チャイルド・スポンサーの皆さまに年に1度お届けしている成長報告。報告書に貼ってあるチャイルドの写真を毎年楽しみにしてくださっている方も多いかと思います。ワールド・ビジョンでは、全世界で支援を受けている400万人以上のチャイルドの成長報告を毎年春から夏にかけて各支援地域で作成し、世界中のチャイルド・スポンサーにお届けしています。今回は、成長報告が皆さまのお手元に届くまでの舞台裏を紹介させていただきます。
1. 成長報告の用紙を作成
チャイルドの成長の様子と、チャイルドが暮らす地域で行った支援活動の成果をご報告するため、まず成長報告の用紙を作成します。地域開発プログラム(Area Development Program:略してADP)ごとに現地のスタッフが作成し、日本が支援しているADPの報告書は日本語に、韓国のADPの報告書は韓国語に、ドイツのADPの報告書はドイツ語に、それぞれの国の事務所で翻訳します。
また、今年からもう1種類、「チャイルド記入シート」ができました。今年は、成長報告とチャイルド記入シートの2種類をお届けする予定です。この用紙やシートを、各国のワールド・ビジョン・の事務所で連携しながら完成させていきます。
2. チャイルドが用紙に記入
完成した用紙や記入シートは、ADPを実施しているそれぞれの国で印刷します。たとえばケニアの場合、日本だけではなく、アメリカ、韓国、イギリス、ドイツなど、様々な国のチャイルド・スポンサーから支援を受けています。従って、英語、韓国語、日本語、ドイツ語などの言語で作成した用紙を、必要な部数間違わずに印刷しなければなりません。
日本が支援しているADPに日本語の用紙が届くと、現地のスタッフが用紙を持ってチャイルドが暮らす村へ出かけます。主に学校にチャイルドを集め、一斉に成長報告の記入を行います。
最初にワールド・ビジョンのスタッフや地域ボランティアが、チャイルドの緊張をほぐすためのゲームやクイズなどを行います。その後、チャイルド・スポンサーへの感謝を伝えるための成長報告の意味や、記入方法を説明します。
そして一斉に書き始めますが、中にはまだ読み書きが十分にできないチャイルドもいます。スタッフやボランティアが、一人ひとりに丁寧に説明しながら、辛抱強く記入を助けます。
3. チャイルドの写真を撮影
成長報告や写真を間違わずにお届けするために、非常に重要なのが「チャイルド番号」です。ひとつのADPの中にも数百人~数千人のチャイルドがいますので、この番号を書き間違うと、成長報告や写真を取り違えてしまいます。
スタッフは一人ひとりのチャイルド番号を確認しながら、順番に写真撮影を行います。
今年から、チャイルドが「記入シート」を書いているところを写真に撮り、その写真を成長報告に貼ってお届けすることになっています。お手元に成長報告が届いたら、写真の中でチャイルドが書いている記入シートが同封されているはずですので、確認してみてください。
4. 成長報告に写真を貼り、記入シートとともに封入
チャイルドが記入した用紙を事務所に持ち帰り、写真を印刷して、チャイルド番号を確認しながら貼ります。そして、それぞれのチャイルド・スポンサーの封筒に間違わないように入れていきます。
この作業の際に、写真の貼り間違いや封入ミスがあると、チャイルド・スポンサーのお手元に別のチャイルドの写真や報告書が届いてしまいます。間違いが起こらないよう、それぞれのオフィスで確認作業を工夫して行っていますが、それでも時々間違いが起こります。もし別のチャイルドの写真や報告書が届きましたら、正しいものを取り寄せますのでご連絡ください。
5. 封入した成長報告と記入シートを発送
現在各ADPで発送作業を進めています。例年よりもお届けが遅れており、ご心配をお掛けしていますが、各ADPでスタッフが頑張っておりますので、今しばらくお待ち下さい。
最後に、成長報告にまつわる現地スタッフのエピソードをご紹介します。
ケニアのイララマタクADPでスタッフから聞いた話です。イララマタクADPは、ワールド・ビジョン・ジャパンが支援しているADPの中でも特に交通・通信の不便なところです。野生動物も多い未開拓の土地で、遊牧や一夫多妻制など、伝統的な生活をしているマサイ族が多く暮らしています。支援地域の中では携帯電話が通じず、そもそも住民は携帯電話を持ってもいないため、連絡を取るには直接会いに行くしかありません。
成長報告の作成は、通常学校にチャイルドを集めて行いますが、中には学校での成長報告記入の集まりに来ないチャイルドもいます。このような場合は個別にチャイルドの家を訪問しますが、ADPのオフィスからチャイルドの家まで、未舗装のガタガタ道を車で片道3時間以上走らなければならないことも珍しくありません。
しかも、訪問しても家族で放牧に出かけてしまい、どこに行ったのか、いつ帰ってくるのか、わからない場合もあります。特に近年は気候変動の影響で乾期の乾燥がひどく、牧草を求めて国境を越え、隣国のタンザニアまで放牧に行ってしまう家族もいます。数カ月後に戻って来ることもあれば、もう戻ってこないこともあり、遊牧生活を送るチャイルドの追跡は容易ではありません。「チャイルドをひとり訪問して写真を撮るだけでも、1日がかりになってしまうんだ」と話すADPのスタッフ。想像以上に過酷な現場で働いています。
電子メールや携帯電話など、便利な技術が発達した現代社会においても、紙1枚・写真1枚を届けることさえ難しい場所もまだまだ存在します。そんな遠い支援地域から、現地の砂ぼこりでざらついていたり、何のにおいかわからない不思議な香りの漂う成長報告が届くというのは、ちょっとした「奇跡」と言えるかも知れません。
スポンサーサービス課 石坂明日香
この記事を書いた人
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