちの意識や価値観が変わらない限り、問題が解決されたとは言えないのではないか、と感じたのです。私の中で、社会や世界的な問題に関わるNGOで働きたい、という気持ちが芽生えた瞬間でした。

しかし、私の意気込みは父によって撃沈させられます(笑)。現場で常に資金繰りに疲弊しているスタッフの姿が印象に強く残っているようで、「そのような世界に進むと苦労するからやめておきなさい」、と一瞥されたのです。その時は父を上手く説得できず、実践ではなく研究の道に進むことにしました。

ついに想いが成就して、NGOで働き始めました

時は流れ、様々な紆余曲折を経て、ミャンマーの旅で芽生えた気持ちが成就したことを感慨深く思っています。NGOの社会的認知度や体力も向上したこともあり、今では父は、開発業界におけるNGOの重要な役割を理解し、同労者として私の働きを応援してくれています! 感謝なことに、研究や実践の経験を生かして、大学での教鞭の機会も与えられています。

・・・とは言いつつも、研究の世界とのギャップに戸惑いを感じながら、今のところ失敗ばかりしているかもしれません(笑)。80人近くのスタッフの声が行き交う職場で資料や文献を読むことも初めてですし、「活動報告をさせていただけませんか?」と、いわゆる「営業電話」をすることも初めてです。ある一つのことに集中しすぎて、周りが見えなくなってしまうこともあります…。

不慣れな面もある中で、くじけそうになるときもありますが、子どもたちが立たされている世界の問題に心を痛めておられる支援者の方々から、私がミャンマーの子どもたちに心を痛めたことを思い出させていただいています。

*****

クリスマスは、イエス・キリスト(Christ)の生誕を祝うための祭り(Mass)として、キリスト教会を中心に広まったと言われています。キリストは飼い葉おけでひっそりと生まれ、貧しさや差別に苦しむ人々のために人生を捧げられました。世界の問題は山積みですが、このfestiveな季節にあって、愛の精神を忘れずに、少しでも多くの子どもたちに支援を届けられるよう、日々の業務に取り組んでいきたいと思います。

キッズスペースで子どもたちと遊ぶ長下部スタッフ

台風19号で被災した福島県郡山市の小学校に開設したキッズスペースで子どもたちと遊ぶ筆者

サポートサービス部 教会コーディネート
長下部 穣



【関連ページ】

「教会との連携」

【長下部スタッフのブログ】
恐れの時代に、希望を届ける
「ソーシャル」から「フィジカル」へ? 社会的繋がりとニュー・ノーマル
新しい生活様式、新しい働き方、新しい活動。

この記事を書いた人

WVJ事務局
世界の子どもたちの健やかな成長を支えるために、東京の事務所では、皆さまからのお問合せに対応するコンタクトセンター、総務、経理、マーケティング、広報など、様々な仕事を担当するスタッフが働いています。
NGOの仕事の裏側って?やりがいはどんなところにあるの?嬉しいことは?大変なことは?スタッフのつぶやきを通してお伝えしていきます。
Return Top