事業を開始して5年目に入ったカンボジアのポニャー・ルウ地域開発プログラム(以下、ADP)。これまでの成果を確認し、これからの計画を立てる材料を得るために現地を訪問してきました。
カンボジアは世界のワールド・ビジョンの中でも様々な新しい取り組みをしているところです。その一つ、ワールド・ビジョンは作り方の講習をする以外には資材の提供などは一切行わず、地域住民がそれぞれの能力に応じた規模でトイレを作り、村の全戸にそれを普及させる、という活動があります。トイレ以外の場所で用を足す人が多く、疾病の原因の一つにもなっていますが、その予防に役立つことが期待されています。また、その活動を通して住民自身が自らの持っている能力や可能性に気が付き、自信をもつこと、また他の住民と協力して問題解決にあたる経験をすることを目指しています。
訪問した村ではすでに全戸にトイレが設置され、地域の衛生状態が格段に改善していました。その成果を地方政府も評価し、村を表彰。そのことを記念した看板も立てられています。
チャイルドの家庭を訪ねたときには、家族の健康のためにと馬を売ってトイレの資材を買い家に設置した、というおばあさんの話しを聞くことができました。
地域の井戸の中にはヒ素が検出されるものがあります。ヒ素は煮沸をしても飲み水には適さないため、池の水や雨水を濾過して飲む方法が推奨されていますが、その濾過装置も家庭に設置されていました。水や衛生を取り巻く状況が改善されていることを実際に確認することができました。
ところで村を歩いていると、馬にスピーカーを載せてスローガンを叫びながら練り歩く子どもたちの一団に出会いました。
スタッフにその意味を尋ねると「道端にゴミを捨てないようにしよう!」「家にはトイレを付けよう!」「トイレに行ったら手を洗おう!」といった内容とのこと。大人はどこでも古い習慣やライフスタイルを変えたがらないものですが、子どもたちの声に触発されてか、道端で掃き掃除をして集めたごみを燃やす大人の姿も目にしました。この地域の意識改善に大きな役割を果たしているのが、実は子どもたちの声だということが見て取れました。
5年間の活動の結果、まだまだ改善が必要な課題、新たな課題がたくさん見えてきましたが、子どもたちの声がこの地域づくりを進める原動力になっていくことは間違いありません。
この記事を書いた人
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国立フィリピン大学社会福祉・地域開発学部大学院留学。
明治学院大学大学院社会学研究科社会福祉学専攻博士前期課程修了。
社会福祉専門学校の教員を経て、2000年1月より社団法人日本キリスト教海外医療協力会のダッカ事務所代表としてバングラデシュへ3年間派遣。
2004年12月から2007年3月までは国際協力機構(JICA)のインド事務所企画調査員。
2007年9月から2年半は、国際協力機構(JICA)のキルギス共和国障害者の社会進出促進プロジェクトで専門家として従事。
2010年9月、ワールド・ビジョン・ジャパン入団。
支援事業部 開発事業第2課 プログラム・オフィサー。
2020年3月、退団。
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