TV番組制作のため、この夏、ネパールを訪れました。
国にかかわらず、撮影をしていると、どこからか子どもたちや人々が集まってきます。
こちらの事情で日常生活のお邪魔をしてしまっているのですが、不自然にカメラに写りこんだり、音声が入ったりしてしまうと撮影が成り立たないので、失礼の無いように、子どもたちや人たちの注意をそらすことも私の仕事のひとつでした。
今日の撮影場所は崖地に建つ、ある女の子の家。このあたりの主な産業は農業ですが、山間地のため効率は悪く、十分な収入が得にくいため、都市部に出稼ぎに行く人たちが多いと聞きました。就学年齢なのに、家計を助けるために実家を離れ、煉瓦(れんが)工場・絨毯(じゅうたん)工場・自動車修理工場などで住み込みで働くことを余儀なくされている子もいて、この家の女の子も妹のために学校をあきらめ、絨毯工場で働いていました。(詳しくはこのページ最後のリンクから番組をご覧ください)
彼女の家は、車はもちろん、バイクでもアクセスはできません。我々は車を降り、ごろごろした石に足をとられながら、急勾配を歩き、息を切らしてその家に向かいました。標高が1500mほどなので余計に呼吸が上がります。
そんな私たちを横目に写真(下の写真をご覧ください)の2人はサンダルでひょいひょいついてきました。少しでもバランスを崩せば、下へ落ちるような場所で、「サンダル?!」と思い、まわりを見やると、山羊に与える草を山ほど背負った大人や重い水タンクを抱えた子も、サンダルでひょいひょいと器用に歩いています。
ようやく撮影場所に到着しても、玄関へ行き来する道は非常に狭く、画面に写りこまないために、動けるところは制限されました。もちろんこの2人はそんなことは知らないから、カメラが回っているところに行こうとします。大きな音を立てられないので、身振り手振りで「そっちには行かないで!」と言っても通じません(もちろん言葉も通じない)。屋根にまで上って、撮影している場所に近づこうとしていました。私は汗だくになりながら、”どうやって2人の注意をカメラからそらすことができる???”と焦っていました。
「そうだ、私があの2人を撮影すれば、少しは動きが止まるだろう」
早速2人を呼び寄せ、スマホで写真を撮影しました。インスタントカメラの要領でその場でプリントをし、「今日の記念にね。君たちは特別だよ」と、2人に同じ写真を渡しました。私が発した言葉が通じたかどうか分からないけれど、2人はものすごく嬉しそうに互いの顔を見たりして、しばらくの時間、自分たちの写真に見入っていました。
そんなこんなで、撮影は、家の中の様子、家のまわりの様子、お母さんと女の子が家の外に立つ様子などと順調に進んでいました。私はほっとして、ティッシュで汗を拭き、少し落ち着いた2人と「親友なのね?」「今日は学校には行かないの?」「家は近い?」など、通じているかわからない話をしていました。
そのうち、ひとりが私のリュックを指差します。ティッシュが欲しい様子。とりあえず渡すと、なんと、自分たちが写っている写真をおもむろに包み、シャツの胸ポケットにしまっています。もう一人も、急いでティッシュを受け取り、注意深く写真を包み、ズボンのポケットにおさめていました。
サンダルで、崖を縦横無尽に駆け上る元気な男の子たちですが、「大切なもの」への繊細な思いを垣間見た気がして、なぜだか心がきゅんとしました。
「移動しまーす」
スタッフの声が聞こえ、この家での撮影は無事終了。この2人にもサヨナラしなければなぁと思っている間にも、2人はティッシュに包んだ写真を取り出しては見ることを繰り返していました。
過酷な環境に暮らしているけれど、いろんなことに負けないで、友だちを大切にして、夢や希望を持って無事に成長して欲しいと心から思いました。
今回、この2人のほかにもカメラには映らない多くの子どもたちに出会いました。彼らも厳しい環境に暮らし、たくましく生き抜いています。単なる「撮影を見物している子どもたち」ではなく、大切な一人ひとりであることを改めて意識しました。このような子たちに対して、少しでも将来に対して夢や希望を持ってもらえるよう、自分には何ができるだろうかと考えさせられる出来事となりました。
【ネパールで撮影した動画:アイサリちゃんとロサンくん篇はこちら】
https://www.youtube.com/watch?v=IOw4cW1hhGc
【ネパールで撮影した動画:リナちゃんとシッタちゃん篇はこちら】
https://www.youtube.com/watch?v=t99xUJ7lJ0g
マーケティング第2部
サービス開発課
水上(みずかみ)真理子
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【関連ページ】
・ネパール:国情報
・チャイルド・スポンサーシップとは
・政府・国連等との連携
この記事を書いた人
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世界の子どもたちの健やかな成長を支えるために、東京の事務所では、皆さまからのお問合せに対応するコンタクトセンター、総務、経理、マーケティング、広報など、様々な仕事を担当するスタッフが働いています。
NGOの仕事の裏側って?やりがいはどんなところにあるの?嬉しいことは?大変なことは?スタッフのつぶやきを通してお伝えしていきます。
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