【スタッフ・ブログ】国際NGO ワールド・ビジョン・ジャパン

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あるNGO職員と吸血虫(その2)

その2.吸血虫の正体は!

出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

朝になり、もう一度シャワーを浴びた。虫に刺された箇所は左首筋から左上腕部及び背中にかけての数箇所と思われたが、若干の痒み程度で依然腫れも出ていなかったので安心した。しかしあの虫が何であるのか、そして毒性があるのか確認する必要があった。自覚症状が殆ど無いのも逆に不気味なもので、「もしかして数日後、朝目覚めて鏡を覗いたら虫になっていたらどうしよう。」と昨今のCGを駆使した映画の影響により劇画的感性でいらぬ想像を描き立ててしまうのである。

朝食を済ませた後にワールド・ビジョン・ルワンダのスタッフが車で迎えに来てくれたので、一緒にホテルのフロントに行き、昨晩の虫の件を話した。しかしホテルのスタッフは、今までそのようなクレイムを宿泊客から受けたことがなく、謝罪はしたが虫の種類や毒性に関してはまったく知識がなく、私が説明する甲虫の存在自体が信じられないといった態度であった。兎に角、これから忙しい一日が始まるので、早々に部屋を替えてもらい、それ以上の追求はぜず事務所に向うことにした。虫に指された後の自覚症状が余りなかったせいか、その日は仕事に没頭し無事に一日を終えた。
次の朝、私をプロジェクトに案内してくれたWVルワンダ事務所の最古参スタッフであるドライバーのアーサーに何気なく、一昨日の虫の話をした。アーサーは、歳の頃は60歳代で、貧しい農家の出であったために、虫の話を聞いた途端にそれが何であるか教えてくれた。「それはベット・バックだよ。」私にとって始めて聞く名前であった。(それが、日本ではトコジラミ、一般的は南京虫と呼ばれている吸血虫であることは、後に東京事務所のスタッフにインターネットで調べてもらい知ることとなった。)
以下が南京虫の説明である。

トコジラミ(Cimex lectularius)とは、吸血性の寄生昆虫のこと。別名、南京虫(なんきんむし)。 [症状] 刺咬されると、激しいかゆみが生じる。俗に、刺されると肌に2つの赤い痕跡(刺し口)が残ると言われるが、実際には刺し口は1つであることの方が多い。 かゆみは刺された当日よりも二日目以降の方が強い。刺した痕は一ないし二週間以上消えない。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

アーサーは、「でもベット・バックは、衛生状態が悪いスラムのようなところに昔はよくいたが、今は見たことがないし、それがホテルにいるとは信じられない。ホテルに厳重抗議をすべきだ。」と続けた。その日の仕事が終えホテルに戻った私は、再びフロントスタッフに厳重抗議をしたが、スタッフは信じられないといった態度は崩さず、シーツと毛布の洗濯は外注で外の業者に委託しているので彼らに厳重注意をすると言うだけで、ホテル自身の責任所在を明確にしようとはしなかった。因みのそのホテルはフランス系の○○テルという世界的に名の知れたホテルであったが、私はホテルの態度を見てその誠意の無さに憤り、翌日から、ルワンダ人の経営する小さなホテルに移動する事にした。これで吸血虫事件は一件落着かと思われた。ともかくカミュの小説のごとく虫に変身する危険性は無いことが確認されただけでも心は穏やかであった。しかし、数日後に南京虫の本当の怖さを思い知らされることになるとは、この時点で私もアーサーも予期していなかった。

-つづく

この記事を書いた人

高瀬一使徒
高瀬一使徒
大学卒業後オーストラリア留学などを経て、青年海外協力隊に参加モロッコに2年間滞在。1989年にワールド・ビジョン・ジャパン入団。タイ駐在などを経て、1997年より支援事業部部長(旧 海外事業部)。現在までに訪れた国数約85カ国。4人の子どもの父親でもある。2014年3月退団。
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