はじめまして。昨年9月に入団した岩間縁です。
入団してから主にヨルダンのシリア難民支援の事業を担当しています。
昨年11月の終わりに、私は入団して初めてヨルダンの事業地を訪れました。
冬が間近に迫った風の冷たい季節になっていましたが、教育支援事業で運営している補習授業では、シリア難民の子どもたちが元気に手を挙げ発言したり、屋外のレクリエーション活動で大きな掛け声を出しながら遊んだりしている姿を見ることができ、子どもたちに寒さも吹き飛ぶような元気を分けてもらいました。
訪れた事業地のうち、シリアとの国境が近い都市イルビドでは、補習授業へ通う子どもたちを対象にした冬物衣料の配布に立ち会いました。
子どもたちが配布されたバウチャーと引き換えに、冬物のブーツやジャケット、靴下を試着しながら選んでいましたが、特に私が印象的だったのは、子どもたちの横で、試着している姿を嬉しそうに見つめるお母さんや、ジャケットのジッパーを上げてあげるお父さんの様子でした。厳しい冬の間も風邪などひかず、子どもたちが元気に学校や補習授業に通えますように、という願いを込めたこの活動を通し、どの保護者の方も同じ願いを強く持っていらっしゃるのだと、そのまなざしから感じました。
しかし、願いとは裏腹に、ヨルダンに住む難民を取り巻く環境は、厳しさの一途をたどっています。シリア危機からまもなく6年を迎えるヨルダンでは、現在約65万人のシリア難民が避難をしてきていますが、その8割以上が難民キャンプではなく地域社会に暮らしています。首都アンマンやイルビドのような難民を多く受け入れている地域では、人口の急激な増加で家賃や食費、水道光熱費など生活に不可欠なあらゆるものの値段が高騰しています。またヨルダンでは難民が労働許可を得るのが難しく、難民は安定的な収入を得ることができません。特に冬の間は、暖房代や冬物の衣料、食糧、医療費など必要なものがまかなえず、中には子どもたちが通学をあきらめて家計を助けるといったことも起こっています。
今回のヨルダン滞在中、わたしはアンマンに住むある難民の方の家にお邪魔する機会がありました。古いアパートの一室で、3歳になる娘さんと生まれたばかりの赤ちゃんのいるお宅でした。家の中にはほとんど物はなく、そのガランした様子からほぼ身一つで祖国を離れたご家族の様子をうかがい知ることができました。部屋の中には小さなストーブが一つだけ置いてありましたが、それでも部屋の中は肌寒く感じられました。
弁護士だったというご主人は、懐かしそうに故郷の話を、そして不安げに見通しの見えない今の状況について話してくださいました。祖国で体験した恐怖、そしてこれまで積み上げてきたもの、大切にしてきたものを全て失った喪失感が癒える間もなく、避難先でも貧しさや寒さに耐えながら、先の見えない不安な日々を送るこのような家族が、今世界にどれだけいるのでしょうか。子どものために部屋を暖める、暖かいコートを買い与える、十分な食事をさせる、学校に通わせる、風邪をひいたら病院へ連れて行く…そんな当たり前のことを当たり前にしてあげられないところまで多くの難民の家族は追いつめられているのだと、身をもって感じた出会いでした。
この冬、ワールド・ビジョン・ジャパンでは、ジャパン・プラットフォームからの助成金と皆様からの募金により、ヨルダンに住むシリア難民の方が冬の間直面する様々な困難を乗り越えられるよう、越冬支援物資バウチャーの配布・現金給付による越冬支援を行うことにしました。
子どもの冬物衣料や暖房燃料などを配布することで、経済的な困窮に苦しむ家庭が冬の間も健康に過ごせるよう命をつなぐ支援を行います。
シリア難民の子どもたちが元気に冬の間も学校に通うことができますように、そして寒さに体調を崩すことのないよう暖かい部屋の中で過ごせますように、そして子どもたちの健康と健やかな成長を願う家族の方の思いが叶えられますように、一人ひとりに心を向けた支援を続けていきたいと思います。
この記事を書いた人
- 東京外国語大学外国語学部ペルシア語専攻を卒業後、一般企業勤務。その後英国、イースト・アングリア大学大学院教育開発コースで緊急期における教育などを学び卒業。2016年9月にワールド・ビジョン・ジャパン入団。ヨルダンにおけるシリア難民支援事業、アフガニスタンへの物資支援、WFP(国連世界食糧計画)の食料支援事業を経て、現在ヨルダン・イラクにおける教育支援・子どもの保護事業を担当。
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