ワールド・ビジョンは、途上国の子どもたちの様子を日本の皆さまに知っていただくため、貧困で厳しい環境に暮らす子どもたちの生活を紹介するテレビ番組「世界の子どもの未来のために」を制作しています。その取材中のエピソードをご紹介します。
暗くなるまでリヤカーを引いてゴミ拾いの仕事
支援地域での子どもたちとの出会いは、驚くこと、意外すぎることの連続です。
カンボジアの首都、プノンペンのスラムで出会ったペアくん(9歳)お母さんと2才になる弟の3人家族。ペアくんは生活費を稼ぐため、ゴミ拾いの仕事をしています。
リヤカーを押すお母さんを手伝って、落ちているゴミを拾い、そのゴミを売ってお金にします。生ゴミが入った袋を開け、アルミ缶やペットボトルなどを取り出します。この時期の気温は40度近く、腐ったゴミを素手でさわるため感染症をおこしてしまうこともあります。
9歳のペア君、泣きたくなるほど仕事がつらい日も、涙をぬぐいながら、無言のまま、ごみを拾いつづけます。荒天でゴミ拾いができない日は「おなかがペコペコのまま寝ます」と話してくれました。
そんなペアくんと出会った日のこと。
大切なサッカーボールが・・まさかの展開
ペアくんへのおみやげに、サッカーボールを持って行きました。といっても本物はではなく、サッカーボール柄のビーチボールです。パンパンに空気をいれると普通のサッカーボールよりも大きくなりました。ペア君はそれが嬉しかったらしく、幸せそうな笑顔でビーチボールをずっと抱えていました。
そこへ、ペアくんの弟(2歳)がやってきました。ボールが気になってしかたない弟くん。はじめこそ離さなかったペアくんですが、かわいそうに思ったのかボールを弟くんにかしてあげました。
その瞬間・・・
弟くんが無邪気に投げたボールがコロコロ転がっていき、近くでゴミを燃やしていた焚火の中に着地。
ジュッ!という音と共に、ボールは消えてなくなりました。ペラペラのビニールでできたビーチボールは、あっという間に溶けてしまったのです。
あまりのことに声も出ない大人たち。怒って泣き出すペアくんの声が響きます。あんなにうれしそうに抱いていたのに、一瞬でなくなってしまったボール。無理もありません。
ペアくんに泣き止んでもらおうと、あの手この手を試してみました。
「新しいボールを買いに行こう」(近くでは大きなボールが見つからなかった!)
「他のことをして遊ぼう」(僕のボールで遊びたい!)
「おかし食べようか?」(いらない!)
「アイス買ってきたよ!」
ペアくんがアイスを食べなかった、意外すぎる理由
「アイス」の一言でようやく少し泣き止んでくれたペアくんに、棒アイスを渡しました。これで笑顔に戻ってくれると思ってホッとしたものの、なぜかペアくんはアイスを手にしたまま食べようとしません。
「溶けちゃうよ。食べないの?」
そう声をかけると、ペアくんはアイスを食べない理由を教えてくれました。
「弟に分けてあげたいから、とっておく」
さっきまで、弟くんに大切なボールを壊されて、怒って泣いたペアくん。それなのに「アイスを分けてあげたいから、とっておく」だなんて、なんて弟思いの優しい心なんでしょう。
溶けつづけるアイスを持ってペアくんの家まで走ると、弟くんは騒ぎをよそに、すやすやお昼寝していました。それでも、ペアくんは「あとで弟と一緒に食べる」と言います。冷蔵庫も、冷凍庫もない、ペア君のお家。否応なしに溶け続けるアイスを、お母さんが仕方なくカップに入れてくれました。
お腹がペコペコでも、弟と半分こ
ペアくんとお母さんが一生懸命ゴミ拾いをしても、3人が十分に食べられる稼ぎにはなりません。「おなかが空いてペコペコのまま寝ることもある」と話していたペアくん。普段はアイスを食べる余裕もないかもしれません。それなのに・・・「弟にも分けてあげたい」という言葉が優しすぎて。
同じシチュエーションにあったとしても、家族に分けてあげる前に一人で食べるだろう自分を省み、ちょっと恥ずかしくなりました。
弟くんが起きた時には、アイスは完全に溶けて、ぬるくて甘いミルクになってしまっているでしょう。でもきっと、二人で仲良く、ちょっとけんかしながら、ミルクになったアイスを食べるんだろうな。
40度近い暑さ、厳しい生活を送る子どもたちの取材中の、癒されたできごとでした。
マーケティング1部 新規ファンドレイジング課
山下泉美
ペアくんのような子どもたちに夢を届けませんか?
チャイルド・スポンサーシップは、子どもたちが健康に成長し、学校で学び、将来の夢にむかって歩けるように支えるプログラムです。
WVJは厳しい環境に生きる子どもたちに支援を届けるため、11月1日(金)~12月27日(金)まで、3000人のチャイルド・スポンサーを募集しています。
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【山下スタッフの過去のブログ】
・食べてなくなるビスケットより、大切なもの・・・
・バングラデシュ スラムの少女 怖いと感じたら生きていけない
・世界最貧国のネパール、ヒマラヤ観光の裏に隠された児童労働
この記事を書いた人
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世界の子どもたちの健やかな成長を支えるために、東京の事務所では、皆さまからのお問合せに対応するコンタクトセンター、総務、経理、マーケティング、広報など、様々な仕事を担当するスタッフが働いています。
NGOの仕事の裏側って?やりがいはどんなところにあるの?嬉しいことは?大変なことは?スタッフのつぶやきを通してお伝えしていきます。
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