こんにちは。ワールド・ビジョン・ジャパンのヨルダン駐在員の松﨑です。
シリア危機の影響を受けるシリア難民とヨルダン人の子どもたちを対象とした教育支援事業を担当しています。
最近ニュースとなっている「ロックダウン(都市封鎖)」。私が駐在している中東のヨルダンもいち早くロックダウンを行い、本日でロックダウン20日目となりました。
ロックダウンにもあらゆるレベルがありますが、ヨルダンでは政府による徹底した封鎖が行われています。その効果もあり、ヨルダン全体での新型コロナウイルスの感染者数は323人(4月4日時点)に抑えられています。
ヨルダンでのロックダウン決定 そのとき起きたこと…
ロックダウンの決断から実施までは非常にスピーディでした。
数日の間に国境は完全に封鎖され、海外から急いで入国した数千人は国内各地のホテルなど宿泊施設に隔離されました。その後すぐに外出禁止令が発令され、次の政府方針が発表されるまでは誰も一歩も外に出てはいけないことになりました。
ロックダウンの前々日。「数日内に全面外出禁止になるらしい!」という情報を入手すると、県をまたいで出勤している現地スタッフは、閉鎖前に県境を越えるため、急遽帰宅。私はいつ戻れるか分からないオフィスで経理処理を大急ぎですませ、同じくヨルダン駐在中の渡邉スタッフと持てるだけの水と食料を買いに行きました。大雨にもかかわらずスーパーは大混雑でした。
ロックダウン1日目。ここ数日の騒がしさが嘘のような静けさと、違反者を逮捕するべく奔走するパトカーの音に私もようやくひしひしと不安を実感してきました。完全なロックダウンがいつまで続くかわからない状態で、急いで買った水は持つのか、食料は持つのか、現金は持つのか・・・。
ロックダウン3日目。政府からパンと水が全戸に配給されることになり、いつ来るのかと何度も窓から確認しましたが、配給車の合図と聞いていたクラクションの音は一向になりません。後ほど確認したニュースでは、各戸ではなく地域毎の配布に切り替わり、大勢の人がおしかけて大パニックになっていたようでした。
ロックダウン4日目。配給の難しさから、コンビニのような小さいスーパーのみ開店することになり、徒歩での食料・日用品の買い出しでのみ、外出してもよいことに。買い物以外の目的で外出した人には逮捕や罰金などの厳しい取り締まりがあるものの、10-18時までは歩いて買い物に行けるようになりました。久々の日光浴を楽しむ人、恐る恐る外に出る外国人、急いで犬の散歩をする人、次のロックダウンに備えて大量に買い物する人、さまざまでしたが、街全体に安堵感がありました。
新型コロナウイルスの脅威に加えて、ロックダウンの状況が目まぐるしく変わる中、保険に加入しているため医療の心配がなく、当面の食料や生活資金が確保できている私でさえ、大きな不安を感じています。そして、こんなときだからこそ、私と事業チームがフォーカスしようと心がけているのが、同じロックダウン下にあるシリア難民の方々の不安です。
3つの不安
私たちは、シリア難民の受益者の方々に日々電話で状況の確認を行っています。お話を聞いていると、主に3つの不安を感じていることが分かります。
まずは、コロナへの不安。ヨルダンでは8割のシリア難民の方々が難民キャンプではなく、地域社会(ホストコミュニティ)で生活していますが、家賃が高いため、8畳ほどのスペースに台所・水回りがついたアパートの一室に、5~7人の大家族で住んでいることが多いです。いろいろなところで「Social Distance」と言われていますが、狭い家では、たとえ誰かが咳をしていても、距離を取ることができません。コロナに感染してしまったらすぐに家庭やコミュニティで広がってしまう可能性が高いため、家族に少しでも風邪のような症状の人がいると、不安を覚える方が多くいらっしゃいます。
次に、食料への不安。明日にはルールが変わるかもしれないロックダウンが続く中、どれだけの食料・水を備蓄しておけばよいのか・・・また、大家族の数日分の水や食料を備えるためにはまとまった現金が必要です。
最後に、お金の不安。ヨルダンではシリア難民の方々も限定された職種、例えば農業など日雇い労働者として働くことができますが、突然のロックダウン以降、仕事に行けなくなってしまいました。収入も途絶え、必要な支援を受けるにも援助機関の支援が一部中断されてしまったため、食料、生活必需品、コロナの予防に必要な石鹸やサニタイザーなどを購入するにも、限られた金額で取捨選択をしなければなりません。
経験したことのない世界規模の危機
ヨルダンではロックダウンの中でも国連機関やNGOなどの援助機関が、脆弱な難民の方々をサポートしようと、在宅からでもZOOMやスカイプを駆使して日々コミュニケーションを取り合いながら、必要な支援を届けるべく奮闘しています。経験したことのない世界規模の危機、そのスピード感と情報量に圧倒されそうになることもありますが、普段よりも自分の健康と息抜きを意識しながら、在宅勤務中のチームメンバーと力を合わせて難民の方々に寄り添えればと日々思います。
(次回学習支援編、につづく…)
この記事を書いた人
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西南学院大学文学部英文学科を卒業後、ロンドン大学公衆衛生学・熱帯医学大学院とキングズ・カレッジ・ロンドン精神医学研究所による国際精神保健コースにて、発展途上国および脆弱国における精神保健について学び卒業。
その後、国内の公益財団法人勤務を経て、2017年5月にワールド・ビジョン・ジャパンへ入団。現在、ヨルダンにおけるシリア難民支援事業、アフガニスタンへの物資支援、WFP(国連世界食糧計画)の食料支援事業を担当。2019年9月からヨルダン駐在。2023年4月退団。
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