国際NGO ワールド・ビジョン・ジャパンのスタッフブログ

Read Article

日本の子どもたちへの“種まき”

突然ですが、ワールド・ビジョンの「ビジョン・ステートメント」をご存知でしょうか?

私たちのビジョンは、すべての子どもに豊かないのちを
私たちの祈りは、すべての人の心にこのビジョンを実現する意志を
Our Vision for every child, life in all its fullness
Our prayer for every heart, the will to make it so

この「ビジョン・ステートメント」の下で私たちは日々活動しています。ここにある「すべての子ども」は、支援を必要としている途上国の子どもたちに限定されるものではなく、日本に住む子どもたちも含まれます。日本に住む子どもたちにも「豊かないのち」を生きてほしい、そんな思いで取り組んでいる1つがグローバル教育です。

ワールド・ビジョン・ジャパン(WVJ)の事務所を修学旅行などの一環として訪問してくれる生徒の皆さんの受け入れや、スタッフが学校を訪問し授業をさせていただく派遣授業などを行っています。また、イベント開催や教材作成を行っており、2013年度は約5,000人が参加してくれました。グローバル教育の取り組みや参加してくださった生徒さんの様子をご紹介します。

2013年11月、福岡県の山田小学校さんを訪れました。この学校では「命の教育」という取り組みがあります。地域の方や保護者の方、近隣大学の協力のもと、地域のことを調べたり、平和学習や性教育、科学研究などが実施されています。山田小学校さんの教育は、まさに「ビジョン・ステートメント」にある「豊かないのち」を育んでいらっしゃる、そんな印象を持ちました。

今回私はグローバル教育の新しい体験型教材を使って授業をさせていただきました。3つの体験ブースを設置し、途上国の子どもたちの生活を疑似体験してもらうというものです。

ラオスで実際に水汲みに使っているバケツに20リットルの水を入れて運んでみました

ラオスで実際に水汲みに使っているバケツに20リットルの水を入れて運んでみました

1つ目は、ラオスに住む8歳のハスくん家族が溜め池から汲んだ20リットルの水を運んで生活している様子を紹介し、実際にハスくんたち家族が使っていると同じバケツに水を入れて運ぶ体験をしてもらいました。

エチオピアに住むムルちゃんの家を見立てた藁葺屋根のテントに入って電気のない生活を想像しました

エチオピアに住むムルちゃんの家を見立てた藁葺屋根のテントに入って電気のない生活を想像しました

2つ目は、エチオピアに住むムルちゃんの家族が貧困のため十分な食べ物がなく、残された最後のパン1つを妹に与える様子を紹介し、ムルちゃんの家に見立てたテントの中で水道や電気のない家に入ります。家の中にはアフリカで実際に生活に使っていた食器や洋服、椅子など生活道具を置き、実際の家と近い状態を再現しています。

ゴミ山で売れるものを探す児童労働の疑似体験

ゴミ山で売れるものを探す児童労働の疑似体験

3つ目の体験ブースでは、まずカンボジアに住むティーダちゃんがHIV/エイズによって母を亡くし、家族を支えるために学校を辞め、ゴミ山で売れるものを探す日々を送っている様子を紹介します。そして、ゴミ山を再現した新聞新の山の中から売れるものを探す体験をしてもらいました。

限られた45分の授業の中で、目を真ん丸にして食い入るように映像を見てくださる生徒さんの姿や、体験後に黙々とワークシートを記入していく生徒さんの真剣な表情がありました。その様子から生徒さんが3人の子どもたちに思いを馳せてくださっていることが伝わってきました。授業の終わりには、クラス全体で感想を発表し合いました。

感想を発表する生徒さんも、それを聞く生徒さんも真剣です

感想を発表する生徒さんも、それを聞く生徒さんも真剣です

「日本で生活していたらそれが当たり前みたいになっていたけど、そうじゃないとわかりました」「自分と同じくらいの歳なのに、どうしてこんなにちがうのかなと思いました」など、皆さん緊張しながらも、しっかりと発表してくださいました。6年生のあるクラスでは、私が感想発表を促すと「はい!」と元気に手を挙げてくれた女の子がいました。「私はムルちゃんの映像を見て・・・ムルちゃんの家族にはたった1つのパンしかなくて・・・」言葉が止まってしまいました。

わっと両手で顔を覆い泣いてしまったのです。体育館が静まり返りました。後にお話しを伺った先生の言葉をお借りすると「言葉では表現できない特別な時間が流れた」。ほかにもDVDを見ている最中や体験中に涙をぬぐう生徒さんの姿が見受けられました。

先生に支えてもらい水タンクを背負ってみました

先生に支えてもらい水タンクを背負ってみました

校長先生は「心に響く内容は生徒たちの中に残り続ける。普段の授業では得られない特別な学びがあった」とおっしゃっていました。また、保護者の方からも「親ではなかなか伝えられないことを学べて、貴重な機会だと思う。私自身も感動した」との言葉をいただきました。

授業を終えて、昼休みになってから、体育館に2人の男子生徒さんがやってきました。「5年○組、○○○○と○○○○です!質問があります!いいですか?」意を決して、勇んで来てくれた様子です。「どうしたら、こういう(国際協力の)仕事をする人になれますか?」とてもうれしい質問でした。

生徒さんが途上国の子どもたちに思いを馳せ、1人ひとりの置かれた現状に真剣に目を向けてくださったばかりでなく、自分も子どもたちの命を救いたいという思いを持ってくださったのです。この仕事をしていて良かったなぁと思う瞬間でした。

グローバル教育の取り組みは、すぐに成果の出るものではありません。また、結果が数字で見えるものでもありません。日本に住む子どもたちが世界とのつながりを感じ、支援を必要としている子どもたちの現状を変えたいという思いを持ってもらえるように、将来を見据えた「種まき」の作業です。時には「種まき」のための前準備として「耕す」作業をしているのかもしれません。

ボランティアの方にご協力いただいた藁葺屋根を作る作業

ボランティアの方にご協力いただいた藁葺屋根を作る作業

日本で不自由なく生活し、物や情報に溢れ、小学生ながら忙しい日々を送っている生徒さんたちもいます。ついつい自分のことが中心になってしまう、大人でもそうだと思います。グローバル教育の取り組みを通して、日本に住む私たちの毎日の生活は決して当たり前ではないことや、同じ世界に生きる同世代を取り巻く現状を伝えることが、生徒さんの目が開かれるきっかけになればと願っています。

そして、山田小学校さんの「命の教育」のように、「命」について、また「生きること」について考えるひと時を持つことが、「豊かないのちを生きる」ことにつながるのではないかと思っています。

グローバル教育の取り組みを通して、初めて知ることがあったり、1つの新しい体験をしたり、そして、今まで持っていなかった新たな思いが生まれる、このように蒔かれた種が芽を出し、実を結ぶことを願っています。

新しい体験型教材は、今後ホームページで正式にご案内していく予定です。皆さま、ぜひご活用ください。

広報・アドボカシー課 松本 謡子

ようこ先生

グローバル教育のページ“ワールド・ビジョン・スクール”はこちら

この記事を書いた人

WVJ事務局
WVJ事務局
世界の子どもたちの健やかな成長を支えるために、東京の事務所では、皆さまからのお問合せに対応するコンタクトセンター、総務、経理、マーケティング、広報など、様々な仕事を担当するスタッフが働いています。
NGOの仕事の裏側って?やりがいはどんなところにあるの?嬉しいことは?大変なことは?スタッフのつぶやきを通してお伝えしていきます。
Return Top