こんにちは。教会担当コーディネートの長下部(おさかべ)です。
ソーシャル・ディスタンシング。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)などの感染症拡大防止対策の一つであることは、ご周知の通りです。
最近、世界や日本の各地で、COVID-19の影響下で社会的孤立を余儀なくされ、精神的な困難を覚える方々が増加している、というニュースに触れることが多くなりました。
命を守るためのソーシャル・ディスタンシングによって、命の危険に脅かされる。私たちにとって人との繋がりがいかに大切なのかを思い知らされます。
実は、世界のワールド・ビジョンの中には、COVID-19の世界的拡大が始まった、かなり初期の段階から、「ソーシャル・ディスタンシング(社会的距離の確保)」ではなく、「フィジカル・ディスタンシング(物理的距離の確保)」を使っているオフィスがあります。何故でしょうか。
ワールド・ビジョンは、子どもたちが豊かないのちを持って生きるためには、社会的関係性の維持と回復が必要だと考えています。だからこそ、水や食糧などの物資を届けることはもちろん、子どもたちが、家族やコミュニティから愛されて育つことのできる環境作りを目指してきました。
そんな社会性を大切にしてきたワールド・ビジョン。COVID-19の対応にあたりながら、耳慣れない「フィジカル・ディスタンシング」を使うのは、物理的距離の確保によって感染症自体から身を守ることは大切だが、社会的繋がりの確保によって、孤立や偏見という感染症の影響から身を守ることも大切だ、と考えるからです。
日本では、「ソーシャル」「フィジカル」のどちらが適切かどうかについて、有識者の間で意見が分かれているようです。当然、「ソーシャル・ディスタンシング」を使っている人々が、社会的繋がりの大切さを否定しているわけではありません。「ソーシャル・ディスタンシング」が浸透した今、新しい言葉に切り替えることによって起こり得る混乱を防止しようとしているのでしょう。いずれにせよ、COVID-19影響下にあって、多くの人たちが、社会的繋がりの大切さについて「肌」で感じているのだと思います。
ワールド・ビジョンが大切にしている時間
さて、ワールド・ビジョン・ジャパンのスタッフは、物理的距離と社会的繋がりの両方の確保のために続けていることがあります。
ワールド・ビジョン・ジャパンには、お昼休み前の15分間(火曜日は45分間)、団体の基本理念であるキリスト教精神やミッション・ステートメントを通して、自分自身の働き方を振り返る時間を設けています。担当のスタッフが発表をしたり、グループに分かれてディスカッションしたりすることもあります。
一日の間にこの時間があることは、私にとって、とても大切です。
「そういう考え方もあるんだ」と刺激を受けたり、「この先輩も同じような悩みを抱えながら仕事しているんだなあ」と励まされたりしながら、世界の子どもたちのために働く理由の原点に戻ることができるからです。
ワールド・ビジョン・ジャパンでは、テレワークが推奨され始めたかなり早いうちから、ビデオ会議アプリを使って、この時間を継続する体制を整えました。それは、スタッフの学びとしてこの時間を維持することはもちろん、スタッフの間の社会的繋がりを絶やしてはならない、と考えたからです。この時間のおかげで、テレワークをしていても、月曜日から金曜日までの毎日、スタッフ同士が「顔」を合わせることができます。
このビデオ会議アプリを使う上で、時々「しまった!」と思うこともあります。私は、オンとオフを使い分けるために、シンプルで割とカチッとした服装で出勤することがほとんどなのですが、つい先日、よりにもよって私の持ち物の中で一番派手なTシャツを着てこの学びの時間に参加してしまったのです。普段着の様子がバレてしまい、とても照れくさい思いをしました。皆さんは気を付けてくださいね(笑)。
今、わたしたちに試されていること
ビデオ会議を利用して、従業員間の交流を始めた企業や団体も増えているようです。また、日本では、感染の影響を受けやすい高齢者のために若い世代が用事を請け負ったり、休業要請のために収入が減ってしまったお店を助けるために地域の方々が配達のボランティアをするなど、心温まるニュースを多く耳にします。物理的距離の確保を迫られる中、多くの人々が、社会的繋がりや助け合いの大切さを改めて実感しているのだと思います。
世界の各地で緊急事態宣言が少しずつ解除され始めました。トロント大学トリニティ・カレッジのクリス・ブリテン教授は、ポスト・パンデミック社会を見据えて私たちに今試されていることは、COVID-19の影響下で私たちが再認識した、社会的繋がりや助け合いの精神を維持できるかどうかだ、と言っています。
ニュー・ノーマル。生活の仕方や働き方の新しい様式だけではなく、そんな社会的繋がりと助け合いを大切にすることが新しい常識になる社会を目指して、そして、私自身がそれを常識として生きることができるよう、今、為すべきことを誠実に行っていきたいと思っています。
サポートサービス部 教会コーディネート
長下部 穣
【関連ページ】
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・恐れの時代に、希望を届ける
・研究の道からNGOへ~ミャンマーの旅で芽生えた想い~
この記事を書いた人
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