【スタッフ・ブログ】国際NGO ワールド・ビジョン・ジャパン

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僕が配布現場で貰ったもの

2mくらい冠水した集落

2mくらい冠水した集落

12月末から2月初めにかけて、スリランカ東部で洪水が起きたが同時に北部でも小規模の洪水が発生した。この国では激しい雨が数日続くと東京ではちょっと考えられないくらい簡単に浸水してしまう地域がある。
そのため洪水は頻繁にあるようだ。今年の東部は毎年起きるような洪水ではなく、随分大規模な、気象庁の観測史上初というようなレベルの洪水になってしまったが、北部ではそこまでひどい洪水にはならなかった。それでも床上浸水のため、学校や共用ホール(日本で言う自治会館みたいなところ)などに避難している家族が数千世帯出たので、ワールド・ビジョンとしても活動を行うことになった。週末に掛けての降水による洪水だったので、現場に週末いるスタッフのみで日曜日に支援物資の配布を行った。

一部冠水した道

一部冠水した道

自分は受益者登録を済ませた人から登録済みの証明であるチケットを回収し、配布物を渡す役目。
避難所には子どもも数十人おり、興味深げに配布に使った車の周りに集まってくる。
自分の役目は登録の進み具合によって暇な時間があるので、待っている間、配布物を準備している他のスタッフと一緒に子どもたちの相手をすることにした。
「家の中に水が入ってきた?」「何日くらい避難してる?」
「学校の授業はある?」「避難中に何してるの?」といった質問をしたり、皮膚の色を比べたり(日本人は基本的にスリランカ人に比べて色がだいぶ白いので概して子どもには怖がられるか、おもしろがられる)、写真を撮ったり、撮った写真を見てもらったりして(子どもたちに写真とって良い?と聞くと「いい」という返事だったので何枚か取ると、おばあさんも一人写してもらいたそうにしていたため、写真に入ってもらった)普段の大人相手のいそがしい配布とは違う時間を過ごすことが出来た。

避難している人々

避難している人々

配布物が残り少なくなったころに配布の受益者登録している所でなにやら人だかりが出来ている為に確認に行くことにした。他のスタッフに何が起きているのか説明してもらっていると、自分の左手の指の先に何かの気配がする。
チラッと手元を見ると、5-6歳くらいの少年が自分の指を握ろうとしている。少し驚いたものの、とりあえず別に危ないものでもないのでそのまま少年に指を握られたままスタッフと一緒に地域のリーダー的な人と話しをした。

人だかりの出来ている理由は、地方政府によって洪水被害者として登録されていない人たちが自分たちの被害状況を説明していたためであり、ワールド・ビジョンとしてはその人たちに地方政府に登録してもらうように助言することでとりあえずその場は解決した。

配布現場の子どもたち

配布現場の子どもたち

その間5分位であるが少年はずーと僕の指を握っている。
車に歩いて戻る際も少年は指を握ったまま脇をついてくる。
少年に名前を聞くとR少年だという。
車に着くとR少年は握っていた指を離してくれた。
彼は何を思って僕の指を握りたかったのだろうか?
少し寂しげな顔をした彼の小さな手のぬくもりから僕は仕事に対する新たなやる気を貰ったのだが、彼は僕の指から何かを得ることが出来たのだろうか?

この記事を書いた人

三浦 曜バングラデシュ事業担当 プログラム・オフィサー
米国Washington and Lee大学理学部化学科卒業。在学中にケンタッキー州の都市貧困にかかわるNPOでインターンをした事でNPOの働きに興味を持つ。一般企業で勤務後、帰国し2008年9月にワールド・ビジョン・ジャパンに入団、支援事業部緊急人道支援課に配属となる。2009年から2011年までスリランカ駐在、2013年から2015年5月まで東ティモール駐在。2015年8月に退職し、ロンドン大学公衆衛生学・熱帯医学大学院でMSc. Public Health in Developing Countries(途上国における公衆衛生)修士号を取得。2016年10月に再びワールド・ビジョン・ジャパンに入団、支援事業部開発事業第2課での勤務を開始。現在、バングラデシュ事業担当。2018年3月退団。
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