最初にミン君に会ったとき、座っていたミン君を見て15歳くらいに見えました。だけど立ったミン君は意外と小さく、実際は11歳でした。年上に見えたのは、その顔に浮かべている表情がとても老成していたから。
11歳と言えば日本であれば小学生、まだまだ保護者の庇護下で無邪気な表情を浮かべている年齢なはず。だけどミン君の浮かべる表情は一家の大黒柱として働いて家族を支える、そんな気概を背負った表情でした。細い体に細い手足、育ち盛りであるはずの年齢のミン君が食べられる食糧は多くはありませんでした。
今年の7月に訪れたミャンマーのヤンゴンにあるスラムの1つにミン君は住んでいました。ミャンマーは日本では経済発展目覚ましい国として知られており、日本企業も多く進出し、ヤンゴンのあちらこちらでも日本の旗を付けた重機が道路等のインフラ整備を行っています。そんな発展目覚ましいヤンゴンの中に、その発展から取り残されたスラムが多くありました。
さまざまな国の訪れたスラムの中でもこの場所は衛生環境がかなり厳しく、ミン君が暮らす高床式の家の下には雨水がたまり、ボコボコとガスが発生している様子があちらこちらでみられました。この中に落ちたら、きっと無事ではいられないと足元に細心の注意を払って歩きました。また、高床式の家はちょっとの間だけ住むための建物かのような華奢な作りでしたが、聞くと「10年もここに住んでいる」というのです。実際にお邪魔すると床を踏み抜きそうな不穏な音がして、この下はガスの発生している水だまりだと思うと、人の家を壊してはいけないという気持ちと同時に、この衛生環境の水だまりに落ちたら大変という緊張感でいっぱいでした。
ミン君は、病気で働けないお父さんとおばあちゃん、耳の聞こえない弟と妹ともう一人の弟と生まれたばかりの赤ちゃんの8人で暮らしています。お母さんは8カ月前に突然いなくなってしまいました。ミン君は、いなくなったお母さんを探して「帰ってきて」と言いに行ったことがありました。
だけど、お母さんの答えは「帰れない」でした。
いなくなったお母さんの代わりに、学校をやめて働かなくては暮らしていけなくなってしまったミン君は、家の仕事を午前中にした後に夜中まで道端に出ている屋台で働いています。仕事をして家族を支えなければならなくなった時に、おばあちゃんが近所で見つけてきた仕事です。仕事は道端で魚や鶏肉などを焼いて売る仕事。仕込みから始まり夕方には店を出し、夜中まで店に立ちます。慣れた手つきで仕込みから接客までをこなし、この店のオーナーに従いながら毎日仕事をしています。その働く表情は11歳の男の子ではありませんでした。
ワールド・ビジョンの現地スタッフと話しているとポツっとこう漏らしました。
「心折れた大人たちがこのスラムには大勢いる」と。
ままならない生活が毎日続き、生活の向上を求めて転々と引っ越してみても、暮らしが良くなることもなく、その現実に希望が消えていき、心が折れてしまい、その現実に病気になったり、遁走したりとさまざまな方法で人生から退く大人たちが多い、と。ミン君のお母さんもそうでした。
だけど、ミン君は将来に希望を持っています。そして、家族を愛し、その生活を支えるために日々頑張っているとても賢い男の子です。将来の夢を聞くとこう言いました。
「将来は医者になりたい」
でもミン君のおばあちゃんは言います。「学校にも行けないミンがどうして医者になれるのか」と。
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困難な環境にある子どもたちの現在ある姿を目の前にするたびに、涙が出ます。そんな時に、思い起こされるのは子どもたちのためにと支援を始めてくださる方々から頂くメッセージです。
私は毎日、朝オフィスに出勤してくるとまずPCのスイッチを入れて、ホームページを通してチャイルド・スポンサーシップに新しくお申込みくださった方を確認します。そうすると、多くの方々がお申込みとともに、温かいメッセージを添えてくださっていて、本当に励まされます。
毎年クリスマスの時期に、3000人の子どもたちにチャイルド・スポンサーを紹介するため、私たちはキャンペーンを行っています。今年は、キャンペーンのリーダーとして、なんとか3000人の子どもたちにチャイルド・スポンサーを紹介したいという思いと、時には、こんなにお願いばかりさせていただいていいのかなと不安になることもあります。
でもそんな時、困難な環境にある子どもたちのこと、そして一緒に支援してくださる方々の温かいメッセージを確認することで、心が温まり、今日も明日も変わらぬ思いで活動に励むという決意を新たにすることができます。子どもたちの希望ある未来を一緒に応援くださること心よりありがとうございます。
マーケティング第1部 堀切かおり
【関連ページ】
・チャイルド・スポンサーになる
・ミンくんのストーリー
・アジアの子どもたちとワールド・ビジョンの活動
・チャイルド・スポンサーの声
・どうやって貧困を解決するの
この記事を書いた人
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世界の子どもたちの健やかな成長を支えるために、東京の事務所では、皆さまからのお問合せに対応するコンタクトセンター、総務、経理、マーケティング、広報など、様々な仕事を担当するスタッフが働いています。
NGOの仕事の裏側って?やりがいはどんなところにあるの?嬉しいことは?大変なことは?スタッフのつぶやきを通してお伝えしていきます。
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