国際NGO ワールド・ビジョン・ジャパンのスタッフブログ

Read Article

3つの「鍵」で動き出したもの|インドネシア

2017年3月、インドネシア・中部スラウェシ州のチャイルド・スポンサーシップによる支援活動を実施しているトウナ地域開発プログラムを訪問しました。

2009年の支援開始から約8年が経過した今、トウナ地域の人々の暮らしには目に見える変化が生まれています。

その背景には、ワールド・ビジョンならではの地域開発の姿勢と、それを支える3つの「鍵」があるように思えました。

 

1つ目の鍵:有機野菜の栽培・販売を通じた収入向上

トウナ地域では、今、有機野菜の栽培がとても盛んに行われています。

主に女性10~20人ほどが集まってグループを作り、チンゲンサイ、空芯菜、レタス、キュウリ、ナス、オクラ、ネギ、ニンジンなどの様々な野菜を有機農法で育てています。男性たちが行うトウモロコシやカカオなどの栽培に加えて、女性たちが家の近くの土地を活用して有機野菜栽培を始めたのです。

初めての試みでしたが、ワールド・ビジョンや県の農業局等から技術支援を受け、少しずつ生産量が増え、質も安定し、収穫後の選別・保管・袋詰めも行えるようになりました。

収穫した野菜は、それぞれの畑で直売しているほか、複数グループで共同販売したり、地元のレストランやスーパー等と定期買取契約を結ぶなど様々な形で消費者のもとに届けられ、新鮮で美味しいと好評を得ています。

有機野菜の栽培と販売が軌道に乗ってきたことで、新たな収入源として家計が潤いつつあります。

畑の土を手入れする女性

畑の土を手入れする女性

共同販売の様子

共同販売の様子

 

2つ目の鍵:貯蓄グループの活動を通じた家計管理の改善

ワールド・ビジョンは、有機野菜の栽培・販売のサポートと並行して、貯蓄グループの活動も後押ししています。貯蓄グループは有機野菜のグループと同じ顔ぶれで構成されており、有機野菜の販売が好調なこともあって、非常に活発に取り組まれています。

そんな活気あふれる貯蓄グループの定例会にお邪魔して、どんなふうに活動しているのか見せてもらいました。

興味深いので、少し詳しくご紹介します。

 

定例会は月に4回開催されます。事務局の開会挨拶から始まり・・・

貯蓄グループ定例会の開会挨拶

貯蓄グループ定例会の開会挨拶

金庫を開けます。金庫は普段、事務局が保管していますが、定例会の日にしか開けられません。金庫には3つの鍵が付いており、3つの鍵はそれぞれ別のメンバーが保管しているのです。(既にお気づきかと思いますが、今回のブログのテーマである3つの「鍵」は、このシステムからインスピレーションを得たものです)

金庫の鍵を開ける

金庫の鍵を開ける

前回定例会からこの日までの個人貯金の集計をします。

個人貯金の集計

個人貯金の集計

個人貯金は、(鍵が閉まった状態で)写真左の赤丸部分の穴から入れて、写真右の赤角部分に貯まっていきます。貯めた額は個人の通帳と事務局の帳簿に記録しておき、定例会で金庫を開けたときに、金庫内のお金の額と帳簿の残高が合っているか事務局が確認するという仕組みです。

個人貯金はここから入れて・・・

個人貯金はここから入れて・・・

ここに貯まります

ここに貯まります

続いて、“ソーシャルファンド”と呼ばれるグループ貯金の集金をします。グループ貯金は定例会のたびに集められるもので、1人1,000ルピア(約8円)以上を必ず出す必要があり、定例会に欠席した場合は次回の定例会で欠席回の分もまとめて集金されます。こちらも、金庫内のお金の額と帳簿の残高が合っているか、事務局がきちんと確認します。

グループ貯金の集金

グループ貯金の集金

そして次に、このグループ貯金を使いたい人がいるかどうか、確認します。使いたい人は、理由と必要な金額を述べ、メンバー全員の同意を得る必要があります。グループ貯金は、現在のところ、子どもの病気で急な支出が必要な場合のみに使途が限定されており、1人年1回、最大で20,000ルピア(約160円)までと決まっています。

続いて、貯蓄グループの「株」を購入したい人を募ります。メンバー全員がこの株を持っており、このグループでは1株10,000ルピア(約80円)、1回の定例会で1人最大5株まで購入可能というルールになっています。こちらの写真は、あるメンバーの株の購入記録です(皆さん積極的に株を購入しています)。

その日の定例会で合計何株購入されたかを事務局が発表します。

あるメンバーの株の購入記録

あるメンバーの株の購入記録

続いて、借り入れ希望者を確認します。1人1回あたり保有株の3倍までの金額を1%の利息で借りることができます。返済期限は期末まで(1期は1年間)です。借り入れをしたい人は、理由と希望額を述べ、メンバーから緊急度や返済の目途などについて質問を受けたうえで、メンバー全員の同意が得られれば借り入れ可能となります。

 

最後に、事務局がその日のお金の出入りのまとめを報告し、金庫の3つの鍵を閉めて、定例会は終了です。

ちなみに、終了後は、一緒に畑仕事に行くこともあれば、お茶飲みや人生相談(女子会?)に移行することもあるそうです。

金庫の鍵を閉めて終了

金庫の鍵を閉めて終了

貯蓄グループの口座は1期(1年間)ごとに精算します。その際、借り入れを返済したうえで、個人貯金の残高と購入した株が利子付で各メンバーの手元に還ってくるという仕組みです。グループ貯金はそのまま来期に持ち越されます。

ちなみに、前期はなんと、私がお邪魔した村の2つの貯蓄グループ合わせて、個人貯金とグループ貯金、株購入の合計額が78,000,000ルピア(約624,000円)にもなったそうです。貯蓄グループを始める前は、ほとんどの人が貯金をしていなかったことを踏まえると、まさに大きな変化が生まれています。

このような貯蓄グループの取り組みを通じて、メンバー個人としての貯蓄や家計管理の習慣が身につくだけでなく、グループとしてのお金の管理の仕方、帳簿のつけ方などのスキルも蓄積されつつあります。

 

3つ目の鍵:「子どもの豊かな成長」を目指す視点と働きかけ

ここまでの2つの鍵は、いわゆる生計向上のアプローチとして、様々なグループやNGOが実施しており、ある意味、一般的と言えるかも知れません。ワールド・ビジョンの特徴は、生計向上に限らずどのような取り組みにおいても、必ずもうひとつの鍵-「子どもの豊かな成長」を目指す視点と働きかけ-が存在することです。

トウナ地域では、例えば、保護者は子どもの教育や将来のために貯蓄したいけれども家計に余裕が無いためできないといった課題がありました。このため、貯蓄グループの活動を通じて貯めたお金について、子どもの教育、子どもの健康、もしくは健康的な食生活に資するものに優先的に使うようルールを設け、モニタリングをしています。また、子どもは学校に通いたい・保護者は子どもを学校に通わせたいという思いはあるものの、金銭面での不足があったり、家と保護者の仕事場(畑)が遠いため子どもの面倒を見る時間が限られ、学校に通わせにくいといった課題がありました。このため、有機野菜の栽培・販売に関して、収入面の成果だけでなく、家の近くに畑を設けることで、保護者が子どもの面倒を見やすく学校に送り出しやすい環境づくりを意識しています。

このように、単なる生計向上にとどまらず、「子どもの豊かな成長」に資するための生計向上という視点を必ず持ち、子どもや保護者の気持ちに寄り添う形で働きかけや後押しをするのが、ワールド・ビジョン“ならでは”の地域開発の姿勢であると言えます。

今回、トウナ地域を訪問して感じたことは、これらの3つの鍵はどれも大切であり、3つが揃っているからこそうまく歯車が噛み合い、人々の暮らしに目に見える変化が生まれつつあるのだということでした。

何よりも、女性グループのメンバーや子どもたちが発する言葉や笑顔から、活動を通じて喜びや手ごたえを感じている様子がひしひしと伝わってきて、うまく言葉にできないですが、「風」のようなもの、元々あった地域や人々の力が引き出されて良い方向に動きつつある流れを感じました。

動き始めたこの流れがうまく持続的な軌道に乗るよう、引き続きサポートをしていきたいと思います。

写真:トウナ地域の活動に参加している子どもたちと筆者

トウナ地域の活動に参加している子どもたちと筆者

トウナ地域の活動に参加している子どもたちと筆者

いっしょに幸せになろう チャイルド・スポンサーシップ

この記事を書いた人

髙橋 布美子
髙橋 布美子支援事業部  開発事業第2課 プログラムオフィサー
青山学院大学国際政治経済学部卒業、政策研究大学院大学修了(国際開発学修士)。
国内自治体の行政経営・戦略計画策定支援のコンサルタントとして活動後、国際協力銀行/JICAにて南アジア地域の開発援助に従事。
家族と米国生活中に東日本大震災が発生したことから、復興支援への思いを胸に帰国し、2013年1月にワールド・ビジョン・ジャパンに入団。
東日本大震災緊急・復興支援部を経て、現在は支援事業部開発事業課の一員として、日本を含む世界の子どもたちのために活動中。
Return Top