途上国に暮らす子どもたちの日常生活をドキュメンタリー形式でお伝えするテレビ番組「世界の子どもの日常生活」、撮影秘話の第2弾です。(第1弾はこちら)
この日、密着したのはエチオピアに住む6歳のコンジットちゃんの1日。水汲みや家畜の世話など、朝からお手伝いで忙しいコンジットちゃん、この日も5リットルのタンクを担いで水汲みに出かけました。
裸足で元気に出かけたコンジットちゃんが向かったのは、歩いて10分ほどの池でした。藻が繁殖し、濁っている水。それでもここに住む人たちには大事な水源です。こうした不衛生な水が原因で病気になり、命を落としてしまう子も少なくありません。今すぐに、安全な井戸をつくる支援の必要性を感じました。
ここで、一つ印象に残ったことがありました。それまで、笑顔で元気に水汲みをしていたコンジットちゃんの顔が急にくもり、重いタンクを背負ったまま小走りで泣きながら帰って行くのです。さすがのカメラマンも追いつけないほどスタスタと、一目散におうちに向かうコンジットちゃん。エチオピアのスタッフに聞くと、水汲み場にいた男の子たちがからかって「日本人に連れて行かれちゃうぞ」と言ったそうで、怖くなって逃げ出してしまったようです。その後、なんとか機嫌を直してくれたコンジットちゃんでしたが、地元のスタッフに聞くと時々こういう嘘を信じて、外国人を怖がってしまう子どもがいるとのことでした。
この日は地元の人たちにとって重要な「マスカル祭り」の日。コンジットちゃんの撮影が終了し帰る途中、たくさんの人だかりを見つけたのでカメラマンと行ってみました。エチオピアの子どもたちはとても人なつっこくて、私たちを見るとみんな笑顔で走り寄ってきます。その中に、ひときわ私になついてくれて、手を離さない女の子がいました。ひとしきり一緒に遊び、そろそろ車に戻ろうと歩きはじめたその時、突然その子のお母さんが現れ、奪うようにその子の手を取って行ったのです。ビックリしている私にむかって、怒ったように何か言っているお母さん。もしかしたら、女の子を連れて行かれてしまうと思ったのかもしれません。私は少し悲しくなりました。そして同時に、軽率な行動をしたのかもしれないと反省もしました。
もちろん、私たちが子どもたちを連れて行くことなんてあり得ないのですが、そういうことを信じてしまう環境があるのだな、としみじみ思いました。当たり前のことですが、食べ物が少なくても、安全な水が手に入らないような環境だとしても、子どもたちは両親から離れたくないし、両親も子どもたちを手放したくなんてないのですね。
2週間の撮影が終わり、ドバイ経由で成田に向かいました。たった2週間でしたが、今まで持っていた価値観が変わるような貴重な体験でした。ベッドも椅子もない家に暮らし、1着しか持っていないお洋服を大事に着ている子どもたち、それでも、彼らの笑顔がキラキラと輝いていたことが忘れられません。
帰りの飛行機では、外国に出稼ぎに行くエチオピアの女の子たちの団体と一緒になりました。10代後半くらいとおぼしき彼女たちは、これからキラキラした中東の国で働くのでしょう。コーラの缶の開け方も、シートベルトのつけ方も知らなかった彼女たち(隣に座ったカメラマンが優しく助けてあげていました)、これからは食べ物や飲み物に困ることはないかもしれません。母国を離れ、家族と離れ離れになって暮らすこれからの生活で、彼女たちの笑顔が消えませんように。祈りながら帰路についたのでした。
(チャイルド・スポンサーシップ課 山下)
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エチオピアで撮影した番組「世界の子どもの日常生活~エチオピアの子どもたちに光を」はBS12ch(TwellV)で放送されます。
【今後の放送予定】
12/30 (日) 17:30~18:00
12/31 (月) 18:00~18:30
1/9(水) 19:00~19:30
1/12(土) 17:30~18:00
1/17(木) 19:00~19:30
1/29(火) 19:00~19:30
いっしょに幸せになろう チャイルド・スポンサーを募集しています。
この記事を書いた人
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世界の子どもたちの健やかな成長を支えるために、東京の事務所では、皆さまからのお問合せに対応するコンタクトセンター、総務、経理、マーケティング、広報など、様々な仕事を担当するスタッフが働いています。
NGOの仕事の裏側って?やりがいはどんなところにあるの?嬉しいことは?大変なことは?スタッフのつぶやきを通してお伝えしていきます。
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