【スタッフ・ブログ】国際NGO ワールド・ビジョン・ジャパン

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ターニングポイントには、必ず支えてくれる誰かがいる

「将来は、人々の心を動かす“Motivational speaker”になりたい」

テレワークにも慣れてきたある日。
就寝前にシャワーを浴びながら、ふと、去年マラウイで出会った少女の言葉が脳裏によみがえってきました。

あの女の子、元気かな…。もし今隣りにいたら、何て励ましてくれるかな。
そう思い、次の日からしばらく、彼女のストーリーが取り上げられたワールド・ビジョン・マラウイの記事を読み返していました。

予測できない困難が押し寄せるとき

ワールド・ビジョン・マラウイが発行する刊行物に取り上げられたイングリッドさん(右)

ワールド・ビジョン・マラウイが発行する刊行物に載ったイングリッドさん(右)

イングリッド(Ingrid)さんに出会ったのは2019年9月、担当プロジェクトで女子寮を建設したマラウイの支援地を訪問したときでした。私は当時、ワールド・ビジョンでの勤務1年目を締めくくるべく、年度内最後の出張に出かけていました。

先輩から引き継いだプロジェクトで建設した女子寮。
果たしてこれからどんな子どもたちが利用するんだろう?

そのような気持ちで、学校の敷地内でインタビューの準備をしていたところに現れたのが、イングリッドさんでした。

長い文章をスラスラと、ハキハキと話す姿がとても印象的で、スタッフの通訳を待たずとも、「何か違う経験をしてきたのではないか」と感じとることができました。
冷静に話すその口調とは裏腹に、彼女のストーリーは私の想像を絶するものでした。

出張時のインタビューの様子。写真中央、紫の服を着ているのがイングリッドさん

インタビューをする筆者(左から2人目)。中央、紫の服を着ているのがイングリッドさん

イングリッドさんは、16歳のとき結婚を機に学校を中退し、実家を離れて結婚相手の家に移り住みました。彼女のお母さんは健康状態が良くなく、家計も厳しい状況だったため、彼女には選択肢がありませんでした。すぐに子どもを産みますが、結婚生活はうまくいかず、10代にして早くも希望の見えない日々が訪れました。

私のインタビュー時には話されなかった結婚生活の詳細が、帰国後に発行されたワールド・ビジョン・マラウイの記事の中で述べられていました。

「私を結婚に追いやったのは、貧困でした。
結婚して家族の問題が全て解決するならと、喜んで受け入れました。
母や他の兄妹の生活も、楽になると思ったのです。
でも実際は、もっと多くの問題がのしかかってきただけでした。

結婚していた期間、一度も平和を感じたことがありませんでした。
結婚相手やその家族から身体的に、精神的に、言葉でも虐待されました。
赤ちゃんを抱えているのにもかかわらず、夫に殴られたこともありました。
寒い夜、家の外で寝ることを強いられたこともありました。
一日中家族のために働いても、ご飯を与えられなかったこともありました」

ターニングポイントには、必ず支えてくれる誰かがいる

イングリッドさんはその後、自身の家族の助けもあり、夫と離婚して実家に戻りました。
そこで「貧困から抜け出すためには、学校に戻らないといけない」と思い、1歳の赤ちゃんを連れて学校に帰ってきました。

他の学生とのギャップを埋めるため、子育てと勉強を両立するため、家族はもちろん、学校の校長や周りの住民の多くのサポートが必要でした。そして、片道7kmかけて登校する彼女のような学生が勉強に集中できるようになるために、私が視察に訪れた女子寮が建設されたのでした。

ワールド・ビジョンが学校の敷地内に建設した女子寮(2019年完成)

ワールド・ビジョンが学校の敷地内に建設した女子寮(2019年完成)

インタビューの最後、イングリッドさんに将来の夢を聞くと、「人々の心を動かす“Motivational speaker(励ましの言葉をかけられる人)”になりたい」と答えました。

”Motivational speaker”は、現地のトゥンブカ語をマラウイ人スタッフが通訳してくれた表現でした。想定していた職業としての「夢」ではなく、何か心に刺さる言葉で、すぐノートに書き留めました。

本当に苦しい思いをしたからこそ、またそれを乗り越えた彼女だからこそ、さまざまな悩みを抱える人々を励まし、支える人になりたいという思い。それは、決して1人では絶望の中から抜け出せなかったこと、周りの人たちの支えが多くあったことを身をもって知っているからこそ、語れる夢なのだと感じました。

現在も、彼女の生活のニーズは十分満たされている訳ではありませんが、それでも一つのターニングポイントを経て、新しい未来に向かっているように見受けられました。

そして彼女や関係者の口から、ワールド・ビジョンがChild Protection(子どもの保護)のために実施している活動が、地域でイングリッドさんのような子どもたちを救い、支えることに繋がっていることを聞いたとき、遠い日本に住む自分自身もまた何かしらの働きを通して、大きな「支え合いの環」の中に含まれ、繋がっているのだと気づかされました。

同時に、彼女以外にも難しい環境に置かれながら、困難を乗り越えられない子どもたちが多くいるはずだ、と思いました。

いま思うと、それは決してマラウイやアフリカに限った話ではなく、状況は違えど、日本でも周囲の支えを得られず苦しみ続けている子どもたち、人たちがいるはずです。

新型コロナウイルス感染症によって、多くの国が共通の問題に直面し苦しむ今、想像力を働かせて自分にできる「支え」を誰かに届けることがますます必要なのではないか。

こうやってブログを書きながら、そう考えています。

マラウイの支援地の子どもたち

マラウイの支援地の子どもたちと

立ち止まりながら、進み続ける

多くの人にとって仕事もプライベートも思い通りにならなかった2020年、私もさまざまな悩みがあったなぁと思います。

在宅勤務で誰とも話さない時間が増えるといった環境の変化に適応しながらも、モチベーションを維持できない時期がありました。

でも、1人で過ごす時間が増えた一方、実家で家族と過ごす時間も増え、これまで見えるところ・見えないところで多くの支えを受け、人生のターニングポイントを何回もくぐり抜けてきたことを、時間をかけながら振り返ることもできました。

そして今年の10月、ある大学でオンライン講義の収録を行う機会がありました。これまで他のスタッフが訪問授業として実施してきたもので、今年はオンライン形式となり私が担当することになりました。

「今年はどこそこに出張して、あの事業をこう管理して」という年始の計画では想定しなかった仕事でしたが、「どうすれば画面越しの学生が退屈しないか、分かりやすく伝えられるか」と、新しい悩みと学びを得た経験でした。
イングリッドさんのように、力強い言葉を届けることができたのかはわかりませんが…。

一度立ち止まっても、また歩み出し、進み続ける。

少しでも多くの子どもたちが、そのような生活を送れるように、自分にできる働きを続けていきたいと思います。

2020年10月、大学のオンライン講義収録に臨む筆者

2020年10月、大学のオンライン講義収録に臨む筆者(キンチョー)

支援事業部 開発事業第3課
李 義真

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この記事を書いた人

李 義真
李 義真支援事業部 プログラム・コーディネーター
大阪大学法学部卒、東京大学公共政策大学院CAMPUS Asiaプログラム修了。その後、約半年間の民間企業での勤務を経て、2018年10月にワールド・ビジョン・ジャパンに入団。アフリカ地域担当として働く。
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