【スタッフ・ブログ】国際NGO ワールド・ビジョン・ジャパン

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【福島からこんにちは】この1年間で得た最大の学び

先日、福島にある自宅近くの幼稚園の敷地内にとても大きなふきのとうがたくさん生えているのを見かけました。まだまだ雪の降る日があったり凍えるような寒さになったりしているのですが、着実に春へ近づいていることを感じているこの頃です。

福島子ども支援事業がスタートしてちょうど1年が経ち、福島での2度目の春を迎えようとしています。あっという間の1年だったようで、多くの出会いがあり、たくさん笑い、たくさん考え、たくさんの学びがあったこの1年でした。春は別れと出会いの季節で、私が関わっている何人かの子どもたちも、3月にそれぞれ小学校や高校を卒業しました。その中には、この春、養護学校を卒業し就労の道を歩み始めた男の子がいます。

就職&引っ越し祝いでご馳走を食べました!

就職&引っ越し祝いでご馳走を食べました!

彼は元々、太平洋に近い福島県浜通りに住んでいて、震災と原発事故の影響で県の内陸側へ自主避難し、3月末まで避難先の仮設住宅で暮らしていました。週2回、私たちが行っている「居場所活動」に夕方から夜8時まで参加し、宿題をしたり好きな電車の動画を観たりして過ごしていました。知的に障がいがありハキハキと話をすることが少し難しいのですが、初めて出会った時からとてもよく話をし、新聞を読むのが大好きで、とにかくよく笑っていて、一緒にいるととても幸せな気持ちになるのです。

昨年の初夏あたり、彼は居場所スタッフに「学校の先生から健康診断で体重が増えていないって言われた。」と話してきました。スタッフの目からもなんだか痩せたように見えました。学校が終わってから居場所へ来ると、「お腹すいたー!」と話すことが目立つようになり、「ご飯はちゃんと食べているの?」というスタッフの問いに、それではさすがに少ないのではないかと心配になる発言が出てきたのです。

このやりとりがきっかけで、彼が複雑な家庭環境で暮らしていて、家庭で十分な食事をとれていないことがわかりました。この状態を私たち居場所スタッフはとても心配し、学校を始めとした関係機関に相談しつつ、私たちには何ができるのかを考えました。そこで取り組んだのは、彼が「居場所」を利用する時は毎回軽食を出してお腹を満たすということでした。

軽食はパンとシチューや焼きうどんなど、なるべく野菜を多く取り入れたものをスタッフが用意する時もあれば、月1回は子どもたちが食べたいものを子どもたちで作るという企画もありました。彼の好物は「かぼちゃ」だったので、かぼちゃの煮つけや冬至かぼちゃは何度か作っていた一品でしたし、かぼちゃプリンを作ることにも挑戦しました。また、彼は好きなものを最後まで残しておくクセがあったので、お肉やかぼちゃなどが彼のお皿に残っていると周りから「また好きなもの最後に食べようとしているでしょ~!」というツッコミがよく入りこの「居場所」の恒例の会話となりました。さらに、この軽食の提供は食事マナーや調味料の使い方なども教える機会となりました。

お祝いの会で掲げられたお品書きとメッセージ

お祝いの会で掲げられたお品書きとメッセージ

この結果、お腹は満たされ、彼は以前よりもこの「居場所」に来て安心しているかのような表情が見られるようになってきました。加えて、スタッフや他の子どもたちが同じものを食べながら皆でおしゃべりをする機会が増えたことで、コミュニケーションが活発になったり、皆で一緒に食べることは楽しいのだということを感じるようになってきたりしたのです。この「楽しい」と「安心」を得られたことで、彼は学校行事などと重ならない限りは毎回必ずこの「居場所」に参加していました。

このように、毎回楽しくご飯を食べて宿題を頑張ったりゲームをしたりしてかけがえのない時間を共に過ごしてきましたが、彼はこの春、この「居場所」を卒業します。3月に学校を卒業して早くも翌日から働き始めました。そして、自主避難だったために3月末で仮設住宅から退去しなければならなかったので、避難先の新しい家へ引っ越し新たな生活が始まりました。そんな彼の新しい門出を祝い、3月31日の居場所卒業の日にはお赤飯と天ぷらを囲んで皆でお祝いをしました。

福島での2度目の春。今年はどんな出会いがあり、どんな事ができて、どんな学びがあるのか…、ワクワクすると同時に気持ちを新たに活動に取り組みたいと思います。

福島子ども支援事業

この記事を書いた人

渡邊 いずみ
渡邊 いずみ支援事業部 開発事業課 福島子ども支援担当
アメリカ、メイン州立大学子ども発達・家族関係学専攻卒業。「子どもとたくさん関わって経験を積む」ため、大学卒業後都内の学童施設や福祉団体に勤務し、子ども家庭支援センターや知的障がい者の入所施設で働く。「途上国での子どもを取り巻く問題を改善したい」「世界の平和に貢献する仕事をする」と予てから抱いていた思いのため、退職後イギリス、イーストアングリア大学大学院で教育開発を学び卒業。2016年1月にワールド・ビジョン・ジャパンに入団し、支援事業部開発事業課で福島子ども支援を担当している。新聞を隅々まで読むことが好き。
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