【スタッフ・ブログ】国際NGO ワールド・ビジョン・ジャパン

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ラオス駐在員よりこんにちは(前編)

はじめまして。ラオス駐在員の宮内です。

ラオス駐在中の筆者(宮内繭子)

ラオス駐在中の筆者

ラオスは最近みるみる暑くなり、先日の最高気温は36度でした。町で自転車をこいでいると、ジージーとセミの鳴き声がやかましく、「ああ、もうあれから一年がたったんだなあ」と思います。

一年前の今ごろ

森に囲まれた小学校

森に囲まれた小学校

2020年3月18日、私たちは事業の調査のため、サバナケット県・タパントン郡のある小学校を訪れていました。到着してしばらくすると、同僚たちになにやらざわついた空気がながれます。聞いてみると、調査に参加してもらう3年生児童12人のうち、学校に来ているのは4人だけだといいます。理由は、「森に食べ物を採りに行ってしまった」から。

あわてて先生がバイクにまたがり子どもたちを呼び集めにいってくれましたが、なかなか見つからない様子。ぽつぽつと増えていく子どもたちを対象に、学力調査を行いました。

学力調査の様子

学力調査の様子

「チャッチャンを採りに行ったんだよ」ドライバーさんが上を指さします。耳に入ってくるのは、聞き覚えのあるジジジ…ジジジ…という音…。セミでした。「チャッチャン、好き?」と聞くと、スタッフは、「好き!」 と、口をそろえます。どんな味? エビみたいな感じ? との問いには、「コオロギみたいな味だよ!」とのこと。「マユコにも、今度チャッチャンを食べさせてあげたいと思ってたんだ~」と(あ…ありがとう…)。そういえば学校へ向かう途中、長い木の棒をもって林でなにかをしている子どもたちを何人も見かけました。棒の先端に粘着力のあるものをくっつけて、セミを採るのだそうです。

*セミを採りに行って学校をお休み、というとなんだか微笑ましいのですが、子どもたちは確実に学びの機会を失っており、その背景には食糧不足や貧しさなど、根深い問題が隠れています。ワールド・ビジョンはラオスで、教育支援事業にくわえ、収入向上、栄養や養殖・家庭菜園支援等、多方面からのアプローチで、これらの問題に取り組んでいます。

さて、こんなゆったりと流れる時間のかたわらで、ラオスにも世界中を騒がせている新型コロナウイルスの影響がじわじわと迫っていました。ラオスでは当時感染者は出ていませんでしたが、初の感染者確認、ロックダウン開始などの噂が流れ、不穏な空気が漂いはじめていました。ちょうどこの前日、感染拡大防止策として、全国の小学校休校計画が発表され、急遽調査日程の短縮を余儀なくされ、手洗い促進活動を追加で行いました。水源がない学校も多く、手洗い活動をするのに、村の井戸からバケツで水を運んでこなければならないところもありました。当時村の人々は「コロナ」などおそらく聞いたこともなかったと思います。正しい手洗いを学ぶための、ハッピーバースデーの歌をうたいながらの手洗いを、特別なイベントかのようにはしゃぐ子どもたちを目に、どうか家でも手洗いをしてくれるよう願うばかりでした。

コロナ感染防止の手洗い活動の様子

コロナ感染防止の手洗い活動の様子

その後の展開は速く、ラオスと国境を接する国が次々と国境を封鎖し、ラオス発着航空便の運休・搭乗制限措置がとられ、事実上、ラオスからの出国ができない状態となりました。その後、ラオス初の感染者が確認され、全国的に移動・外出禁止令が下りたのちに完全ロックダウン体制がとられ、事業地への立ち入りができない状況が2カ月ほど続きました。

こうした状況で、私も当地の医療事情等を考慮し、万一にそなえ急遽日本へ一時帰国することとなりました。「一時帰国を希望される場合は、明日の飛行機で出国する必要があります」とお知らせいただいたのが事業地出張からの帰り道、夕方5時過ぎ。その後急いで航空券を手配してもらい、赴任地からの飛行機はない日だったので、たまたま首都ビエンチャンに帰るところだった同僚たちが早起きして車を出してくれ、翌朝5時には遠路7時間、首都の空港へ向け出発していました。まぁ1カ月、長くても2カ月くらいで戻ってこれるだろう、と、ほとんどなにも持たずに帰国しました。この日が自由に出国できる最後の日だったので、多くの外国人がラオスを後にしました。「みんな去っていく。悲しい日だ」と電話で聞いた同僚の声を思い出します。

予想外の展開のなか、不思議と冷静な頭には、いろいろな考えが浮かんでいました。この国でコロナウィルスの感染が広がったらどうなるんだろう? 当時、検査は首都でしかできず、地方での感染が起こった場合、把握も困難な状況でした。満足な治療が受けられる病院は全国でも数えられるほどしかありません。村には電気・水道が通っていないところもあり、テレビやインターネット、新聞などの情報収集手段も十分に普及していません。村にはマスクや消毒液もなく、石鹸を使った手洗いが普及しているともいえず、自分たちを守る手段がないのではと思えました。

幸い、こうした状況をふまえ、政府が早い段階から厳しい対策をとったため、ラオスでの感染者は第一波が21名に抑えられ、その後も外部からの入国制限等によりコントロール下にある状態です。こうしたなか、私も、半年超の一時帰国期間をへて、ラオスへ戻れることになったのでした。<「後編」へ続く>

事業対象校の元気いっぱいな子どもたち

事業対象校の元気いっぱいな子どもたち

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この記事を書いた人

宮内繭子
宮内繭子ラオス駐在 プログラム・コーディネーター
上智大学比較文化学部卒業(国際政治学専攻)。編集者として勤務後、サセックス大学大学院にて教育と開発を学ぶ。インド・カシミール地方山のてっぺんの辺境の村で教育と公平性についてフィールドワークを行い、村の人々の「子どもに少しでもよい教育を受けさせたい」という切実な思いと、それが叶わない現状を目の当たりにする。その後約5年半のインドでの教育支援分野での勤務(国連教育科学文化機関(UNESCO)、日本領事館、国連児童基金(UNICEF))を経て、2019年8月、高校生時代にボランティアとして働いたワールド・ビジョン・ジャパン入団。2019年11月末よりラオス駐在。
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