【スタッフ・ブログ】国際NGO ワールド・ビジョン・ジャパン

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子どもたちを見て思うこと

国内避難民キャンプ内の様子

国内避難民キャンプ内の様子

スリランカ北部の国内避難民キャンプ内での衛生キット配布に行ってきました。

衛生キットと言うと複雑な物のように聞こえるかもしれませんが、石鹸やシャンプー、洗濯石鹸、歯ブラシ等のセットの事です。個人レベルでの衛生状態をある程度保つことが出来るように緊急援助で配布されます。衛生環境の良くない国内避難民キャンプ内では、自分の家のように掃除をすればキレイになるというわけにはいきません。手洗いなどで身の回りを清潔に保つことが身を守ることに繋がります。

配布の際には受益者の確認が行われます。ランカの国内避難民キャンプ内の避難民はキャンプ内で身分証明書のような紙を発行され、そこに世帯主の情報と家族の人数などが書かれています。この書類を元に同じ家族に二度配ることのないように確認をします。

さて、配布時の話に戻りますが確認作業を待つ列の中に大人に混ざって10才にも達していないくらいの少女がいました。通常配布は大人が受取人となって行うため同僚のスタッフがその子に声を掛けました。(僕は残念ながらタミル語はほとんどわからないためスタッフに訳してもらいました)。

スタッフ: お父さんはどこにいるの?
女の子: 死んじゃったの
スタッフ: お母さんは?
女の子: 今、病院に行っているところ
スタッフ: そうなんだ・・・家族は全部で何人?
女の子: えーと3人、ちがう4人

「父親が亡くなっていて4人?」と思い周りを見るとこの子より更に幼い女の子が2人立っていました。この幼い3姉妹のことが気になり(4人分の衛生キットは箱も抱えるくらいの大きさになりこの子たちが問題なく持てるかどうか確認をしたかったため)一応50メートルほど後方にある配布場所へこの子たちの後を追ってみました。一番年上の子が衛生キットを受け取り、箱を抱えながら歩き出すのを確認し、無理をして運んでいるという感じではなかったのでほっとしました。すると妹2人が私たちも手伝いたいと言うかのように年上の子の抱えている箱に手を添えて一緒に支えようとします。それに答えて年上の子は立ち止まり少し箱を抱える位置を下げて、妹たちが箱の下を持つことが出来るようにしました。3人で箱を抱えながら自分たちのテントの方へ歩いていく光景に心打たれると共に、この子たちの置かれた厳しい状況を考えると少しやりきれない気持ちになりました。

僕にはこの子たちが今後どのような人生を送るのかは知ることが出来ませんし、何故この子たちが厳しい状況に置かれているのかを理解することも出来ません。正直、何故この子たちがこんな目に?という質問を抱くことも多いです。ただその中でもこの子たちにはそれぞれ僕と同じだけの価値があり、同じだけ神様から愛されているということは信じていますし、また自分が今スリランカでこの仕事をしていることに意味があるということも信じています。

僕の好きな本の中に、「ナルニア国物語」というシリーズ物の本があります。その中で善の象徴であるアズランというキャラクターが主人公の子どもたちに対して「誰も自分の物語以外は聞かせてもらえない(自分の人生以外は知ることが出来ない)」という場面があり、その後主人公の子どもたちは自分に課されたこと、出来ることをしながら成長して行きます。この本のメッセージが全て正しいとは思いませんが、僕も自分の出来ること、自分に課されたことを精一杯やっていければと思います。

この記事を書いた人

三浦 曜バングラデシュ事業担当 プログラム・オフィサー
米国Washington and Lee大学理学部化学科卒業。在学中にケンタッキー州の都市貧困にかかわるNPOでインターンをした事でNPOの働きに興味を持つ。一般企業で勤務後、帰国し2008年9月にワールド・ビジョン・ジャパンに入団、支援事業部緊急人道支援課に配属となる。2009年から2011年までスリランカ駐在、2013年から2015年5月まで東ティモール駐在。2015年8月に退職し、ロンドン大学公衆衛生学・熱帯医学大学院でMSc. Public Health in Developing Countries(途上国における公衆衛生)修士号を取得。2016年10月に再びワールド・ビジョン・ジャパンに入団、支援事業部開発事業第2課での勤務を開始。現在、バングラデシュ事業担当。2018年3月退団。
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