10月、私はスリランカの北部州キリノッチ県で行われている生計向上支援の進捗状況を見るために、約10日間出張に行って参りました。
スリランカを訪れるのは初めてだったので、実際に訪れてみると新たな発見が色々とありました。そのうち特に印象に残ったのは、都市部と北部州のギャップでした。
最も発展しているコロンボは、道路は綺麗に整備されており、高いビルが並んでおり、ゴミも少なく、一瞬「途上国」に来たことを疑うほどでした。マク◯ナルドやK◯Cなど日本でもよく見かけるお店もあちらこちらにありました。高級デパートには、高級ブランド品が日本とそれほど変わらない値段で売られており、スリランカの富裕層の購買力の高さを感じさせられました。道には多くの車が行き交っており、活気に満ち溢れていました。
一方、私たちが向かったワールド・ビジョンの支援地は、タミル人とシンハラ人の26年間にわたる内戦の戦地となった場所にあります。
南北に真っ直ぐ続く「Aライン」という道路に沿って北部州に向かうと、様子は一変し、のどかな風景が広がっていました。
道路の両脇には畑や田んぼが一面に広がり、ときには牛の一群が道路を横切ったりしました。
内戦の爪痕もところどころに残されていました。
キリノッチ県に入るためには、途中で政府軍による身分証のチェックを受けなければなりません。そのチェックポイントは、内戦中のLTTE(タミル・イスラーム解放の虎)勢力域の最南部にあります。
また、道すがら、地雷撤去を行っている団体のトラックを見かけました。スリランカ北部には内戦中に埋められた地雷が未だに残っており、人々の生活を脅かしています。
また、多くの人が、国連機関などが提供した簡易シェルターに住んでいました。キリノッチ県では多くのタミル人が内戦中に住む場所を奪われ国内・国外に避難し、2010年にようやく出身地への帰還が行われました。しかし、人々は生活をゼロから再開しなければならず、困窮した生活を強いられています。
しかし、内戦の傷跡にも負けず、生活を立て直そうと頑張っている人々に会うことができました。
写真の女性たちは、ワールド・ビジョンのアドバイスの下「貯金グループ」を作って定期的に集まっています。
まず、月に500ルピー(約320円)をそれぞれ出し合います。次に、前回お金を借りた人たちが、借りたお金の一部に利子をつけて返済します。そして、その場で集まった総額をまとまったお金がほしい人に貸し出します(誰に貸し出すかは、全員で話し合って決めます)。
これを毎月繰り返すことで、このグループでは、銀行の融資を受けることができないほど貧困の中にあっても、コミュニティの力でまとまったお金を手に入れることができます。
農業の肥料など、季節的にまとまったお金が必要な人は大変助かっていると言います。また利子がつくので、最終的にグループを解散する時には所持金が増えることになります。「ちょっとずつだけど頑張って貯金しています。夫も家計のために頑張ってくれて嬉しいと言ってくれています」と一人の女性は話してくれました。
このように、私が出張中に垣間見たのは、都市部と北部州の途方もないギャップでした。
どうして、こうも富は不平等に分配されてしまうのだろうと、やるせない思いにもなりました。
しかし、たとえ紛争の被害にあっても、貧困の中にあっても、そこには日々の生活があり、未来があります。
逆境の中でも未来に向けて前向きに進んでいこうと努力している人たちがいます。
彼らが夢を実現していくことができる社会が一日も早く実現するように、私たちもできることからやっていこうと思います*。
*ワールド・ビジョン・ジャパンはジャパン・プラットフォームの助成金により、紛争帰還民への生計向上支援を行っています。
この記事を書いた人
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【経歴】
2010年、北海道大学法学部卒業。
2012年1月、英国のエセックス大学大学院(人権理論実践学)修了。在学中は札幌のNPO法人やガーナ、バングラデシュの人権関連NGOにてボランティア、インターンを経験。
2012年1月ワールド・ビジョン・ジャパン入団。支援事業部緊急人道支援課 プログラム・オフィサー。2014年8月より10カ月間、南スーダン難民支援事業担当駐在員としてエチオピア駐在。
【趣味】
音楽鑑賞、歌うこと、卓球
【好きな言葉】
ある舟は東に進み、またほかの舟は同じ風で西に進む。ゆくべき道を決めるのは疾風ではなく帆のかけ方である(『運命の風』E.W.ウィルコックス)
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