緊急人道支援という仕事柄、紛争は身近なところにあります。わたしが担当する支援事業でかかわる人たちは、ほぼすべて紛争の影響を受けた方々です。
支援事業を通じてたくさんの人のストーリーを聞いたり読んだりします。
紛争の影響を受けた人々のストーリーが問いかけるもの
目の前でお父さんを武装勢力に殺されたイラクの男の子。心が空っぽで、無気力になって、学校にも行けなくなりました。
ふるさとがミサイルで破壊されたというシリアの女の子。炎天下のなか、家族と1日中歩いてヨルダンへ逃れる途中、妹を熱中症で亡くしました。
着の身着のまま、小さな子どもたちと他国へ避難したウクライナの女性。子どもたちを不安にさせないよう、家には帰れないことをわかっていながら、旅行だと言い聞かせて逃げるしかありませんでした。
仕事から離れた週末や、家族や友人と過ごすふとした瞬間に、そんなストーリーが頭をよぎり、もし自分だったら、あるいは目の前にいる友人、家族だったら…と考えるときがあります。
もし、突然起こった紛争で、明日の見通しもつかない毎日を生きなければならなくなったら。
もし、家族との夕食の時間が、食べるものもなく暗闇で迎える夜だとしたら。
もし、家族や友人を戦火に残し、他国へ逃げなければならないとしたら。
もし、姪っ子が突然教育を奪われたら。
もし、平和を訴えることも命がけだったら。
紛争の影響を受けた方々のストーリーは、被災者の方々と同時に、自分の大切な人や場所にも思いを馳せさせ、問いかけます。
最近、もしも自分や大切な人が紛争に巻き込まれたら、ストーリーを語ってくれた方々と同じ状況にあるとしたら、平和なときに何をしておけばよかったと思うだろうか、と考えるようになりました。
あの人に会っておけばよかった、と思うかな。あれをしておけばよかった、と思うかな・・。あれこれ考えてみる中で、今はこれを一番やっておきたい気がしています。
「身近な人たちと、そしてできるだけたくさんの人と、まずは平和について、それからどんな世界であってほしいか、どんな未来を次の世代に引き継ぎたいか、想いを共有したり語り合ったりしておきたい」
昨年のウクライナ危機発生以降は、私の周りでも、紛争をより身近に感じる人が多くなった気がします。みなさんの中にも、得体のしれない不安やモヤモヤを感じていらっしゃる方もいるかもしれません。
広島G7サミットに向けて~SDG4教育キャンペーン
今年5月、G7サミットが広島で開かれます。
私たちは想いを共にする仲間とともに、G7広島サミットに向けて、「平和と教育」をテーマとしたキャンペーン、SDG4教育キャンペーン2023を実施しています。
今、約2億2200万人の紛争あるいは災害の影響下で暮らすこどもたちが何らかの教育支援を必要としています[1]。紛争など危機状況下では、子どもたちの教育は特に後回しにされがちな支援分野です。数カ月から数年も全く学校に行けていない、学びの機会を得られない、ということもあります。でも子どもの成長は待ってくれません。今この瞬間も、学びのないまま大人に近づく子どもたちがいます。
[1] https://news.un.org/en/story/2022/06/1120922
子どもたちをLost Generation(教育の機会を失った世代)にしない世界。どこであろうとすべての子どもが、紛争に巻き込まれることなく、安心して、安全に学び、遊び、成長できる世界。わたしはそんな未来を、次の世代へ引き継ぎたいです。
みなさんには、どんな世界や未来が思い浮かびますか?
SDG4教育キャンペーンはどなたでも参加できます。
「最近の世界各地のニュースを見て、平和について考えていることがある」
「紛争下で暮らす子どもたちやその教育に対し、何かしたいと思っている」
「自分にとって学校で学べることはこんな意味がある。もし、紛争で学校に行けなくなったり、教育の機会が奪われてしまったら、どのように感じるだろう」
みなさんの想いを、ぜひ教えてください。
キャンペーンを通して、友達やご家族、大切な人と平和と教育について考えてみませんか?
この記事を書いた人
- 東京外国語大学外国語学部ペルシア語専攻を卒業後、一般企業勤務。その後英国、イースト・アングリア大学大学院教育開発コースで緊急期における教育などを学び卒業。2016年9月にワールド・ビジョン・ジャパン入団。ヨルダンにおけるシリア難民支援事業、アフガニスタンへの物資支援、WFP(国連世界食糧計画)の食料支援事業を経て、現在ヨルダン・イラクにおける教育支援・子どもの保護事業を担当。
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