【スタッフ・ブログ】国際NGO ワールド・ビジョン・ジャパン

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置かれた場所は途上国|インドでの忘れられないハプニング

■ 弱い立場に置かれた子どもたちや人々を前にして

私は、主にインドバングラデシュネパールで実施している事業を担当しています。普段は東京の事務所にベースを置き、担当事業のモニタリング、予算管理、報告書作成、新規事業の申請書作成などを各国のワールド・ビジョン事務所スタッフと連携して行いつつ、年に数回現地へ出張する、というのが基本的なスタイルです。現場との距離がある分、なるべく各国のWVスタッフと密にコミュニケーションをとり、自分でも担当国や支援地についての理解を深める努力をしていますが、やはり現地へ行き、自分で見聞きしなければ分からないことが多くあることを実感しています。

インド中部の支援地域に住む子どもたち

インド中部の支援地域に住む子どもたち

特に強く実感するのは、支援地の中でも特に弱い立場に置かれた子どもたち、人々に出会った時です。例えば昨年、インドで実施している支援事業の活動レポートに、「指定部族の人々が他のコミュニティの人々と対立し、日雇い労働の仕事を取り上げられ、収入を絶たれてしまった」という短い一文がありました。実際に初めて指定部族の人々のコミュニティを訪問してみると、土地を持たない彼らは、幹線道路と畑に挟まれた、政府から支給されたわずかな土地で暮らしていました。電気や下水道も未整備で、家はダンボールやビニールシートなどを組み合わせた非常に簡素なものです。集まってくれた人々は、「大雨が降ると、家の中に水が入り込んでくる」「子どもがサソリや蛇に襲われることがある」と話してくれました。

話を聞かせてくれた指定部族の方々

話を聞かせてくれた指定部族の方々

この地域に指定部族の人々が多く住んでおり、弱い立場に置かれていることは知っていましたが、周辺地域との明らかな環境の差に強い衝撃を受けました。短い文章の背後には、自分と同じ生身の人間が生きている。そんな当たり前のことを、改めて教えられました。

短い出張期間で、現地の言葉を話せない私が得られる情報はわずかかもしれません。それでも、支援地の子どもたちや人々と出会う時、「支援を届ける相手」としてではなく、一人ひとりを神様が創られた尊い人格としてとらえ、自分も心を開き、相手のことを知る努力を続けていきたいと思っています。

※より詳しい経緯は、こちらの記事に書かれています⇒【過去記事】“関わり”がもたらすもの(2016年3月31日)

■インドといえば、カレー、ヨガ、ボリウッド映画、IT大国!?

皆さんは、「インド」と聞くとどんなことをイメージされますか?カレー、ヨガ、多様な文化、ボリウッド映画などでしょうか。最近では、IT大国や経済成長のイメージも強いかもしれません。

かくいう私のイメージは「摩訶不思議な国」。インドでの支援事業を担当するまで、インドに行ったことはありませんでした。テレビや雑誌、周囲の経験者から見聞きしたインドでのエピソードと言えば(かなり偏っていますが)、「赤痢になって死にかけた」「インド人との交渉が大変で、日本人駐在員が現地の家を借りる契約ができた時点ですでに胃に穴があいていた」「路上で道を聞いたら、そこにいた十数人のインド人が全員違う方向を指した(そして目的地は全く違う場所にあった)」「ホテルやリキシャでぼられるのは日常茶飯事」などなど、ハードルを上げるものばかり…。なぜ、気力体力があり余っていた学生時代にインドを経験しておかなかったのかと後悔。戦々恐々としながら、2015年4月、初めてのインド出張に出発しました。

タミル・ナドゥ州のある家族

タミル・ナドゥ州のある家族

東京からシンガポールを経由し、約13時間をかけてタミル・ナドゥ州の州都チェンナイ市の空港に到着すると、緊張からか飛行機に酔ってしまい、足元はふらふら。なんとか両替をした後、車で市内のホテルへ行きチェックインし、ようやく休める…と思っていたら、パスポートがありません。空港の両替所に置いて来てしまったのです。真っ青になってホテルのフロントに相談すると、すぐにスタッフを一人空港に送ってくれました。

もし見つからなかったらどうしよう…と祈りつつ待つこと約1時間、戻って来たスタッフの手にはパスポートが!!何度もお礼を伝え、ようやく長い一日が終わりました。翌朝WVインドの同僚(インド人)にこのことを話すと、とてもシリアスな表情で「インドでそれはあり得ない…」と一言。コトの重大さを認識させられました。

大事に至らなかったので今は笑って話せるエピソードですが、色々と心配して縮こまる私に、神様が与えて下さったレッスンだったと思っています。自分ですべき注意を怠らないこと、しかし必要な助け手は必ず備えられており、信頼すること。その後の出張時に必ず思い返している、忘れられない経験です。

初出張で訪問した支援地域に住む子どもたち

初出張で訪問した支援地域に住む子どもたち

*前半の文章は、キリスト新聞(1月11日)に掲載された記事を転載したものです

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【関連ページ】

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チャイルド・スポンサーシップとは
世界の貧困と子どもたち

この記事を書いた人

蘇畑 光子マーケティング第1部
恵泉女学園大学卒業後、2006年7月にワールド・ビジョン・ジャパン入団。国内でのファンドレイジング、広報を担当した後、2013年4月より支援事業部スポンサーシップ事業課に所属。南アジア諸国での支援事業の監理を担当。2018年4月よりマーケティング第1部に所属。
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