国際NGO ワールド・ビジョン・ジャパンのスタッフブログ

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ある少年との出会い

人道支援を行う団体のコミュニケーション担当スタッフとして、使用しないように教え込まれた言葉があります。“トラウマを負った(traumatized)”という言葉はその一つです。これは特殊な状況で使われるべき、とても特別な意味を持った言葉です。しかし、プラスチックの銃で私の頭を狙って立つこの幼い少年を見た時、私には他の言葉が思い浮かびませんでした。

彼はレバノンで、シリアから逃れてきた人々がテントを立てて避難所として生活している場所に家族と一緒に住む10歳の少年です。彼の家族は2年前シリアから逃れて来ました。国境越えの旅の途上、彼の父親は5回も銃で撃たれました。

私の同僚が姉や弟と話している時、この少年は一心に私と私のカメラを見つめていました。彼はさりげなくも油断のない姿勢で、その肩は木の枠に寄りかかっているのでくつろいだ様子でしたが、手はしっかりと、おもちゃの銃を握っていました。彼の眼はずっと警戒を怠りませんでした。彼は姉や弟の護衛として、守る者として、行動していました。

そこで話される言葉や、カメラが撮ろうとする物が気に入らないと、彼は蹴ったり、押したり、叫んだりしました。彼が私を押そうとしても、私は押し返しませんでした。彼が私の頭におもちゃの銃を突きつけた時も、私はたじろぎませんでした。しかし、彼がその銃を自分自身に向けた時、私は、彼と目と目を合わせるために、ひざまずきました。

シリアへの希望を語る弟フセイン(4歳)と姉エマル(11歳)を見守るアハメッド君(10歳)

シリアへの希望を語る弟フセイン(4歳)と姉エマル(11歳)を見守るアハメッド君(10歳)

彼はまったく恐れているようには見えませんでしたが、私が微笑みかけても、警戒を解くことはありませんでした。直感的に、彼に手を差し伸べました。手を彼の肩に軽く置き、指をリズミカルに上下に動かし、タップしました。それは私が心理学の応急手当コースで学んだものでした。このような研修で学んでいる時には、いざという時のために実践する模擬体験が現実になるとは思えないものです。その時、私は研修を受けていた時にもっと注意を払い、資料を読み込んでおけばよかった、と思いました。指でタップすることだけが、かろうじて覚えていることでした。そして、理由はわかりませんが、どうにか効果があったようでした。

レバノンに逃れてきたシリア難民がテントを立てて避難生活を送っている地域(ベッカ・バレー)で、家を建てる家族の護衛のように立つアハメッド君(10歳)

レバノンに逃れてきたシリア難民がテントを立てて避難生活を送っている地域(ベッカ・バレー)で、家を建てる家族の護衛のように立つアハメッド君(10歳)

彼は、私が彼の口からおもちゃの銃を優しく引き出すことを許しました。私は英語で話しかけました。彼はアラビア語で答えました。私たちはどちらもお互いの言うことを理解できませんでしたが、ただ、彼の背中に置いた私の手が二人の結びつきを生みました。彼は私の近くに寄り添い、私が気づく前に、彼の頭は私の肩の上に置かれていました。

その日の残りの時間、彼は私の隣りにいました。彼は時々キャンプで通り過ぎる人々を蹴ったり押したりしていました。でも今や彼は笑ってもいました。さらに私は、彼にハイタッチのやり方を教えることさえできました。「高く、低く、、、ゆっくり過ぎる!」私たちがこうして遊ぶ度に、彼は笑いました。そしてその日の終わりに私たちが「さようなら」を言った時、彼はもう一度私に寄りかかりました。私たちの車が去る時、彼は車の近くに立って手を振ってくれました。おもちゃの銃は、まだ彼の手に握られていました。

2014年1月22日

ペニースタッフ 

タニヤ・ペニー
ワールド・ビジョン コミュニケーション担当スタッフ

 

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この記事を書いた人

WVJ事務局
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