【スタッフ・ブログ】国際NGO ワールド・ビジョン・ジャパン

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タンザニア:カシューナッツで地域の持続的発展へ

こんにちは。アフリカでの支援事業を担当している菊田です。今回は、アフリカのタンザニアの農家グループと取り組んでいるカシューナッツプロジェクトのお話です

タンザニアには、日本の2倍以上ある国土に日本の半分以下の人々が住んでいます。広大な国土に道路・水道・医療施設などのインフラを整備するのは容易なことではありません。そんなタンザニアでは都市から離れると、道路は未舗装のデコボコ道、水道がある場所まで数十分から数時間歩いて水を汲みに行かなくてはならない、妊産婦が産科のある病院までバイク等で2,3時間かけて通わなくてはならない、というような状況が見られます。サハラ砂漠以南のアフリカの国の中では、比較的発展しているとみられることが多いタンザニアですが、地方での生活は想像以上に過酷です。

支援地域の農家の人たちと筆者(中央)

支援地域の農家の人たちと筆者(中央)

■アフリカで力を入れる収入向上事業。なぜ、収入向上が必要か

現在、ワールド・ビジョン・ジャパンが、タンザニアをはじめとするアフリカの国々で力を入れている事業の一つが、農村部の人たちの収入向上を目指したプロジェクトです。地元の大学をはじめとする農業専門家や政府と連携し、農業の生産性向上やマーケティングの研修実施等を通じて、生計向上の実現を目指す事業を実施しています。なぜ、教育でも栄養でも保健でも、また子どもの人権でもなく、一見子どもには直接的な関係が薄いように見える収入向上に注力するのでしょうか?

それは、収入向上によって得られたお金を使って、現地の人たちが自ら資源を振り向ける先を決めることによって、より効率的に子どもたちや地元の人たちのニーズを満たしていくことができると考えているからです。

実際、タンザニアでは、政府のインフラ整備が追い付かない中で、地元の人たちが地域で必要な公共的な施設(学校や診療所)を、自分たちでお金を工面して増築や改修する様子があちらこちらで見られます。この場合の費用負担は、住民が政府やNGOと分け合う形で行っているケースが多いようです。人々は、自分たちの課題を把握し、その解決のために必要な資源を自ら負担し、またNGOや政府がもつ資源を活用しながら、より良い社会づくりに取り組んでいるのです。

WVJにより支援を受けている子どもの家庭を訪問。姉妹二人と母親にヒアリングをしているようす

WVJにより支援を受けている子どもの家庭を訪問し、姉妹二人と母親にヒアリングを実施

■カシュー生産拡大プロジェクト

そんなタンザニアで、昨年から最も私が注目してきたプロジェクトが、皆さまからのチャイルド・スポンサーシップのご支援によりムキンガ地域で実施している「カシュー生産拡大プロジェクト」です。これはその名の通り、地域にカシューナッツ農場を拡大しようというものです。カシューナッツは言わずと知れた高級ナッツの一種で、世界的にみると、カシューナッツ生産のシェアが大きい国はベトナムインド、コートジボワールなどですが、実はタンザニアもカシューナッツ生産に適した気候を持つ国の一つなのです。

■なぜ、カシューナッツなのか

タンザニアの事業地でカシューナッツ生産を拡大したい理由は以下のとおりです。

①ほかの作物に比べて管理に労力がかからないこと。
②需要が安定して増加しており、また、価格が安定して高いこと。
③カシューは栽培開始から収穫までの期間が短く(収穫まで約3年)、農家にとって投資しやすいと思われること。
④カシュー栽培にはそれなりに広い土地(1本あたり約50㎡)を要しますが、タンザニアの国土にはまだまだ未耕作地が多く、それを活用して栽培を行う余地は大きいこと。

タンザニアは日本に比べるとかなり降水量が少ないです。近隣のウガンダルワンダなどと比較しても、かなりカラカラです。そんな中、地元の人たちは収入向上の策として、貯水池を掘って、そこから畑に水を引き、ピーマン・トマト等の換金作物を育てる、という農業を行ってきました。これはいかんせん労力がとてもかかってしまいます。池を堀るにはかなりの労働力が必要ですし、水を持ってくるのにも労力と時間がかかりますし、ピーマンやナスを育てるのはそれなりに手間がかかります。そのような事業を拡大していくのは難しいので、ある程度放っておいても育ってくれるような作物で、かつ利益につながりやすいものを育ててはどうか、というのが私たちの考えです。ピーマンやナスを育てるときは、頻繁に水やりをしたり、肥料をやったり、地表の水分蒸発を防ぐために藁を敷いたりしていますが、支援事業地ではカシューの木を自然の雨のみで維持することが可能です。

カシューはこのように少ない手間で育ってくれるうえに需要が増加傾向にあり、価格が安定して高いため、投入するコストに対して高いリターンが得られる可能性が高いとザックリ計算が立ちます。カシューは栽培開始から収穫まで3年程度といわており、投資開始から回収までの期間が比較的短いと想定されることも利点の一つです。また、広い栽培好適地があるので、タンザニアの農家にとってカシュー栽培を拡大する余地が大きく、一方で、タンザニア政府にとっても国土の有効活用につなげられます。

支援地域の農家の人たちと

支援地域の農家の人たちと

■目指すのはカシュー栽培による収入向上と地域の持続的発展

農家グループの話によれば、支援地域の農家グループは政府からの委託を受けてカシューの苗を育てて納品したことがあるといいます。苗を育てるのは一時的にはまあまあいいお金になったようですが、農家の中には、必要なリスクやコストを自ら負担をして、カシュー栽培や加工という、もっと利益が得られる部分に踏み出そうと考えている人たちがいます。カシューを栽培し、商品化して売るところまでを自分たちでやれるようになった方が、より高い収益が得られますし、地域に雇用も生み出せるようになるでしょう。そして、得られた収益を原資として、地域をより良くする公共的な事業をより強化することができるようになり、それが子どもたちや住民の福祉をより高めていく、そのように持続的に発展していく地域社会の姿を描いています。現地の人たちによるそのような取り組みを、地元の大学をはじめとする農業専門家や政府と連携しながら、継続的に支援していきます。

支援地域の学校(幼稚園)も視察。タンザニアでは、就学前教育も義務教育の一環として定められているが、教室が足りず青空教室で学ぶケースが多い

支援地域の学校(幼稚園)も視察。タンザニアでは、就学前教育を受けることが一般的になってきたが、教室が足りないために十分な教育を提供できないケースが多い

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カシューナッツ栽培で家族が継続的に収入を得られるようになり、
タンザニアの子どもたちが未来に向かって元気に歩んでいくために。

あなたも、子どもたちの成長を見守る
チャイルド・スポンサーシップの支援をはじめていただけませんか?
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【関連ページ】

タンザニア:国情報
政府・国連等との連携
プロジェクト・サポーターとは
チャイルド・スポンサーとは

この記事を書いた人

菊田 諭
菊田 諭
岩手大学(社会科学専攻)を卒業後、宮城県公立高校の公民科教員となり、高等学校と特別支援学校で計13年間勤務。東日本大震災に際して、日本中・世界中の人たちから一生忘れられない支援を受けたことが契機となり2012年3月に退職して国際協力の道に進む。またこの年に世界を巡る旅に。2013年から青年海外協力隊員としてスリランカに2年間赴任し、すべての人が障がいのあるなしに関わらず、学ぶことや働くことができる社会をつくるために尽力した。
2015年7月から、英国LSE(London School of Economics and Political Science)に留学し、社会政策と開発学〔NGO〕修士(MSc Social Policy and Development〔NGOs〕)を取得。学業のかたわら、車いすユーザーを支援するケータイアプリ(Wheelog「みんなでつくるバリアフリーマップ」)開発のためのリサーチ業務に従事。
国際協力NGOセンター(JANIC)でのインターン、評価コンサルタントとしての業務を経て、2017年3月にワールド・ビジョン・ジャパンに入団。プログラム・コーディネーターとしてアフリカ地域での事業の企画・実施監理・評価と、リサーチ業務を担当している。日本評価学会認定評価士。
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