紛れもなく母親になった、と実感したのは、職場にいる好青年の男性スタッフを見て、(20年前のように)トキメキを感じるのではなく、どうやったら我が息子たちもあんな風にステキに育つのだろう、と思い巡らしている自分を発見したときである。
手前味噌だが、ワールド・ビジョン・ジャパンは女性が多い職場で、男性の絶対数は多くないが好青年率は高いと思う。でも、このことで団体を自慢したい、というよりは、こんなに立派な息子たちを育てられたご両親、そしてやはり同性の身としては、お母様方に心からの敬意を感じるのである。
さわやかな笑顔で英語+αの言葉を操って現地スタッフや支援国の行政官と渡り合い、夏のイベントといえばTシャツが絞れるほど汗をかく力仕事をいとわず、ギターを奏でてスタッフを盛り上げ、お弁当は自分で作って持ってくる・・・そしてもちろん、途上国の子どものために自分の力を活かしたい、と大志を抱いてワールド・ビジョンでの仕事に身を投じている好青年スタッフたち。たとえキャリアの選択は違ったとしても、人として、我が家の息子たちも将来こんな素敵なお兄さんたちのようになってほしいなあ…と願う母スタッフの自分である。
好青年スタッフに元気をもらって家に戻ると10歳と5歳の息子たちとの時間が待っている。母が貧困や紛争、災害という大変な状況の中で生まれ育っている子どもたちのために仕事をしている、ということを長男はもう知っているし、次男も、どこかで大きな地震があるとお母さんは忙しくなる、ということを今年のネパール大地震で理解したようだ。
でも、息子たちが、世界の厳しい環境で育つ子どもたちのために自分も何かしたい、と思いながら成長しているかというと、母親の力不足ゆえそんなに美しく理想的にはいっていない。水道をひねればそのまま飲める水がでてきて、毎日お腹いっぱいご飯を食べられる生活があたりまえではないことを説明しても、「ふーん」という感じ。食事は食べられて当たり前で、嫌なものは食べたくないし、好きなものは人にあげたくない(次男)。または、いつも食べられるから好物以外には特に執着しない(長男)。
チャイルド・スポンサーとして支援しているチャイルドからの手紙と写真を「ママはミャンマーに娘がいるのよ」と見せても、長男はこれまた「ふーん」と一瞥するだけで反応は薄いし、次男もきょとんとしている。もう10年以上も前、「ミャンマーの娘」が住む水道も電気もない場所へ母が何度も出張していた話を、お説教くさくならないように注意深く話しても、「それがどうしたの??」という感じ。
しばしば、ご支援者の方から「子どもがチャイルドにお手紙を書くのを楽しみにしています」とか「お手伝いしてためたお金で募金します」なんていう素敵なお話を聞くと、本当に、どうやったらそんな風に子どもの気持ちをうまく盛り上げてあげることができるんだろう…と尊敬してしまう。(このたび、素敵なお母様から体験談を伺うイベントが開催されることになりました!詳しくはこちらをご覧ください)
とはいえ。私は母親として理想的な耕し人ではないのかもしれないけれど、それでも、少しずつ子どもたちにまいている種が育つことを信じたい、と願っている。心の成長は、目に見えない。母親にとってすぐにわかりやすい言葉や態度には表れていなくても、もしかすると、成虫になる前に6~7年も土の中で過ごすセミの幼虫のように、見えないところで育っているものがいつか日に当たるところへ出てくるのかもしれない(と信じたい)。
もしかしてそんな種まきになっているかも??という期待をこめて、次男のお気に入り紹介を。一つは、「ルワンダに住むエリックくん」(PDF)。
紙芝居をWeb用にスライドショーにしたもので、学校に通いつつも、たくさんのお手伝いをこなし、食事は1日1回だけ、というエリック君の生活が、前康輔さんというプロのフォトグラファーによる写真で活き活きと伝わってくる。次男には、一時期、毎晩の夕食後に「エリックくん読む~」とおねだりされ、ひざの上に乗せて一緒に読む日々が続いた。おかげで、次男に知っている国は?と尋ねるとアメリカ、中国、などと並んで必ず「ルワンダ!」が入っている。
そしてもう一つ、チャイルド・スポンサーの皆さまがエクアドルを訪れた時に撮影されたこちらの映像もお気に入り。栄養不足になったアヒルのマネをして、楽しく栄養について学ぶ啓発活動の一端をツアー参加者の皆さまが体験したものだが、なぜか、これが次男の”ツボ“にはまったらしく、再生回数は数えられない。
https://www.youtube.com/watch?v=xzo3-WsiFHU
子どもの数だけ、心の成長の軌跡があるはずだから、途上国で厳しい生活をしている子どもたちの話を聞いて、すぐに変わる子どももいれば、急には全然変わらない子どももいる(と自分を慰めつつ)。けれど、少なくとも、いろいろな問題を抱え、いろいろな挑戦を抱えて生きている同世代の子どもが、同じ時代に世界各地で生きていることを知りながら育ってほしい。NGO母スタッフのわが子への、そして多くの日本の子どもたちへの願いである。
コミュニケーション課 浅野 恵子
この記事を書いた人
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