前任者よりアッパーナイルではよく歩くと聞いていたので、ジムに一週間に3回は通って鍛えていた。でも膝上の水や泥の中を歩いたり、一日12キロ歩いたり、蚊の猛襲にあったり、事業拠点であるニルワック・キャンプが大雨で水浸しになったりするとは想像もしなかった。
蚊取り線香や虫除けスプレーがほとんど効かないため、日が暮れてからは、暑くても、雨が降っていなくても厚手のレインコート、長靴の重装備。それでも油断していると気が付かないうちに顔を刺されたりする。夕食後、抗マラリア薬(12錠で8000円程度)を服用し、9時前には虫除けスプレーを片手に蚊帳に入り、蚊の羽音の中で寝る。寝ていてもいつ蛇がトゥクルと呼ばれる茅葺(かやぶき)屋根の家の隙間から入ってくるか分からないため、寝ていても音には敏感だ。ウガンダ人のスタッフは、蛇に備えて、就寝時にはシルックの槍[i]を片手に持って寝ているという。
私が、日々快適な生活を過ごしていたら、23年のスーダンの内戦後故郷に戻ってきた人たちやこの地に住んでいる人々のチャレンジを少しでも共感することは難しかっただろうと思う。そう思うとサバイバルも苦ではなくなった。逆に今この経験をできることに感謝している。
[i] シルックの男性が護身・魚取り用に出歩く時には持ち歩いている。
この記事を書いた人
- 大学でスワヒリ語(東アフリカの言語)・アフリカ地域学を学んだ後、在ケニア日本大使館において在外公館派遣員として勤務。そこで、ストリートチルドレンへのボランティアを経験したことから、困難な状況にある子どもたちへの支援がライフワークに。留学、タンザニアでの協力隊を経て、2003年2月よりワールド・ビジョン・ジャパンに勤務。リベリア、スーダン、南スーダン駐在を経て、2010年5月より東京事務所勤務。現在、緊急人道支援課長。関西に住む3人のかわいい甥っ子・姪っ子たちの成長が元気の源。
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