【スタッフ・ブログ】国際NGO ワールド・ビジョン・ジャパン

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140万人と2人と0人:ウイルス感染症との戦い

新型コロナウイルスの感染拡大により、ワールド・ビジョン・ジャパンの仕事のやり方も大きく変わった。すべてのスタッフが在宅勤務に切り替わり、すべての国内・海外の出張が取りやめとなった。しかし現地での支援活動は止まらない。

私が担当するアフリカ諸国も、政府により移動や集会が禁止となったため予定していた事業計画を見直し、今一番必要とされている医療従事者の支援や学校が休校となっている子どもたちへの支援を優先的に行っている。

アフリカはそもそも国内の医療体制が脆弱であり、マスクなどの物資や手洗いをするためのきれいな水が確保できないため、現地のスタッフも高いリスクと隣り合わせの中で感染拡大防止に取り組んでいる。そして世界中が新型コロナウイルスに注目していた4月、アフリカのコンゴ民主共和国では別のウイルス感染症との戦いが終わりを迎えようとしていた。

コンゴでは2018年4月にエボラウイルス感染症が確認されて以来、同国の北東部に位置する北キブ州、南キブ州、イトゥリ州で3458人が感染し、2277人が死亡した(4月16日時点)。致死率が66%にも上るこの感染症は、以前から貧困にあえぐこの地域の人々を更に苦しめていた。断続的に起こる武力衝突から逃れるために住んでいた地域を離れざるを得ず、そこにエボラウイルスや麻疹の感染が拡大し、感染症の恐怖と戦う日々が2年近くも続いていた。

コンゴ民主共和国の地図

コンゴ民主共和国の地図(出典:EVD dashboard DRC, WHO

コンゴ民主共和国におけるエボラウイルス感染者数
(期間:2018年4月から2020年4月16日)
●全感染者数 3458人
〇感染者数に占める割合
・女性(子どもも含む) 1943人(56%)
・子ども(18歳以下の男女) 982人(28%)
・医療従事者 171名(5%)
〇死亡者数 2277人 (66%)
出典:WHOホームページ

この地域で活動するNGOや国際機関は感染防止や治療のための様々な支援を行い、地域住民の努力により、2020年に入りエボラウイルス感染症の感染者は減少した。ワールド・ビジョン・コンゴ事務所も2018年以降、総額9.8百万ドルの資金支援によってきれいな水を提供するためのタンク、石鹸や消毒液を提供したり、予防のための啓発活動などを行った。

WHOは新たな感染者が報告されない期間が42日続いたら、エボラウイルス感染症のアウトブレイクの終了を宣言するとしていた。

それまで多くの感染者が確認されていた北キブ州にあるベニ保健区域のエボラ治療センターの患者が3月3日に退院して以来、新たな感染は報告されていなかった。アウトブレイク終了の目標は4月13日。すべての関係者が非常事態宣言解除に向けて準備をしていたその矢先、4月9日に新たに2名のエボラ感染症の可能性のある患者が見つかった(その後合計3名の感染が確認された)。地域の住民と、それを支援してきた当団体のスタッフ含む関係者は大きなショックを受けた。またこのウイルスの恐怖と戦う日々が続くこととなった。

しかし明るい展望がないわけではない。2020年5月8日、WHOは天然痘の撲滅40周年を祝った。天然痘ウイルスによるこの感染症により過去に多くの人が亡くなったが、19世紀以降は予防法が確立され、1980年5月にWHOが世界根絶宣言を行った。現在でも感染者はゼロである。天然痘は人間が感染する世界規模の感染症の中で、世界中の国が協力して根絶することができた最初のそして唯一のケースであるといわれている。暗いニュースが続く今だからこそ、こうした事実を思い出すことは重要だ。

コロナウイルスが根絶されるかどうかは不明だが、ウイルスによる感染症の拡大を防ぐためには、国際的な連携と協力が必要であることは明白である。天然痘の根絶はその一つのモデルケースだ。そして感染症のみならず、気候変動、貧困、紛争など、国境を超える様々な問題の解決も同様に、国際的な協力が必要である。我々は世界中のどこにいても繋がっている、そのことを在宅勤務しながら改めて認識させられた。

在宅勤務の様子(ワールド・ビジョンの水支援活動について、電話でJ-WAVEの取材を受けました)

在宅勤務の様子(ワールド・ビジョンの水支援活動について、電話でJ-WAVEの取材を受けました)

 


 

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によって世界が前例のない危機に瀕している今、ワールド・ビジョンは約100カ国のすべての事務所が団結して緊急対応を展開しています。
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この記事を書いた人

望月亮一郎
望月亮一郎支援事業部 シニア・プログラム・コーディネーター
広島市立大学国際学部卒、神戸大学国際協力研究科地域協力政策専攻修了。民間企業を経て、2007年から3年間、外務省専門調査員在ザンビア日本大使館にて勤務。同国の経済動向の調査および援助協調を担当。2010年2月から1年間、JICA専門家としてマラウイ財務省において開発援助プロジェクトのモニタリング能力向上のための技術協力を行う。
2011年3月にワールド・ビジョン・ジャパンに入団し、東日本大震災緊急復興支援部で緊急支援物資の配布および雇用生計向上事業を担当。2012年7月より支援事業部において、アジアにおける開発援助および緊急人道支援プロジェクトを担当。2015年10月から2018年9月までルワンダ駐在。
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