【スタッフ・ブログ】国際NGO ワールド・ビジョン・ジャパン

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アドボカシーの力:シリア危機に向けたアドボカシー

アドボカシー・チームの柴田です。

ワールド・ビジョンの活動の3本柱の一つであるアドボカシー。どのような環境にあっても、子どもたちが健やかに育つことができるように様々な支援を行うワールド・ビジョンが、支援だけでは解決できない問題の根本原因を究明し、それを取り除くために、多くの方々の理解や協力を得たり、政策決定者に訴える取り組みです。

今世紀最大の人道危機と言われるシリア問題では、多くの子どもたちが家族や友達や故郷を失い、今も恐怖や苦しみに直面しており、その状況はこの3月15日で7年目に入ろうとしています。

このような状況に対して、NGOはどのように根本原因を取り除くための活動ができるのでしょうか?その答えを追求するためのシンポジウム「シリア危機への実効的アプローチに向けて~シリア人専門家と日本のNGO・アカデミアとの対話を通して~」を、2月11日に開催しました。

このシンポジウムは、ワールド・ビジョンも設立団体となっている「シリア和平ネットワーク」 と、東京外国語大学などのアカデミアの主導で実現しました。シリア国内外で活動するシリア人の専門家や国連スタッフなどを招聘し、日本のシリア・中東研究者や平和構築の専門家、NGOなどとともに、メディアには流れてこないシリア問題の現状を共有し、現在のシリアの惨状の軽減に貢献するため、NGOやアカデミアがどのような実効的アプローチが実行可能かについて協議し導き出す、というものでした。

2月11日の公開シンポジウムに先駆けたクローズドのワークショップでの議論を含め、丸2日間かけて、じっくりと意見交換を行いました。

主催者とシリア人専門家(筆者は後列中央)

主催者とシリア人専門家(筆者は後列中央)

【シリア人の声と日本の人々の想い】

2日間にわたるシリア人専門家との対話を通じて得られた結論は、シリアにおける紛争の停止や平和構築のためには、経済・社会・歴史など、その国の実態を深く知り、紛争の根本原因を突き詰めた上で、その国にあわせた固有のアプローチを模索することが必要であること、そして、その際に重要となるのは、外部のアクターではなく、当該国のアクター、特にシリア社会を構成する市民である、というものでした。

これだけ複雑化しているシリア問題については、一足飛びの解決策が導き出せるものではありません。だからこそ、このような地道な対話の機会を積み重ねていくことが重要であることが確認されました。

これらは、ある意味当然の帰結ではありますが、紛争の最中に身を置いているシリア人による、「南スーダンや他の紛争国で行われた平和構築のアプローチをそのままシリアで適用しても機能しない」、「紛争停止後の社会を担うのは市民であるからこそ、持続可能な和平を目指すのであれば、市民が和平に向けた議論に参加することが不可欠である」との発言は、とても説得力のあるものでした。

今回のシンポジウムでとても印象に残ったことが二つあります。

一つは、シリアの方々のユーモアセンスと実行力です。命の危険に常に晒されているという話をユーモアを交えながらさらりと話してくれたかと思うと、シリア国内外で活動するシリアのNGO50団体を束ねたシンポジウムを開催したり、国連などからデータ引用される専門性の高い研究報告書を発行するなど、シリアのNGOのハブとなるような活動を積み重ねています。

もう一つは、日本の人々のシリア問題に対する関心の高さです。シンポジウムは土曜日の開催だったにもかかわらず、1週間で100名以上の方々に申し込みをいただき、また当日も多くのメディアの取材が入りました。シリアの問題に胸を痛め、出来ることについて考えたい、何かをしたいと思う方々がこれほど多くいるということに、とても勇気付けられました。

シンポジウムの様子。100名以上が集まりシリア問題の現状と実行可能なアプローチについての議論に耳を傾けた。

シンポジウムの様子。100名以上が集まりシリア問題の現状と実行可能なアプローチについての議論に耳を傾けた

【Fears and Dreams】

ワールド・ビジョンでは、シリアの子どもたちへのインタビューを元にした「Fears and Dreams」というレポートを発行しました。今、命の危機に晒されているシリアの子どもたちが何に恐怖を感じ、そしてどんな将来の夢を持っているのかについて、他国の子どもたちへのアンケート結果と対比しています( http://www.wvi.org/fearsanddreams/ )。このアンケートでは、シリアを含む7カ国で、それぞれ100名の子どもたちに同じ質問を行っています。

この結果を見ると、シリアの子どもたちの夢(平和と家に戻ること)が叶うことを、そして、シリアの子どもたちも他国の子どもたちと同様、プロのアスリートやポップシンガー、キャリアの成功などの子どもらしい夢が持てるようになる日が来ることを、強く願わずにはいられません。

どのような場所にいても、子どもたちが健やかに成長できるように。この願いとそしてこの願いを実現するための意思をすべての人と共有できるよう、アドボカシーを続けていきたいと思います。

難民キャンプで暮らす男の子

難民キャンプで暮らすシリア人の男の子(ヨルダン)

 

■ワールド・ビジョン・ジャパンのシリア難民支援
シリア難民およびヨルダン人への緊急越冬支援開始(2017.02.01)
【難民支援】 シリア紛争の影響を受ける子どもたちに教育を!(2016.06.01)

この記事を書いた人

アドボカシーチーム
貧困や紛争の原因について声をあげ、市民社会や政府による行動を通じて問題解決を目指していくアドボカシー。

他のNGOをはじめいろいろな関係者と連携しながら活動を行っています。ロビイングやキャンペーンにかける想い。ぜひお読みください!
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