【スタッフ・ブログ】国際NGO ワールド・ビジョン・ジャパン

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選挙を前に、世界の「働く」を考える

10月10日は、第48回衆議院総選挙の公示日でしたね。
みなさんは、どのような思いを持って今回の選挙を迎えているでしょうか。いろんな政策的な争点、政治や社会についての考えがあることと思います。

広がる貧困や格差への対応や、医療・介護・育児・教育へのアクセスと質の向上、財政の健全化、基地の不公平な負担や国の在り方についての議論など、少し挙げるだけでも多くの課題が思い当たります。

その中で、長らく在り続けている問題の一つは、「働かせ方」の問題ではないでしょうか。
時に死に至るほどの長時間・過重な労働や、職場でのハラスメント、フルタイムあるいは掛け持ちで働いても生活ができないほどの低賃金など、日本社会が抱える「働く」をめぐる問題は、さまざまな形で現れており、同時に解決のための取り組みも各地で継続されています。

「労働」の関連では、ちょうど3週間前の9月19日、重要な発表がありました。世界の「児童労働」と「現代の奴隷制」についての最新の調査結果をILO(International Labour Organization:国際労働機関)が公表したのです。(ILOウェブサイト(英語)はこちら

ILO (2017) による世界の「児童労働」と「現代の奴隷制」についての最新の報告書

ILO (2017) による世界の「児童労働」と「現代の奴隷制」についての最新の報告書

少しむずかしい話になりますが、世界統計における「児童労働(Child Labour)」の定義は、国際条約(ILO条約第138号および第182号)に基づき、15歳未満の子どもが自身の教育機会を阻害される形で従事する労働とされています。そのうち、子どもの健康・安全・道徳を害し、心身の健全な成長を妨げる労働を「危険有害労働(Hazardous Child Labour)」といいます。

そして、今回同時に統計が発表された「現代の奴隷制」は、(1)本人の意によらず処罰の脅威によって労働に従事させる「強制労働」(ここには国家や軍による強制労働や、債務などにより自由を奪う搾取労働、性的搾取なども含まれます)、および、(2)本人の同意がない結婚・児童婚を指す「強制結婚」の二つを含んでいます。

これらの定義による調査の結果、いま世界では、1億5,160万人の子どもが「児童労働」に従事、そのうち約半数の7,250万人の子どもが「危険有害労働」に従事させられていると報告されました。

また、同報告書によれば、約4,030万人が「現代の奴隷制」の被害に遭い、うち2,490万人は強制労働に、1,540万人は強制結婚を強いられています。

加えて今回の調査報告では、いわゆる高所得国でも児童労働が起きていて、世界で202.5万人、児童労働全体の1.3%を占めるとの指摘がありました。国際的な定義によれば、ここ日本でも、児童労働と認められる事例が散見されています。(詳しくは、ワールド・ビジョンも加盟している「児童労働ネットワーク(CL-Net)の発表資料をご覧ください)

世界で約10人に1人、例えるなら、ひとクラスに3~4人の子どもが強制的で過重な労働をさせられているということ。規模も大きく、背景要因も多様なこの問題にどう取り組めばよいのか、手っ取り早い解決策は見当たりません。

世界の子どもたちのうち、約10人に1人が児童労働に従事している

世界の子どもたちのうち、約10人に1人が児童労働に従事している

でも、児童労働や強制労働をなくしていくための、社会が持てる一つのツールとして、「ビジネスと人権に関する指導原則」というものがあります。これは、2011年6月に国連人権委員会により承認された原則で、企業活動における人権侵害をなくすため、国と企業の双方にさまざまな取り組み義務を課すものです。(詳しくは、ワールド・ビジョンが幹事団体を務める「ビジネスと人権NAP市民社会プラットフォーム」のウェブサイトをご覧ください)

ここに含まれる人権侵害とは、児童労働や強制労働はもとより、冒頭で触れた長時間労働やハラスメント、外国籍ルーツの人々や女性、障がい者などのマイノリティの就労差別など、幅広い問題が含まれます。各国政府と企業は、これらの問題の予防と被害者の保護について、実効性のある対策をおこなうことが義務となったのです。

特に、この指導原則が画期的な理由の一つは、企業の場合、自社だけでなく取引相手による人権侵害も対象とされていることです。

これは、学校や職場でのいじめ問題に例えるなら、「自分はいじめてないから関係ない」とするのではなく、クラスメートや同僚などに対しても「いじめをする人とは付き合えないよ」とのメッセージを発し、周りを巻き込みながら、いじめを容認しない環境を作っていくようなイメージでしょうか。

過酷な労働は人権侵害。政治や社会の「仕組み」として、劣悪な労働をなくすために

過酷な労働は人権侵害。政治や社会の「仕組み」として、劣悪な労働をなくすために

世の中には、多くの過酷な「働く」を強いられている子どもや大人がいて、そうして作られた商品やサービスを「おいしいね」「楽しいね」と言いながら買ってしまっているかもしれないことは、考え始めるととても重たいことです。一方で、自分が消費するもの一つひとつの出所を確かめる手段や金銭的余裕を持てるとも限りません。

だからこそ、政治や社会の「仕組み」として、劣悪な労働をなくしていくこと。そのことが大切なのだと思いますし、仕組み作りの動きを支えたり促したりすることに、今回の選挙後も取り組んでいきたいと考えています。

なお、18歳未満の子どもが人身取引や子ども兵士などによる強制労働、買春や麻薬の生産・密売などに従事することは、「最悪の形態の児童労働(Worst Forms of Child Labour」と定義されます。

 

支援事業部 アドボカシー・チーム
松山 晶(あき)

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この記事を書いた人

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アドボカシーチーム
貧困や紛争の原因について声をあげ、市民社会や政府による行動を通じて問題解決を目指していくアドボカシー。

他のNGOをはじめいろいろな関係者と連携しながら活動を行っています。ロビイングやキャンペーンにかける想い。ぜひお読みください!
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