【スタッフ・ブログ】国際NGO ワールド・ビジョン・ジャパン

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プロのNGO職員とは?(2006年を省みて)

NGOで仕事をしている人は、無給のボランティアかアルバイト程度の給与で働いていると思っている方は相変わらず多い。しかし私達NGO職員は、労働の対価として給与を頂いている。無給のボランティアではなく有給のプロフェッショナル(プロ)である。と自分で言っておきながらプロという言葉に引っかかりをもってしまう。英語辞書で調べるとProfessionalは、知的職業人、技術的専門家という言葉に訳されている。

“私はプロのNGO職員”と人前で言い切った時に、それが何だか自分の中でも明確ではないのだが、釈然としない自分がそこにいる。自身の中にあるプロという範疇が曖昧だからであろうか? NGO職員は知的職業人又は技術的専門家なのであろうか??

そんな悶々とした気持ちを心の底に秘めながら、ある時「プロフェッショナル」というNHKのTV番組を見ていた。この番組では、各界の技術・知識・能力を極めたこれぞプロと言われる方々が毎回ゲストとして登場し、いかに自身を磨きその域まで達することが出来たかを日常の仕事場の様子や過去のエピソードを紹介しながら披露するのである。そのときのゲストは青森県でりんご農家を営む木村秋則さんであった。彼は現代の農業技術では絶対に不可能といわれていた完全無農薬りんごを育てているお方である。
彼の完全無農薬りんごは、インターネットで1つ300円で売られ、10分で完売してしまうほどの人気ということだ。また、彼のりんごは2年経っても腐らない。りんごの甘い香りを残しながら干からびてゆくというのだ。この驚異的なりんごを育てる木村さん、その風貌と喋り口調は、私の中でプロフェッショナルというよりボランティアを髣髴とさせた。しかし彼は無農薬のりんご栽培を成功させるべく、ある時は自殺を決意するほどまでに自分を追い詰め、10年間に渡り全身全霊をもって自然と対話した経験の持ち主だ。番組での彼の映像を見ていて“この人は紛れも無いプロ中にプロだ”と思った。

番組の最後に司会者から必ずゲストに投げかけられる1つの質問がある。それは、“あなたにとってプロフェッショナルとはなんですか?”とういものである。 木村さんは笑いながら答えた。“私は、プロフェッショナルとは、そこに心があることだと思います”

木村さんのこの言葉により今まで私の中にあった“プロのNGO職員”と言う言葉に対する心の引っかかりがプツンと切れた。木村さんにとってプロとは、知識や技術だけでなく、りんごに対する思い、慈しんで育てる心や感謝の心が必要ということである。しからば、プロのNGO職員を自称する私はどうだ? 貧しい子ども達や紛争や災害に苦しむ弱い立場の人々を支援する知識や技術ばかりでなく、そこに本気で彼らを慈しむ心が伴なっているのか。目を閉じ裸の自分を探れば、大切な心は、日々の業務のストレスで忘れ去られ、知識や技術或いは経験や名誉だけを求めている自身が浮き彫りになってくる。 プロのNGO職員が聞いて呆れる。かえって大切な心をボランティアの方々から思い出させていただくことが多かった2006年ではなかったか。

来年は一歩でも真のプロのNGO職員に近づくべく心を新たにするNGO職員である。

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この記事を書いた人

高瀬一使徒
高瀬一使徒
大学卒業後オーストラリア留学などを経て、青年海外協力隊に参加モロッコに2年間滞在。1989年にワールド・ビジョン・ジャパン入団。タイ駐在などを経て、1997年より支援事業部部長(旧 海外事業部)。現在までに訪れた国数約85カ国。4人の子どもの父親でもある。2014年3月退団。
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