【スタッフ・ブログ】国際NGO ワールド・ビジョン・ジャパン

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みんなに金メダル

途上国と呼ばれる国々でも、近年、めざましい経済発展を遂げてきているところがあります。私が担当するアジアでも首都には高速道路や大規模なショッピングセンターができたり、地方の町でも電話やインターネットでのコミュニケーションが容易になる国、地域が多くあります。

スクバトくん(中央)と家族

スクバトくん(中央)と家族

半面、都市にはスラムや農村で貧しいままに取り残されていく人々がいたり、持てる人と持たざる人の差が広がるなど格差が問題になってきています。日本でも「格差社会」の問題が大きくとりあげられるようになってきていますが、成長のアジアの陰で起きているこの格差の問題に対して、マスコミは残念ながらそれほど大きくは取り上げていません。

モンゴルもそのような経済発展を遂げつつある国のひとつ。経済成長に伴って、仕事の機会が限られる地方から都市への人口の流入が進み、今や人口280万人の約半分が首都ウランバートルの周辺に集まってきているということです。しかし、すべての人がその機会をつかめるわけではなく、多くが都市近郊で貧しい暮らしを続けざるを得ません。

レンガやコンクリート建ての家に住む費用がまかなえない人々の多くが暮らすのが、伝統的なモンゴルのテント家屋「ゲル」。頑丈な作りのものでも、外気温がマイナス20度を超える冬は、ストーブに使う燃料を切らすと生命にかかわる危険すらあります。

ワールド・ビジョン・ジャパンが支援するハイラアストADPは、高層ビルやきらびやかなショッピングセンターが並ぶ首都ウランバートル市内から、渋滞がなければ車で30分もかからないチングレティ地区にあります。

メダルや表彰楯を誇らしげに 見せてくれるスクバトくん

メダルや表彰楯を誇らしげに
見せてくれるスクバトくん

その中にある、ゲル集落の1つに住むスクバト君(12歳)。彼のご両親はそれぞれ病気にかかり、その後障がいを抱えて働くことができなくなってしまいました。その家庭を支えているのがスクバト君のお姉さん。町で働く彼女が一家の家計を支えていますが、家族全員の必要を満たすには十分ではありません。農村と違ってすべてに現金が必要となる都会生活。家の前には、ワールド・ビジョンから支援されたストーブに使う石炭が積まれていました。

義務教育制度があり、最低限の学校施設などは整備されているウランバートル市内ですが、課外のクラブ活動でかかる費用などは個人負担。貧しい家庭の子どもたちとそうでない家庭の子どもたちの格差が明らかになるところです。スクバット君は柔道が好きで、「オリンピックの選手になりたい」という夢を持っていましたが、経済的な状況からそれを諦めかけていました。しかしワールド・ビジョンの支援を受けて、柔道クラブへの参加を続けられているそうです。スポンサーからの支援を励みに、大会に参加して取ったメダルを誇らしげに示してくれました。

社会主義時代の名残で障がい年金などの制度はあるモンゴルですが、額が少なくとてもそれでは生きていくことができません。ワールド・ビジョンの支援で支えられたスクバト君の夢、そして障がいを抱えたご両親や家族の生活が、将来にわたってどう続けられるか、ADPスタッフとともに知恵を絞って考えています。

ところでこの訪問と前後して、ハイラアストADPがあるチングレティ地区の地区長さんより、ワールド・ビジョンの支援に対して謝意を表したいとメダルが送られてきました。社会主義政権が崩壊して20年。自らの力で地域の活動を進めなければならなくなったチングレティ地区のような地方政府にとっても、ワールド・ビジョンを通した国外からの支援は大きな力となったということです。

チングレティ地区からのメダル。 皆さまへ感謝!

チングレティ地区からのメダル。
皆さまへ感謝!

ハイラアストでの活動はまだ道半ばですし、私がいただくべきものではないと辞退しようかと思ったのですが、ハイラアストの子どもたちとその地域の活動をご支援いただいているお一人お一人へのメダルと思い、いただいてまいりました。

昨年はオリンピックの年でしたが、それぞれの場で「何かはできる」との思いから頑張ってくださった皆さんにワールド・ビジョンからの感謝と共にこのメダルをお贈りしたいと思います。

この記事を書いた人

平本実支援事業部 プログラム・コーディネーター
国立フィリピン大学社会福祉・地域開発学部大学院留学。
明治学院大学大学院社会学研究科社会福祉学専攻博士前期課程修了。
社会福祉専門学校の教員を経て、2000年1月より社団法人日本キリスト教海外医療協力会のダッカ事務所代表としてバングラデシュへ3年間派遣。
2004年12月から2007年3月までは国際協力機構(JICA)のインド事務所企画調査員。
2007年9月から2年半は、国際協力機構(JICA)のキルギス共和国障害者の社会進出促進プロジェクトで専門家として従事。
2010年9月、ワールド・ビジョン・ジャパン入団。
支援事業部 開発事業第2課 プログラム・オフィサー。
2020年3月、退団。
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