【スタッフ・ブログ】国際NGO ワールド・ビジョン・ジャパン

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フィリピン台風2カ月 祖国に「希望」育む支援の手

この記事はワールド・ビジョン・フィリピンのエリザベス・アルファロ・デルガドスタッフの話をもとにワールド・ビジョン・ジャパンが執筆し、2014年1月7日付SANKEI EXPRESS紙に掲載されたものです。

2013年11月8日、観測史上まれに見る超大型台風がフィリピンを襲った。最大瞬間風速100メートル超にもおよぶ台風30号(通称ハイエン)は、死者6000人以上、行方不明者約2000人という甚大な被害をもたらした。7000以上の美しい島々からなるフィリピン。台風の直撃を受けた中部の島々では、強風と高潮の影響で多くの家が流され、住む家はおろかコミュニティー全体が洗い流されてしまったところも少なくない。「この国で生まれ育った私にとって台風は慣れっこのはずでしたが、ハイエンのような恐ろしい台風は初めてだった」と、エリザベスは語り始めた。

台風30号(通称ハイエン)の嵐の中で生まれた子どもに愛おしそうに口づけする母親

台風30号(通称ハイエン)の嵐の中で生まれた子どもに愛おしそうに口づけする母親

惨状を目の当たりにして

「被害発生直後、私は緊急対応チームの一員として、被害が最も大きいとされたレイテ島に向かいました。ワールド・ビジョンが活動する地域に住む子どもたちの無事を確認するためです。しかし、その行程は予想以上に厳しく、レイテ島に到着するまでに丸二日を要しました。

ようやくレイテ島に着いた私は、とてつもなく破壊された状況に茫然(ぼうぜん)となりました。住む家をなくした人々、行くあてもなくさまよう子どもたちの姿を目の当たりにして、私の心はちくちくと痛み、自分の無力さを痛感しました。家も学校も破壊されてしまったため、子どもたちは学校に行けないかもしれません。

『いったい何から始めれば良いのだろうか』。自分にこう問いかけた私は、すぐに思い直しました。支援の手は世界中から差し伸べられるに違いないと。

被災した方々に希望を届け、明るい未来を保証する支援を実施する必要がありました。『支援』、それは、自分が強くなること、そして信念を持つことによって実現できることのように思われました」

空から見たレイテ島の様子。あらゆる建物がことごとく破壊され、台風の被害のすさまじさを物語っている

空から見たレイテ島の様子。あらゆる建物がことごとく破壊され、台風の被害のすさまじさを物語っている

ワールド・ビジョンは、すべてを失った人々に対する支援物資の配布を始めた。今回、ワールド・ビジョンは8万世帯40万人への支援物資の配布を目標に活動している。米やビスケット、調理油等が入った食糧キット、石鹸や歯ブラシなどが入った衛生キット、水、毛布、蚊よけネットなどの物資の支援を行うほか、子どもたちが自由に遊べる場所や母親が安心して授乳できる場所の設置などを行っている。世界中から寄せられた善意の募金によってこれまでに25万人以上の方々に支援を届けることができた。

 

支援物資を運ぶ子どもたち。世界中から募金が寄せられた

支援物資を運ぶ子どもたち。世界中から募金が寄せられた

家族と安心して暮らせますように

被災地の様子も少しずつ変わりつつある。家が破壊され避難していた人は、以前暮らしていた場所に戻り、あり合わせの資材で小屋を建てて生活している。また、稼業を再開している人も多くいる。

がれきを集めて建てられた小屋がいたるところでみられる。人々は悲惨な状況にあっても笑顔を忘れない

がれきを集めて建てられた小屋がいたるところでみられる。人々は悲惨な状況にあっても笑顔を忘れない

ジャネスさん(23)は、台風で家を失いながらも果物店を再開させ、朝6時から夜8時まで市場で果物を売っている。「台風で家がなくなってしまったので、夜は家族と市場の片隅で囲いを作って寝ています」と語った。夫と2人の子どもと一緒に暮らすジャネスさんは、「お金を貯めて、家族で暮らせる家をまた建てたい。そして、住んでいた町が元通りに、いえ、昔よりも良くなればいいなと思っています」と、希望を口にした。

ワールド・ビジョンは、現在実施している物資配布を中心とした緊急支援にとどまらず、人々が台風に襲われる以前の生活を取り戻すための復興支援も行うことを決定した。ジャネスさんのような人々が安心して暮らせるようになるまで、時間はかかるかもしれないが、引き続き支援していく。

果物店を再開したジャネスさん一家

果物店を再開したジャネスさん一家

「今回、支援活動を行う中で最も印象深かったこと、それは、それぞれが抱える喪失感や心身の傷があるにもかかわらず、被災者たちが協力し合っていたことです。そして、私たちフィリピンを助けるために、世界が一つになって協力したことです。

特に日本の方々からは、『チャイルド・スポンサーシップ』を通じて支援されている地域の状況や、そこで暮らす子どもの安否について、非常に多くの心配の声をいただきました。これは、日本が東日本大震災を経験したことにも関係しているように思われます。復興への道は長く険しいかもしれませんが、祖国に美しい景色が戻るまで、応援してくれる世界の人々とともに歩んでいきたいと思います」

エリザベスはこう言ってほほ笑んだ。明日1月8日で台風直撃からちょうど2カ月になる。

「もう台風が来ませんように」と祈る子どもたち

「もう台風が来ませんように」と祈る子どもたち

被災地の様子を語ったエリザベス・アルファロ・デルガド

被災地の様子を語ったエリザベス・アルファロ・デルガド

Elizabeth Alfaro Delgado

ワールド・ビジョン・フィリピンの一員で、ミンダナオ島でチャイルド・スポンサーシップの事業管理を担当。台風30号の直撃後はレイテ島に渡り、緊急支援活動に従事。

 

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チャイルド・スポンサーシップを通して支援する
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この記事を書いた人

WVJ事務局
世界の子どもたちの健やかな成長を支えるために、東京の事務所では、皆さまからのお問合せに対応するコンタクトセンター、総務、経理、マーケティング、広報など、様々な仕事を担当するスタッフが働いています。
NGOの仕事の裏側って?やりがいはどんなところにあるの?嬉しいことは?大変なことは?スタッフのつぶやきを通してお伝えしていきます。
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