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「正解」のない課題を考える ールワンダの事業地でのアンケート調査ー

国際協力において、受益者となるコミュニティから「生の声」を集める方法として、アンケート調査がよく行われます。事業計画の立案、事業のモニタリングや評価の際など、様々な機会に行います。今回はそのアンケート調査の企画段階における現地の活動の様子をご紹介します。

アンケート調査を行うときに最も重要なこと、それは「適切な質問」を設定することです。こちらが知りたいことに固執しすぎると、調査は「誘導尋問」になってしまうので、バイアス(偏り)のない質問を心がけています。また、同じ意図の質問でも聞き方ひとつで答えが変わってきます。現地の人々がおかれている環境、価値観、制約などを考慮した質問にしなければ、適切な回答は得られません。

これは、ルワンダで行われている地域開発プログラムを企画する際に行われる、アンケート調査のための研修の様子です。

地域開発プログラムを企画する際に行われる、アンケート調査のための研修の様子

地域開発プログラムを企画する際に行われる、アンケート調査のための研修の様子

彼ら・彼女らは、調査員として現場でアンケートの聞き取りを行います。事業地の調査対象の世帯を一軒一軒訪問し、家族構成や普段の生活の様子を現地語(キニャルワンダ語)でヒアリングします。

ここで得られた情報が、その後の具体的な事業形成の「基準(ベース)」となる、プロジェクトの初期段階における重要な活動のひとつで、ベースライン調査と呼ばれています。調査員は英語で用意された質問をキニャルワンダ語に訳したり、質問が適切かどうかを議論します。そんな中、アンケート項目のひとつにこういうものがありました。

「あなたが日常使っている『水源』は、自宅からどれぐらいの距離(キロメートル)にありますか?」

ここでは、自宅からどれぐらい離れたところに、生活用水を得る水源があるかをたずねています。他の開発途上国と同様に、ルワンダの農村で生活する多くの人は近くの井戸、川、池などから生活用水を得ています。自宅に水道が引かれていることは殆どありません。

この時、ある調査員が、「距離」ではなく、その水源に到達するまでの「時間」を聞くべきだ、との意見を出しました。農村の人たちは、距離を正確に測ったことはないだろうから、時間のほうがより正しいデータを集めることができる、という考えのようです。距離か、時間か。この質問の聞き方によっては、近隣に井戸を掘るという活動につながるかもしれない重要な質問です。あなたらなどちらの基準を採用するでしょうか。

こうしたアンケート項目に限らず、国際協力では、はっきりとした「正解」が得られることは非常に少ない、ほとんどないといってもよいでしょう。ではどうすれば、もっとも正解に近いと思われる答えを導き出せるでしょうか。

今回の調査員は、
1)私たちが大切にしたいことや目的を明確にし(何のための調査なの?)、
2)与えられた制約をや条件を踏まえて(どこまで正確・厳密にやれる?)、
3)関係者と議論をしながら一致点を見つける(自分が正しいとは限らない)
という姿勢でディスカッションを行っていました。とても建設的で、前向きな議論が行われました。

その結果、上記の質問に対して、この調査ではやっぱり距離(キロメートル)で回答をしてもらうことに決めました。理由は、人によって歩く時間も変わるから。若者なら20分の距離も、妊婦であれば40分かかる。だから時間も聞く人によって変わってくる、それなら距離がよいだろうということでまとまりました。この後、彼らは自分たちがまとめた調査票を持って、フィールドで調査を行っています。

身長を計測する機械(左)と体重計(右)。ベースラインでは、子どもたちの身長、体重を記録することも、その後の成長を測る上での重要なデータとなります

身長を計測する機械(左)と体重計(右)。ベースラインでは、子どもたちの身長、体重を記録することも、その後の成長を測る上での重要なデータとなります

この記事を書いた人

望月亮一郎
望月亮一郎支援事業部 開発事業課
広島市立大学国際学部卒、神戸大学国際協力研究科地域協力政策専攻修了。民間企業を経て、2007年から3年間、外務省専門調査員在ザンビア日本大使館にて勤務。同国の経済動向の調査および援助協調を担当。2010年2月から1年間、JICA専門家としてマラウイ財務省において開発援助プロジェクトのモニタリング能力向上のための技術協力を行う。
2011年3月にワールド・ビジョン・ジャパンに入団し、東日本大震災緊急復興支援部で緊急支援物資の配布および雇用生計向上事業を担当。2012年7月より支援事業部において、アジアにおける開発援助および緊急人道支援プロジェクトを担当。2015年10月よりルワンダ駐在。
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