【スタッフ・ブログ】国際NGO ワールド・ビジョン・ジャパン

Read Article

「夢ならいっぱいあるさ、ありあまってるよ」

先日、中米ホンジュラスへ出張する機会に恵まれた。
30歳前後のアラサーの同僚2人と、かろうじて40代の私、3人の旅である。

往路、羽田空港でアラサー同僚とチェックインしたら、空港スタッフが 40代の私に、「あなたはお母さまですか?」と笑顔で話しかけてきて、なんともビミョウな空気が流れる。私たちの仲の良さがまるで親子みたい、ってことよね、と頭を切り替える。

右から4人目が筆者。その2人隣が佐野スタッフ、左端が神田スタッフ

右から4人目が筆者。その2人隣が佐野スタッフ、左端が神田スタッフ

40代も半ばを超えると、まぁそれなりにいろんな経験をしてきて、この案件はこんな感じでやって、このあたりでひと悶着ありそうだから、先にあの人にインプットしておこう、とか、そんなことをなんとなく想像して、よく言えば省エネモード、効率の良い働き、悪く言えば、事なかれ主義的な生き方もできるようになってくる。

ちょっと前にドリカムのあの歌があったよね、と思って確認したら 20年も前の曲だった、とかメガネ外さないと手元のスマホが見づらいとか、要するに、そういうお年頃になってきたわけだ。
そんな中での、中米出張。(何を見聞きしたか、は神田スタッフのブログに詳しいので割愛する)

冒頭の「夢がありあまってる」は、事業視察した際に、エリック(20代男子)が発した言葉。
同僚の佐野スタッフが、元ギャングの彼にいろいろインタビューをしていた中で、将来どうなってほしい?と聞いたときに、彼は、Ganas,sobra. (直訳:願望が余っている) と前置きして、いろんな夢を語ってくれた。 僕ができなかったことを、ユース(10代)の子どもたちができるようになってほしいんだ、例えば、きちんと勉強できる環境があることとか、本当にいろいろと。

インタビューに答えるエリック(仮名)

私には、Ganas,sobra という、たった 2センテンスの一言が、なぜかすごく印象的で、心をぐあっとつかまれるような、そんな気持ちになった。 私が最後に、「こうなってほしい!」という願いや夢をあふれ出るくらい言えたのって、いつだったかしらと。

社会人になりたての頃は、世界は自分を中心に回ってる、とまでは言わないものの、なんでもできる、何にだってなれる、って思っていて、意気揚々としていた。それがだんだんと、私のちからだと、できるのはせいぜいここまでよね、と妥協するクセが身についてしまった。

知らなかったことを知る喜び

私が自分の能力に見切りをつけつつあるその矢先に、ホンジュラスの事業地で、カバシタシオン(Capacitación:能力開発、トレーニング)が、大人気という場面に遭遇。
カパシタシオンのおかげで、自分の想いを言えるようになった、収支の付け方や販売の方法を学んで商売をきちんとコントロールできるようになった、収入を得て子どもを学校に通わせられるようになった、・・・ と、大人からも子どもからも、あふれんばかりの「カパシタシオンストーリー」を聞いた。

中央が筆者

中央が筆者

最初は、そこまでの成果があるかしら、とか少し疑っていたところも、正直に言うと、ある。

でも、心のうちからほとばしるように語られるいくつものストーリーに耳を傾けているうちに、これまで知らなかったことを知ることや、知らなかった技術を習得することは、閉ざされた扉が開くような大きな喜びだ、と腹落ちする瞬間があった。初めてひとりで自転車に乗れた時の、あの感じ。

麻薬売買、誘拐、銃撃戦。 物心ついたころから、様々な犯罪や暴力を見聞きしているなかで育ったら、次は私が殺されるかも、と絶望感や諦めを感じるだろう。そして、自分の未来のために、視野を広げて学びを深めることの優先順位が低くなることも、容易に想像できる。

そうした社会的な背景があるホンジュラスで、ワールド・ビジョンは事業の1つとして、平和教育の取り組みを進めている。他者を思いやることや、自分の気持を大切にすること等、日本で言うなら道徳の授業のようなイメージだろうか。
こうしたプログラムが、コミュニティ内で運営する子どもクラブを中心に展開されている。座学だけでなく、クラブでの活動を通じて、年上の子どもたちが、年下の子どもたちに、こういう場面だったら、どうふるまうのがよいか、と実践してみせているという。

子どもクラブについて紹介する事業地の子どもたち

事業地では、暴力が横行し、複雑な家庭環境にあって、保護者や近しい人からの愛情を受けたことがない、大切にされたことがないという子どもたちも少なくない。
そうした子どもたちにとって、自分は大切な存在だ、自分の思うことをキチンと表現してよいのだ、他の友だちも同じように大切な存在で、それぞれが思うことを否定せずに、分かち合うことが、日常生活に、ひいてはコミュニティに平和をもたらす第1歩だ、と学んでいく。

「毎日怯えていたし、辛い事件もあった」、と涙ぐみながら過去の体験を話した男の子たちが、子どもクラブの活動を語るときには、目をキラキラさせて最上の笑顔を見せてくれたのがとても印象的だった。

さて。
ホンジュラスから帰国して、手元が見づらいお年頃に入った私ができることは何だろうと考えた。

年を重ねて得た知見は、身を守ることもあるが、新しい道を閉ざすこともある。
今は、新しい道を開くよりも、開かれる道を舗装していくのが、私の役目なのかもしれない。
だから、まずは私自身へのカパシタシオン、古きにとらわれず、変化を受け入れる柔軟さを身につけるトレーニングを。そして、語られるたくさんの夢や希望を実現できるように。

マーケティング第2部サービス開発課
松尾 朋美


【10月19日 インスタライブを開催
このブログを書いた松尾スタッフがホンジュラス出張の体験を語りました!
アーカイブをご覧いただけます

・日時:10月19日(木)19:00-19:30
・テーマ:「ザ・危険な国」 中米・ホンジュラス出張報告
・スピーカー:神田聖光、松尾朋美、佐野友紀
・インタビュアー:浜崎直樹
・内容:中米の中でも危険度ナンバーワンと言われるホンジュラス。同国の事業視察を終えて帰国したスタッフへ、新人浜崎スタッフが突撃インタビューします。「世界最恐」スラムの日中の様子はどうなのか?ホンジュラスの今、をお伝えしました。
イベントの詳細はこちら

この記事を書いた人

WVJ事務局
世界の子どもたちの健やかな成長を支えるために、東京の事務所では、皆さまからのお問合せに対応するコンタクトセンター、総務、経理、マーケティング、広報など、様々な仕事を担当するスタッフが働いています。
NGOの仕事の裏側って?やりがいはどんなところにあるの?嬉しいことは?大変なことは?スタッフのつぶやきを通してお伝えしていきます。
Return Top