【スタッフ・ブログ】国際NGO ワールド・ビジョン・ジャパン

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子どもを想う力

秋が近づくころ、私は教育支援事業の視察のため、ヨルダンを再び訪れた。今回の視察で痛感したことは、厳しい環境に置かれている子どもの夢を諦めさせないためには、周囲の「子どもを想う力」が重要であるということだ。

シリア内戦の影響で、人口の約10分の1にあたる65万人以上のシリア難民がヨルダンに避難している。ヨルダン政府は学校にシリア難民を受け入れることにしたが、教室数が足りず、二部制を導入して授業時間を短縮。1教室の生徒数も多くなり教育の質は低下、子どもたちは授業について行けず、退学のリスクに晒されている。特にシリア難民は、長らく学校に通えていなかったことや、シリアで紛争を目の当たりにしたこと、慣れない環境で暮らさなければいけないストレスから授業に集中できず、日々の授業についていくことが一層難しい状況だ。

ワールド・ビジョン・ジャパン(WVJ)は、そのような子どもたちが学校に通い続ける環境を整えるため、ジャパン・プラットフォーム(JPF)からの助成金と皆様からの募金によって、授業についていけていない子どもたちに補習授業を提供している。

補習授業_算数の様子

補習授業_算数の様子

補習授業の教室を実際に訪れてみると、子どもたちの表情の明るさに驚いた。算数の授業のはずだが、子どもたちが皆の前でピョンピョン飛びまわっている。どうやら、目盛りの読み方を勉強しているようだ。目盛りの問題は、目盛り線の数を数えても正解にはたどり着けない。(例えば、3目盛りには4つ目盛り線がある。私は小学校のとき、このことをなかなか理解できなかった苦い思い出がある。)。子どもたちはジャンプをしながら、目盛りを読む方法を楽しく体感していた。

他の教室では、子どもたちがゴムボールを使ってキャッチボールのようなことをしていた。補習授業の教員によると、ずっと座っているだけでは集中力は続かないから、たまに立たせてキャッチボールのように別のことに一度集中させるのだそうだ。このように、どの教室も、補習授業の教員の創意工夫がよく見られた。

WVJが採用した補習授業の教員は、教員資格をもっているが、採用後も教授法やストレスを抱えた子どもとのコミュニケーションの方法などの研修を受講する。教員は、研修で習ったことを教室で実践した際には、スマートフォンのアプリでその様子をWVスタッフや他校の教員に伝える。これが他校の教員の刺激になり、もっと子どもを飽きさせない、もっと有意義な授業をするためにはどうしたらよいか考えるようになる。

教員から授業の様子が送られてきて喜ぶ渡邉スタッフ

教員から授業の様子が送られてきて喜ぶ渡邉スタッフ

教員の熱意は子どもたちにも伝わり、変化が生まれる。勉強が楽しい。苦手だったアラビア語が読めるようになった。もっと勉強したい。借りている公立学校のスペースの関係で、空き教室を新たに補習授業のスペースにしなければならなかった時、数人の子どもたちが、自主的に物を片付け、掃除を始めたという。補習授業の前日には遅刻をしないために、翌日の服を着たまま寝るといった子どもも出てくるほどだ。

教室を自主的に掃除する子どもたち

教室を自主的に掃除する子どもたち

シリア内戦は解決の糸口が見えず、子どもたちは祖国に帰る見通しが全く立たない中、ヨルダンでの避難生活を余儀なくされている。ヨルダンでの労働許可の取得が困難であることから、各家庭は貯金を切り崩した生活をせざるを得ず、厳しい経済状態の中、食事回数を減らす、医療サービスを受けないなど、避難生活は厳しくなるばかりだ。子どもの教育を諦め、児童労働をさせて生計を立てている家庭もある。それでも子どもたちは、学校や補習授業に通い続ける。将来のため、何か新しいことを学ぶために。

このブログを書いている今日、第二回目の保護者向け研修が始まる。子どもたちが教育を受け続けるためには、各家庭のサポートが不可欠だからだ。保護者自身も厳しい生活でストレスを抱えている中、研修では、自身のストレスへの対処法、子どもの権利や教育の重要性、子育てや子どもとの接し方について取り扱い、各家庭でどのようなサポートができるかを考えていく。

どんなにつらい境遇であっても、子どもの夢を諦めさせない。そのためには周囲のサポートが不可欠だ

教員、子どもの保護者、現地のWVスタッフ、そして支援をしてくださっている日本の皆様の「子どもを想う力」を胸に、もっと良い教育支援事業を届けられるように全力を尽くしたい。

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この記事を書いた人

村松良介支援事業部 緊急人道支援課 プログラム・オフィサー
【経歴】
2010年、北海道大学法学部卒業。
2012年1月、英国のエセックス大学大学院(人権理論実践学)修了。在学中は札幌のNPO法人やガーナ、バングラデシュの人権関連NGOにてボランティア、インターンを経験。
2012年1月ワールド・ビジョン・ジャパン入団。支援事業部緊急人道支援課 プログラム・オフィサー。2014年8月より10カ月間、南スーダン難民支援事業担当駐在員としてエチオピア駐在。

【趣味】
音楽鑑賞、歌うこと、卓球

【好きな言葉】
ある舟は東に進み、またほかの舟は同じ風で西に進む。ゆくべき道を決めるのは疾風ではなく帆のかけ方である(『運命の風』E.W.ウィルコックス)
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