先日、関西にある某大学で40名程度の学生を前に講演をした。内容的にはアゼルバイジャンの国内避難民の窮状とワールド・ビジョンの援助活動であった。講演は、パワーポイントで多くの写真を使いながら30分程度にまとめたが、その後は20分程度質問の時に宛てた。数名の方から質問があったが、人権問題や豊かな国日本の途上国に対する責任問題等の硬い物であった。質問に丁寧に答えたが、まだ若干時間があったので、おそらく多くの学生がこの事が聞きたいのだろうなと言う事をこちらから言ってみた。
”NGOに就職するのには、どのようなキャリア・パスが必要か聞きたいですか?”と投げてみると多くの学生が目を輝かせて「聞きたい!」と反応してきた。そこで、簡単にまとめたパワーポイントを使って、彼らの心の奥にある質問に答えていった。
”ホリエモンのようになりたい”或いは”村上何某のようなファンド・マネージャーになりたい”と考えている学生は、もともとNGOの人道支援活動の話しなど聞きにこない。ましてその日は、傘を差していても足元がグショグショに濡れるような土砂降りの午後であり、翌日の未明にはワールドカップの日本対ブラジル戦も控えていた。したがって講演に来てくれた方々は、貧困や人道支援活動の問題に対して極めて意識の高い方々だと言える。講演会としては少人数だったかもしれないが、このような誠実で熱意のある若者に接することができるのは、大変に光栄に思うし、この若者の中から将来NGOで活躍する人材が1人でも育ったら、これに勝る喜びはない。
講演会が終った後でも、質問を携えた数人の学生がパソコンを片付けているいる私に前に列を作った。”どんな専門性が必要ですか”、“海外での経験はどのように積むのですか”、”一般の会社に就職してからでも遅くはないですか”というような質問に1人1人丁寧に答えた。学生たちのは目を輝せて教室を出て行った。これで本日は終了と思ったら、小さなピンク色のメモ帖でと鉛筆で口元を隠しながら、決まり悪そうな表情をした女子学生が私の近づいてきて、そっと聞いた。「あのー、もし私がワールド・ビジョン・ジャパンに就職したらお給料は、どれくらい貰えるでしょうか?」
サラリーマンの初任給は、働いている会社や団体の業種や規模により大体想像がつく。しかし日本社会にとってきわめて新しい業種であり、手弁当のボランティアで運営している小さな団体も多いなか、外部の者にはNGO職員の給与など全く想像できないが当たり前である。
私は思った。「きっと、これが学生にとって一番聞きたいことで、一番に聞きにくい質問だろうな。」と。 ある人々は、NGO/NPOで働いているスタッフは、無給の手弁当で働いていると思っている。それが当然という乱暴な考えも一部にあることも承知している。また団体によっては、活動資金的な限界により、日本の一般常識では考えられない薄給しか支給できない状況も存在する。従って将来NGO職員を目指そうとする学生たちの不安も十分理解できる。
ワールド・ビジョン・ジャパンでは、御理解のある多くの支援者に支えられている。そして職員は職業人として責任を持って働くことを要求されている。当然団体として、理念や国内法に則り適正な報酬を職員に提供できるような労務管理を行なっている。聞きにくい質問の答えである団体の初任給はというと、諸手当込みで190,750円です(税込み)。それに残業すれば、時間外として加算されます。この額が適正化どうかは、あなたの気持ち次第! これで充分と思う方は、職員募集に応募されたら良いでしょうし、低いと思われる方は、一般会社かODA関連団体或いは、国連団体を目指されたら良いでしょう。
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この記事を書いた人
- 大学卒業後オーストラリア留学などを経て、青年海外協力隊に参加モロッコに2年間滞在。1989年にワールド・ビジョン・ジャパン入団。タイ駐在などを経て、1997年より支援事業部部長(旧 海外事業部)。現在までに訪れた国数約85カ国。4人の子どもの父親でもある。2014年3月退団。
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