マーケティング部の大古殿(オオフルトノ)です。
ワールド・ビジョン・ジャパンに勤め始めた頃、私は、チャイルドの情報管理を担当していました。毎日、支援を待っているチャイルドの写真を見ながら、チャイルド・スポンサーとチャイルドにとって素敵な出会いとなるように祈りを込めて、チャイルドの資料をお届けしていました。
ある日、支援を待っているチャイルドの中に、9歳のケニアの男の子がいました。彼は、口唇口蓋裂、というハンディキャップをもって登録されており、こわばった表情で写る彼の写真は、とてもインパクトがあるものでした。早くこの子にスポンサーを紹介したい、この顔が笑顔に変わって欲しいという願いを心に強く持ちながらも、その表情のインパクトの強さ(写真の撮影技術かもしれませんが)に、どうしても送り出すことができませんでした。
そんな中、私の家族がチャイルド・スポンサーになっていたチャイルドが、引越しを理由に支援卒業を迎えることになりました。「継続して支援するよ。誰でもいいよ。紹介が難しい子とかいないの?」と家族に言われ、ハッ!と思い出したのがこのケニアの少年、カヨニ君でした。翌日、彼は我が家のチャイルドとなりました。
しばらくして、ケニアのスタッフから報告書が届きました。
「カヨニ君のような症状について、ある援助団体が無料の治療サービスを首都で提供しています。しかし、マサイ村の奥地に住む彼の家族はその情報を知る由もなく、また知ったとしても首都までの旅費を工面することは困難でした。しかし、今回ワールド・ビジョン(WV)の支援で病院の紹介と、旅費が工面され、手術を受けることができました」という内容でした。そして、手術を終えて、傷跡もほとんど分からず、満面の笑みで授業を受けているカヨニ君の写真も同封されていました。そのうれしそうな顔!
カヨニ君のインタビューも同封されており、「僕は、顔の障がいから、偏見をもたれて友だちを作ることが難しく、ずっと治療を受けたいとも思っていました。WVの支援に対して感謝しています」と書かれていました。
素敵な報告書と写真を受け取り、涙があふれてきたことを昨日のことのように思い出します。と同時に、こんな感動を、スタッフである私が体験してしまったことを反省し、いつか、スポンサーの皆さまに、カヨニ君のこの希望のストーリーをお伝えしたいと願っていました。
カヨニ君お元気ですか。
貴方と出会ってから11年。時の流れの速さを感じています。
先日、貴方の住む地域のビデオを見ました。貴方がいないか探しましたが、見つからず。きっと、もうすぐ成長報告が届くでしょうから、写真で会える事を楽しみにしています。
今年は、小学校を卒業できましたか。何回落第しても、学校をやめることなく、通い続けていること、本当に素敵だと思います。
クラスは小さな年齢のお友だちばかりなのでしょうし、家族を助けて学校へ行く時間をとるのが難しいのかもしれませんね。私は想像することしかできませんが、遠い日本から、いつも応援しています。
貴方の20歳という年齢を考えた時、チャイルド・スポンサーシップを通してつながっている私たちの時間は、残りそう長くないのかもしれません。
これからの人生、いろいろあると思います。楽しいことばかりでなく、辛いことや苦しいこともあると思います。でも、貴方が願ったときに癒しがきたように、貴方が頑張って学校を継続してきたように、これからも希望を持ち続け、人々に希望を届ける大人として前進し続けてください。その歩幅は小さくてもかまいません。
貴方の笑顔が、貴方の頑張りが、私たち家族の励みになります。私の子どもも8歳になりました。遠い国で貴方が頑張っていることを伝えています。一緒に新年のカードを書きました。受け取ってください。
日本より愛をこめて。
この記事を書いた人
-
世界の子どもたちの健やかな成長を支えるために、東京の事務所では、皆さまからのお問合せに対応するコンタクトセンター、総務、経理、マーケティング、広報など、様々な仕事を担当するスタッフが働いています。
NGOの仕事の裏側って?やりがいはどんなところにあるの?嬉しいことは?大変なことは?スタッフのつぶやきを通してお伝えしていきます。
このスタッフの最近の記事
- アジア2024年8月13日分離帯の少年~バングラデシュで見つけた希望、そして新たな問い
- 事務局2024年6月28日5年ぶりにボランティア感謝会を開催しました!
- 事務局2024年5月14日分け合う心を育む「梅干しふりかけ弁当」
- 事務局2024年4月5日国際協力に関心がなかった私が、Chosenに参加して感じた3つの気づき