◇数年前に子どもを産んでから、諦めていた勉強をガンベラに来て再開することができたことが、今の幸せです。
◇エチオピアでは、南スーダンとは違う教科が2つも加わって勉強は大変ですが、ここでは教科書を借りることができ、自主勉強もできて、妹弟の世話をしながらもなんとか試験にも合格することができました!
◇南スーダンに帰ったら先生になるための勉強をしたいと思います。祖国では、ほとんどの人が文字を読めないので、読み書きの喜びを教えてあげたいと思います。
これらは、エチオピアの西部ガンベラの南スーダン難民キャンプの学校で学ぶ生徒たちの声です。南スーダン国内では、近くに学校がない、4年生以上の課程を学べる学校が限られている、また若くして結婚をした等、様々な事情で教育を中断せざるを得なかった人たちが難民キャンプで勉強を再開して、早くも3年の月日が流れました。
エチオピア、ガンベラの南スーダン難民キャンプには、現在も37万人以上の人々が暮らしています。その大半が、2013年12月、南スーダンにて戦闘が始まった直後に戦火を逃れて来た人々です。また、昨年9月に南スーダン国内の衝突が再燃し、さらに8万人以上の難民が到着。今でもその数は増え続けています。
安心を求めて南スーダンから逃げてきた人々のエチオピアでの生活。実際のところ、彼らは必ずしも「安住」を手に入れたとは言えません。
私たちワールド・ビジョン・ジャパンも、「難民が安心できる生活を守りたい」、「彼らに寄り添いたい」と願いながらも、日々、様々な限界との闘いを強いられています。
① 難民支援のリミテーション
まず、難民支援において難しいのは、いつまで難民生活が続くか分からない、という点です。そして支援は一時的な環境整備でなければなりません。住み心地の良い生活環境を提供することは、彼らが祖国に戻ることを妨げることに繋がりかねないためです。また、難民を受け入れている国や地域の人々の生活との格差を生じさせないよう、その地域の開発と足並みを揃える必要もあります。地域内で格差が生じれば、摩擦を生み、衝突の原因ともなります。ですから、最終的には、支援事業は受け入れ国であるエチオピア政府の計画に左右されてしまうのです。
② ホストコミュニティとの摩擦
ガンベラは、もともとその地に暮らしていた民族と、開発のために入植してきたエチオピアの高地出身の人々との間にすでに摩擦が生じていた地域でした。そこへ、ガンベラの人口規模をはるかに超える30万人の難民が避難してきたため、新たな摩擦の種になっています。これまでの3年間で幾度も民族間の対立、衝突が起こりました。南スーダン難民は、平和を求めて逃げてきたにもかかわらず、また対立に巻き込まれているというのが現状なのです。
③ 難民支援の資金不足
世界中で難民が急増したことより、エチオピアの難民支援のための資金は激減しています。一昨年前と比較すると、昨年は75%も難民支援の予算が減りました。現在は、ウガンダに流入する南スーダンからの難民が急増しており、エチオピアでの難民支援に届く予算はさらに減額されています。さらに、問題の長期化により支援の効果が見えない「援助疲れ」と呼ばれる状況に陥っており、先進国社会による拠出金はますます減る一方です。
このような厳しい状況の中、難しい課題に日々対応を迫られながら支援を行っています。
3年前、庇護(ひご)を求める人々に、まずは命を支える支援が必要だと難民キャンプでの支援事業を開始しました。しかし残念なことに、今でも難民支援は続いています。南スーダンでの支援事業を担当し、「紛争という人々の夢を壊す不正義に対して共に闘いたい」、そして「南スーダンや難民キャンプで実際に耳にした難民の人々の夢を灯し続けたい」という想いを常にこころの中に持ち続けてきました。
紛争という不正義に対し、夢を持ち続け、武器ではなく知恵を用いて本当の平和を掴み取ることの重要性を、これからも伝えていきたいと思います。
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この記事を書いた人
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大学卒業後、約7年にわたってODA関連業務を請負コンサルタント会社勤務。在職中、青年海外協力隊(1997-99年)タイ(村落開発普及員)に派遣される。
2001年よりNGOに勤務し、緊急支援事業でエチオピア短期派遣後、村落開発コーディネーターとしてフィリピン駐在。一般企業勤務を経て、2007年5月よりワールド・ビジョン・ジャパン入団。
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