【スタッフ・ブログ】国際NGO ワールド・ビジョン・ジャパン

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ロックダウン1カ月半のヨルダンから~教育を止めるな!~

こんにちは。ワールド・ビジョン・ジャパンのヨルダン駐在員の松﨑です。

皆さまからの募金とジャパンプラットフォームのご支援により、シリア危機の影響を受けたヨルダン北部の街、イルビドで、シリア難民とヨルダン人の子どもたちを対象とした教育支援事業を実施しています。
 
私が駐在している中東のヨルダンでは、コロナ感染拡大防止のため、3月に「ロックダウン(都市封鎖)」が行われ、現在も厳格な外出制限が続いています。
 
ヨルダン政府による早期からの徹底したロックダウンの効果か、徐々に民間セクターが再開されるなど、規制は緩和に向かっています。新規感染者数が確認されない日も数日続いたのですが、最近は数十人単位で再び増加傾向にあり、厳格なロックダウンの規制へと戻る可能性もあり、油断できない状況です。
 
ロックダウンによる経済活動の停止は、経済的に厳しい状況にある方々、特にシリア難民の方々の生活に大きな影を落としていて、規制が緩和に向かっている今でも厳しい生活状況が続いています。わたしたちワールド・ビジョンがロックダウンの最中にある難民キャンプとホストコミュニティに住むシリア難民とヨルダン人計470人に対して4月に実施した電話調査からは、以下のような状況が見えてきました。
 
  • ●シリア難民の家庭が今緊急に必要としているものとして、家賃・光熱費といった生活費を賄うための資金(74%)、食料品や生活必需品など生活のための物資(73%)、教育支援(27%)がトップ3として挙げられた。
  • ●73%のシリア難民の方々が、ロックダウンの状況下でストレスを感じており、そのうち約半数が「家計の心配」によるものであると回答。8割のシリア難民の方に貯蓄がなく、貯蓄がある家庭でも、その半数以上が貯金を使っても2週間以上は生活が続かないと回答。
  • ●シリア難民の保護者の40%がロックダウン中の子どものケアに不安を感じており、半数以上が遠隔での教育について心配だと回答。
 
ロックダウンにより、父親の仕事が中断されてしまったため2ヵ月分の家賃を支払えない家庭、10人の子どもを養うため近所のお店に借金をして生活必需品を入手せざるを得ない家庭、母子家庭で家賃だけでなく電気・水道代も支払えなくなっている家庭など、非常に厳しい状況が私の耳にも入ってきます。目の前の生活を続けるために必要な資金や物資に関する不安やニーズが特に大きい一方で、今緊急に必要としているものの3番目にとして「教育」が挙げられていることが印象的でした。
 
ヨルダンでは、ロックダウンの状況下でも、子どもたちが教育を続けられるよう、政府によりあらゆる対策が講じられています。3月中旬以降、公立学校が休校となってからは、テレビやオンライン・プラットフォームを通じて教育が提供されています。
 
しかし、私たちが行った聞き取り調査では、3割のシリア難民家庭が政府のオンライン授業を受講できていないと答えています。テレビがいつ放送されているか分からない、オンライン・プラットフォームへのアクセス方法が分からない、テレビが壊れている、先生から直接指導を受けるほうがよい、兄弟姉妹の授業時間が重なっている、テレビ放送を見るものの理解できない・説明が早すぎる、子どもが勉強に集中しない、といった理由が挙げられました。
 
私が担当する事業では、午前にヨルダン人、午後にシリア人が通学する2部制を導入し、学習時間が短縮された公立学校において、通常でも学校の授業についていくことが難しい子どもたちを対象としているため、学習の際は特に丁寧な説明とフォローアップが必要です。子どもたちがしっかりと学習内容を定着させることができるような教育を継続的に受けることができないと、勉強の意義が見いだせなくなったり、学校が再開した際に授業についていけなかったりなど、学校を退学してしまうリスクが高まります。
 
そこで、私たちは、4月19日より、遠隔での補習授業の提供を開始しました。

ZOOMで補習授業の先生に研修を行いました

 
まずは、補習授業の先生にZOOM(オンラインビデオ会議システム)にて、遠隔での補習授業の実施方法や遠隔でも学習の効果を高めるコツについてトレーニングを行いました。その後、補習授業の先生が自宅から、ZOOMを使って補習授業を提供し、ワークシートや補足説明の動画をワッツアップ(ラインのようなSNS)で送りながら、子どもたちの学習を丁寧にサポートしています。補習授業の先生方はパソコンを持っていない人がほとんどで、スマートフォンだけが子どもたちと繋がる唯一の手段です。なれない取り組みに、日々戸惑いつつも、子どもたちのためにと、悪戦苦闘を重ねて動画を撮影したり、オンラインで送られてくるワークシートを添削したり、先生同士で学びあいながら日々頑張ってくれています。
 
ZOOMで補習授業の先生にトレーニングを実施しました

ZOOMで補習授業の先生に研修

遠隔授業は初めての試みで、まだまだ課題は山積みです。多くの保護者が経済的に厳しいなか、遠隔授業を受けるためのパケット通信費の負担をどうするか、子どもが多い家庭では一人あたりのスマートフォンの使用が限られていること、そもそもスマートフォンを持っていない家庭への支援、保護者のデジタルリテラシーや新しいアプリへの抵抗感、オンラインセーフティをどうやって担保するのか・・・など、チーム一丸となって課題にひとつひとつ対応しながら実施を進めています。

スタッフや補習授業の先生の粘り強い頑張りのおかげで、日に日に遠隔授業への参加者が増えています。子どもたちが学校に戻ったときに、「あのとき、補習授業の先生と家で勉強を続けてよかった」と思えるときがくると信じて、教育を止めないよう日々奮闘しています!

皆さまからの募金とジャパンプラットフォームのご支援により、シリア危機の影響を受けたヨルダン北部の街、イルビドで、シリア難民とヨルダン人の子どもたちを対象とした教育支援事業を実施しています。

算数のレッスン動画:長さ・面積・体積の違いを、家にあるものをクリエイティブに使って、子どもたちに分かりやすいよう説明しています

 

この記事を書いた人

松﨑紗代
松﨑紗代支援事業部 プログラム・コーディネーター
西南学院大学文学部英文学科を卒業後、ロンドン大学公衆衛生学・熱帯医学大学院とキングズ・カレッジ・ロンドン精神医学研究所による国際精神保健コースにて、発展途上国および脆弱国における精神保健について学び卒業。
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