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ネパール:支援地の「今」を知る

ナヤ・バルサ・コ・スバカマナ!(新年あけましておめでとう)

ネパールは先週、新年を迎えた。ネパールで使われているビクラム暦では、今年は4月13日が新年にあたるそうで、2074年が始まった。

日本の桜の開花状況を耳にしつつ、ネパールはドティの支援地でも先月は桜が咲いたり、木々のつぼみが膨らんだり、すっかり春らしくなったなと思っていたが、今は打って変わり、落葉と稲刈りの真っ只中、山も里も一面黄金色で、まるで季節は秋へと移ったかのような景色が広がっている。
支援地の人々にそんな話をすると、「だって新年になるから!」と変化球で返された。私にはまったく理にかなわない答えだが、きっと彼らにとっては何ら不思議もない「当然」のことなのだと想像する。古いものが流されなくてどうして新たに花を咲かせることができようか、ということらしい。ともあれ、これまた本当に美しい季節になったなとあらためてネパール極西部の自然美に浸っている。

雨のあとには虹が!ドティの村の景色

雨のあとには虹が!ドティの村の景色

さて、前回は支援地の状況に圧倒され、とりとめもないブログになってしまったが、今回は外務省資金による防災事業のひとコマをご紹介したいと思う(事業内容はワールド・ビジョン・ジャパンの活動ニュースを参照されたい)。

本事業に限った話ではないが、支援事業を実施するときには支援対象地や人々に活動によりどのような変化が起きているのかをきちんと把握するように努める。そして活動が無事に終了した暁には、この事業を行ったことによる効果を確認する。さらに数年先までその変化を追い続けることもある。これがきちんとなされなければ、事業を行うために事業を実施する、つまり自己満足な支援になってしまうと考えられるからだ。

この変化をはかるためには、支援事業開始時の状況をしっかりと確認する必要がある。このための調査を「ベースライン調査」と呼んでいる。

本事業ではこの調査を3月に実施した。支援地域の子どもたちがどの程度防災に関する予備知識をもっているのか、学校という場をどのように捉えているのか、多岐にわたる内容について調べた。
どんな質問をしたらうまく現状が引き出せるか、関係者内で真剣に話し合う長い準備の過程があったが、今回はその準備の上で実施した学校の生徒へのインタビューの様子の一部をお伝えしようと思う。

1.調査員の育成

今回の調査は、支援地域の30校が対象であり、2名一組、計10名の調査員にデータ収集を行ってもらうこととなった。調査には、事業内容についての理解はもちろん、相手からうまく話を引き出すスキルが必要であり、また得た情報はモバイルフォンを通じて入力・管理するため、調査員に対し丸二日かけたトレーニングを行った。

2名1組の実地訓練も真剣!

2名1組の実地訓練も真剣!

真剣に座学を受ける調査員たち

真剣に座学を受ける調査員たち

 

2. 対象者(生徒)の選定

こうしてスタンバイができた調査員が、実際に対象の学校に赴き最初に行うのが、対象となる子どもたちを選ぶことである。
今回、5年生を対象にインタビューすることをあらかじめ決めていたため、5年生の全体から40人の子どもを選ぶところから始まった。この仕分け手法は「ランダムサンプリング」などという上等な名前で呼ばれているが、要は単純にくじ引きである(今回の場合)。その様子は写真のとおり。

①乗ってきたバイクで即席の手書きくじを作成する調査員。シンプル!

①乗ってきたバイクで即席の手書きくじを作成する調査員。シンプル!

②何をするのかじっと説明を聞く子どもたち

②何をするのかじっと説明を聞く子どもたち

③どのくじを引こうかな。緊張な面持ち

③どのくじを引こうかな。緊張な面持ち

④Open!自分の結果、友達の結果も気になる

④Open!自分の結果、友達の結果も気になる

⑤惜しくも外れてしまった子どもたちは退出

⑤惜しくも外れてしまった子どもたちは退出

 

 

 

 

 

 

 

 

3.インタビュー開始

調査員はきちんと子どもと向き合いつつ、これまで体験した災害のこと、地域で起こったこと、知っていること、とるべき行動が分かっているかなど、質問項目を一つ一つ丁寧に聞いていく。

インタビューの様子①

インタビューの様子①

インタビューの様子②

インタビューの様子②

 

通常、放課後に実施するため、選ばれた子どもたちは学校に残ってもらう必要がある。調査員が二人しかいないので、インタビューを受けるまで時間がある子どもたちを飽きさせない工夫も大事である。監督の立場で現場に派遣されるスタッフが担う大事な役目がこれ。一見、場を盛り上げることが苦手に見えるスタッフも、子どもを前にすると自然とリードを取り始めるから不思議!

写真は指を使った拍手で、一本ずつ増やしていくと音が大きくなって最後には盛大な拍手になる、というシンプルな遊びだが、皆この表情!
もし、このブログを読まれているみなさんの中に、簡単な遊びのアイディアがあったら支援地で試してみたいので、ぜひ教えていただきたいと思う。

シンプルな遊びだが、皆この表情!

シンプルな遊びだが、皆この表情!

4.集計

昨年からネパール事務所では、このような調査結果を、モバイルフォンを利用して入力・集計を行っている。これにより作業量が大幅に減り、人為的な入力ミスも少なくなったという。通信状況さえ確保できれば(これが支援地ではすこし難ありだが)とても有効なツールである。
現在、まだ集計作業中ではあるが、支援地の子どもたちの防災に関する「知識」「情報」は、やはりあまり多くはなさそうだ。小さい頃から防災が身近な日本人に比べると、来るべきときに「備える」ということはまだまだ新しい発想であり、優先度は低いのだろうと想像する。

今回、調査を通して集められた支援地の「今」の状況。

支援事業が終了する3年後、そしてもっと先の将来、この子どもたちや学校に、現状からどのような変化がみられるのか非常に楽しみである。
そのために本事業を通じてやらなければならないことは盛りだくさんだが、新年、気持ちも新たに頑張っていきたいと思う。

支援地の子どもたちと

支援地の子どもたちと

 

この記事を書いた人

加藤 奈保美
加藤 奈保美
神奈川県生まれ。早稲田大学・同大学院理工学研究科にて、アジアの建築史について学ぶ。在学中に阪神淡路大震災でボランティアを経験したことから、防災や被災地支援がライフワークに。卒業後は建設コンサルタント会社に勤務。自然災害を中心とした国内外のインフラ事業に従事する。2008年6月、ワールド・ビジョン・ジャパンに入団。サイクロン後のミャンマー、大地震後のハイチで復興支援に取り組む。東日本大震災後は、一関事務所の責任者として岩手県に駐在した。2014年4月から、アフリカのスポンサーシップ事業を担当、現在は、支援事業部 開発事業第2課所属。2017年1月からネパール駐在。
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