【スタッフ・ブログ】国際NGO ワールド・ビジョン・ジャパン

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もう一度立ち上がる力を①

こんにちは。ワールド・ビジョン・ジャパンのヨルダン駐在員の渡邉裕子と申します。シリア国内の事業をヨルダンから遠隔で管理しています。

唐突ですが大人のみなさん、大人になってから学校を訪問したら、どんな気持ちになりますか?自分の母校でなくても、学校の校舎を見たら、校庭で子どもたちが無邪気に遊んでいる姿を見たら、なんだか懐かしいなと思う方が多いのではないでしょうか。

でも、世の中には学校を訪問して「懐かしい」という気持ちになる大人ばかりではないということを知りました。

昨年、ワールド・ビジョン・ジャパンはワールド・ビジョン・シリア危機対応事務所を通じ、「マイルストーン・プロジェクト」によって学校建設・修復の事業をシリアで初めて実施いたしました。40名のご支援者様・企業様からお預かりした4,200万円で、紛争による被害を受けた5つの学校の建物の修復、教室やトイレの修繕・増築や、机やいすなどの学校家具の修繕や購入を行いました。

おととしの暮れ、ワールド・ビジョン・ジャパンがマイルストーン・プロジェクトによるわ事業をシリアで実施することが決まったという知らせを受けた際は、私のいるヨルダン事務所のスタッフだけでなく、シリア国内にいる同僚たちも大きな喜びに包まれました。なぜならシリアでは国際社会からの支援が減少しており生存に直結する支援もままならず、不要不急とみなされていない教育分野への支援が非常に限られているため、教育局は学校の修繕費を各校年間500ドル(7万円弱)しか配賦しておらず*1 、応急処置もままならない状態が続いているからです。どうしても修繕費が必要な場合は、学校が生徒たちにやむなく「カンパ」を募ることがあるそうで、それが負担となって学校に通えなくなる子どもがいる*2 と聞いています。お給料を満足にもらえずに働いている先生もたくさんいらっしゃいます。

*1  “Schools in Syria Edition 07”, 2021/2022, Assistance Coordination Unit (ACU), 120ページ
*2  “Out of School Children”, January 2022, ACU, 57ページ

残念ながら私自身は外務省の渡航制限があるため事業地のあるシリアへ足を踏み入れることができないのですが、この事業にかかわるシリア国内の多くの同僚たちとオンラインで話をする機会が増え、会ったことはないけど人となりについて知ることができました。その中でも、エンジニアとして事業開始前の校舎の損傷具合の査定から修復工事中の進捗の監視などのために足しげく学校に通い、逐一報告してくれたアフメドからいろいろな話を聞くことができました。

アフメドがこの事業で頻繁に学校に通い始めた当初、実はうれしいと思う反面、悲しい気持ちにもなったと言います。学校に足を踏み入れて「悲しい」という思いがこみあげてくるという答えを聞いたとき、私は意外に思いました。理由は、「学校は破壊されてボロボロで、もはや自分が子どものころに通った面影はなかった。教室にはドアや窓がなくて、外の風が直接入り込んでくる。電気もないので教室は薄暗く、机や椅子が足りないから子どもたちはぎゅうぎゅう詰めで座っている。こんな状況で先生方も教えるのが大変そうで、見るものつらかったから」だそうです。

修復前の学校

確かに、自分の子ども時代の楽しい思い出とは裏腹に、目の前にある学校が紛争により破壊され、無残な姿をさらしているというのは、耐え難いことだろうなと気づきました。

アフメドの子どもたちは私たちが修復した学校とは別の学校に通っていますが、事業実施期間中アフメドが仕事を終えて帰宅すると、記録のために学校で撮ってきたたくさんの写真を見せてとせがまれることがよくあったそうです。時を経るにつれ学校が修復され、きれいに仕上がっていく様子を見て子どもたちは自分の学校のことのようにうれしく思い、この学校の子どもたちに似合う色はこれだよ、なんて教室に塗るペンキの色のアドバイスまでしてくれたそうです。

修復後の学校

計画通り、5校の修復は12月に終了し、学校に通う子どもたちや先生方、また保護者も喜んでくれました。

修復された学校で学ぶ子どもたち

しかし2月6日、大地震が発生しました。(次回に続く

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難民支援募金

この記事を書いた人

渡邉 裕子ヨルダン駐在 プログラム・コーディネーター
大学卒業後、一般企業に勤務。その後大学院に進学し、修了後はNGOからアフガニスタンの国連児童基金(ユニセフ)への出向、在アフガニスタン日本大使館、国際協力機構(JICA)パキスタン事務所等で勤務。2014年11月にワールド・ビジョン・ジャパン入団。2015年3月からヨルダン駐在。
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