2015年は、世界の子どもたちの未来にとって重要な節目の年になる。9月15日からニューヨークで始まる国連総会で「持続可能な開発目標(SDGs: Sustainable Development Goals)」が採択されるのだ。
「ポスト2015開発アジェンダ」などとも呼ばれるこの難解な目標は、子どもたちの「命」にかかわる目標を数多く設定している。「SDGs」とは、今後15年間に、国際社会が一丸となって達成すべき開発目標を定めたもので、2015年を達成期限としていた「ミレニアム開発目標(MDGs)」の後継目標だ。
「極度の貧困と飢餓の撲滅」「乳幼児死亡率の削減」など8目標を定めたMDGsは、さまざまな課題の中から国際社会が協働で取り組むべき共通のゴールを定めて、政治的意思を集結させたという点で評価される。また、貧困人口の割合の大幅な削減や初等教育の就学率の改善など実際に大きな成果も出た。
しかし、5歳未満の子どもや妊産婦の死亡率削減などは改善が見られたものの、目標水準に遠く及ばない課題や、格差の拡大などの課題も数多く残された。
採択予定のSDGsは目標数を17に増やし、それに関連する169のターゲットで構成される。大きな特徴としては、MDGsで未達成であった目標も含め、「誰も取り残さない」ことを掲げた。さらに野心的な目標を含んでいること、開発系の目標と環境系の目標を統合していること、途上国だけでなく先進国も対象としたことなどが挙げられる。
これまで、私たちWVJ(ワールド・ビジョン・ジャパン)は、次の15年間で世界が目指すべき目標の中心に子どもたちが据えられることを目指し、他国のWV(ワールド・ビジョン)と協力しながら、積極的に市民社会や政府・国連機関へ働きかけをしてきた。
≪途上・先進国隔てなく「命」守るため努力≫
特に、MDGsからの残された課題である、予防可能な乳幼児死亡率の削減、栄養不良の改善、子どもに対するあらゆる形態の暴力の撤廃などに関する目標が、SDGsのゴールの中に採択されるよう、日本政府や国際機関などに訴え続けてきた。
また、今年6月には、「MDGsから『ポスト2015開発アジェンダ』へ~救えるはずの子どもの命を、すべて救うために~」と題した国際シンポジウムを開催。日本政府・学術機関・国際機関などからゲストを招き、乳幼児死亡率の削減に向けた各界の取り組みとその成果を振り返り、残された課題に今後15年でいかに取り組むべきかを議論した。
SDGsの大きな特徴の一つは、ユニバーサルであること、すなわち途上国だけでなく先進国もその達成に向けて努力することが求められるところにある。
近年日本でも、子どもの貧困、経済格差などが、私たちの身近なところで起きている問題として注目を浴びている。そのような観点からSDGsの17の目標を改めて見てみると、「あらゆる形態の貧困を終わらせる」「飢餓を終わらせ」「すべての人々の健康的な生活を確保」「包括的かつ公平な質の高い教育を提供」など日本の有する諸課題と密接に関連する目標が多く含まれる。
今回採択されるSDGsには、これまでWVが訴えてきた事項が明確に組み込まれており、個人的にも大変うれしく感じている。しかしながら、SDGsの目標は採択されて終わりではなく、これからは、目標設定以上に重要となる。私たちの周辺で起こっている国内の課題と、SDGsの目標とを結び付けて、いかにより良い世界に向かっていくか、という「実施」に関する議論を行い、それを実現に導く必要がある。
SDGsの達成期限となる2030年には、今年6歳になるわが子はすでに成人している。大人になったわが子が見る世界は、どのような世界になっているのだろう。SDGsで掲げている目標が達成された世界がその瞳に映っていることを心から願い、これからも日々の仕事に取り組んでいきたい。
アドボカシー・チーム
柴田哲子
※この記事はワールド・ビジョン・ジャパンの柴田哲子スタッフが執筆し、2015年9月10日付SANKEI EXPRESS紙に掲載されたものです
この記事を書いた人
-
貧困や紛争の原因について声をあげ、市民社会や政府による行動を通じて問題解決を目指していくアドボカシー。
他のNGOをはじめいろいろな関係者と連携しながら活動を行っています。ロビイングやキャンペーンにかける想い。ぜひお読みください!
このスタッフの最近の記事
- アドボカシー2019年7月23日子どもたちへの愛を、栄養改善を通して
- アドボカシー2018年5月22日難民をめぐる世界の動き。さて、私はどうする?
- アドボカシー2017年12月15日【インターン体験記】アドボカシーについて学んだこと
- アドボカシー2017年10月10日選挙を前に、世界の「働く」を考える