日本のニュースでは、報道が少なく限定的な、世界で最も若い国家である南スーダンでは、昨年12月より戦闘が続き、一部の地域では、事実上の紛争状態に陥っています。先日、5月9日に2度目となる停戦合意が締結されました。しかし、戦闘が収束に向かっているとは言えず、国内外への避難民の数は、130万人を超えています。40年という長きに渡った紛争の和平合意が結ばれ、多くの難民が祖国の設立のために帰還してきた2006年より、ワールド・ビジョン・ジャパンは、北との国境にあるアッパーナイル州での支援を行ってきました。同州は最も激しい戦火の中にいました。現地スタッフも避難生活を余儀なくされたり、現場から日々届く、現地の状況は、混乱、不安、困窮している状態です。アッパーナイル州は、北(スーダン)に国境を囲まれたような地域で、文化もアラビア語文化の色も濃く、独立後、多くの変化を経験した地域です。首都から500km以上離れており、いつも色々な勢力争いの中で翻弄されてきた地域です。
昨年12月の初旬の出張時には、新しい国の制度の不足からくる多くのチャレンジの中で、力を合わせ乗り越えようとする熱い人々に出会いました。
戸惑いながらも、子どもたちの未来のために、なんとか立ち上がろうとしている人々。アラビア語から公用語である英語で教鞭を取ることかできるよう英語の勉強 を頑張る教師。子どもたちを地域で見守るシステムを立ち上げたり、給与が滞りがちで、苦労する教師をなんとか支えようと知恵や心付けを出し合うPTAのメンバー。子どもたちも、たくさん学校に来るようになり、元気で無邪気な笑顔を見せてくれていました。南スーダンで働くスタッフの多くも、以前は、難民だったという人が多く、難民として海外で産まれ育ち祖国の国造りのために家族を連れて帰ってきた人々がほとんどです。そういう人々の未来への夢と希望を一気に吹き飛ばしてしまう戦闘。昨年の年末以降、事業地であるアッパーナイル州は、最も大きな戦火の中にあります。
一番、戦闘、紛争の苦しさを経験している人々が、なぜ再び紛争に見舞われるのか?この問いを一番大きく感じているのは、今、戦火を避け逃げている避難民生活を余儀なくされている人々だと思います。そして、難民のほとんどは、子どもたちです。
戦闘による憎しみの連鎖から、その報復のため多くの若者が民兵となって、戦闘に加わり、戦闘の拡大をしていると聞きます。戦闘に加わる人々は、南スーダン国民として、祖国の和平を作り上げるための一人として育まれてきたのだろうかと疑問が過ぎります。長きに渡ったこれまでの戦闘、そして今、続いている戦闘が、彼らの持っていた希望を奪い、さらに戦闘に駆り立てているこの憎しみの連鎖を止めなければ、さらに、失われた世代が続きます。
一日も早く戦闘が収まり、特にこの国の次の世代を担う子どもたちが、憎しみの連鎖から脱出でき、いのちを大切にする世代として育まれていくことができるように、これからも、支援を届けていきたいと願っています。
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この記事を書いた人
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大学卒業後、約7年にわたってODA関連業務を請負コンサルタント会社勤務。在職中、青年海外協力隊(1997-99年)タイ(村落開発普及員)に派遣される。
2001年よりNGOに勤務し、緊急支援事業でエチオピア短期派遣後、村落開発コーディネーターとしてフィリピン駐在。一般企業勤務を経て、2007年5月よりワールド・ビジョン・ジャパン入団。
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