ミャンマーのサイクロン被害と中国四川省の震災に対する緊急救援活動の真っ只中で、私はアジア太平洋地区の今後3年間の戦略を話し合う、大切な会議に参加していた。開催中、会議参加者は被災した2つの国の方々と、緊急救援活動を行なっているスタッフのために祈りのときを持った。
ある担当者が、「もし皆さんが被災地の現場にいる小学生だったら、何を神様に祈るでしょうか?」という質問を投げかけた。
参加者はしばらくの間目を閉じ、イメージの中で自分自身を被災地の状況の中へ置き、祈る時間を持った。
「神様、今日の食べ物と水を下さい。」
「暖かく寝られる毛布を下さい。」
「新しい家を備えてください。」
「一日も早く村に帰らせてください。」
「前のように学校に行かせて下さい。」
「友達と遊べるようにして下さい。」
様々な願いが頭に浮かび祈ったが、何かが足りない気がした。
そのとき、突然ある記憶が脳裏に蘇ってきた。それは、遠い昔大型台風により家を吹き飛ばされ、メチャメチャにされた収穫間近の野菜畑に佇む、父と母の姿であった。当時自分は小学校低学年であったが、しばらく両親に何も話しかけられなかった。切なかった。胸が締め付けられた。そして言葉に出せない願いを神にぶつけていたような気がする。
2つの国で被災した子どもたちは今、大変な生活を送っている。
その中で何よりも小さな心を締め付けるものは、苦しんでいる親の姿でないだろうか。
子どもたちは苦しんでいる親のために、心の奥底で言葉にならない祈りを唱えているに違いない。
子どもが親を気遣う気持ちは、大人が思うよりはるかに大きい。
あるときは自分を犠牲にしても親を守ろうとさえする。そのような純真な心をイエス・キリストは愛され、「天国はこのような子どもたちのものである。」と言っている。
ワールド・ビジョンは被災地の救援の中でも、子どもと家族を対象の中心にした活動を行なっている。
ミャンマーや中国では、緊急援助後の復興から開発を見据えた活動計画を立てつつある。
一刻も早く子どもたちやその家族が自分たちの村へ帰還し、チャイルド・スポンサーシップのような方法で再び自立に向けた長期的な支援を受けられることを、心より願う。
この記事を書いた人
- 大学卒業後オーストラリア留学などを経て、青年海外協力隊に参加モロッコに2年間滞在。1989年にワールド・ビジョン・ジャパン入団。タイ駐在などを経て、1997年より支援事業部部長(旧 海外事業部)。現在までに訪れた国数約85カ国。4人の子どもの父親でもある。2014年3月退団。
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